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一章2-6 彼女の願い(2)

 月の煌めきが無くなりディグマン達が住む地下へ降りた。地下は寒いものかと思ったが、アンジェリカが思うよりも暖かかった。

 ルナとは入口で別れた。何を言おうと入ろうとはしない、岩場の上に立ち入口を見下ろしたままだ。アンジェリカが中に入っている今もずっとそこにいるだろう。

 何故かと彼女が問うたところで何も言わずに、無表情のまま立つだけだ。

 だからアンジェリカが知っていることはすべてディグマンが教えてくれたことだ。

「ほんとに自分のことを教えてくれないですね」

 今ルナが岩場の上にいる理由は、この場所を守っているからだ。

 オーベルング軍がフェルディナント国を滅ぼした。フェルディナントの王族のこともわかることだろう、第一王女であるアンジェリカのことも近いうちにわかる。もういないことが分かっているかもしれない。

 最後の王族だ。その使い道は多い。だが身柄がなければほとんどが意味をなさない。

 ゆえに何があってもアンジェリカを確保しにくる。危険は外からだ、地下にいたままでは分からない。

「だからって一人で見張るなんて」

 アンジェリカに用意された部屋。備え付けのベッドの上で枕に顔を隠しながら彼女は悶々としていた。

 今までアンジェリカを待ち続けていたルナは当然のように危険があるなら対処する。

 彼女のためだけに彼は生き続ける。

「そんなことしてほしくない。ずっと一緒にいてくれるだけで、私は……」

 だがその願いをウルに伝えることはできない。覚悟をもって騎士の誓いをたてた騎士を、友達としても否定することはできない。

 顔を枕に埋めて思うことしかできない。アンジェリカは誰かを思うということを初めてした、王宮の中では許されなかったことだ。

 誰かを思う、その人数がこれから増えるだろうか。

 濡れた枕から顔をあげたアンジェリカは上を見た。掘って作られた天井はもちろん土だ。土地柄地盤は緩いものだと彼女は思っていたが、中は思った以上に頑丈で崩れるような気配はない。

 寝て目が覚めればディグマンの言う秘策を使ってウルを助ける。どんな策かは教えてくれなかったが、よほど自信があるようだった。

「助けますよ、必ず。もう誰も、手放したりしたくない」

 アンジェリカは何も告げられずに馬車に乗せられ、フェルディナント王の計画通り名も無き村にいる。王は亡くなってしまった。もし一緒に行こうと彼女が言っていれば、何か変わっていたかもしれない。同じ結果になるかもしれない。

 しかし、自分の意思で決めた未来を辿れていたはずだ。

 後悔はもうしたくない。強く天井を見上げるアンジェリカの瞳には決意の炎が灯っていた。

 目を閉じ、未来を想像する。アンジェリカが想像するそこにはウルの姿が見える。

 未来を現実にするためにアンジェリカはそのまま眠りにつく。そこで、懐かしい忘れていた夢を見た。


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