開店準備
此処、セレスティアでは一週間に2度だけ開かれる商店があった。
店主はこの世界セレスティアでは珍しい黒髪に黒い瞳の少女だった。
彼女の名前は清野未来という聞きなれない変わった名前の持ち主だった。
そして今日は一週間に2度しかない開店日である。
王都から離れた城塞都市の下町の一角にその店はあった。
元々は酔狂な貴族が建てたと言われている古い屋敷。その庭に敷物を広げて見たことない商品を並べて売るのだ。
朝早く薄明りの中、屋敷の中から少女が出てきた。
長い黒髪を邪魔にならないように一つの三つ編みに纏め頭の周りに沿うようにクルッと巻き付け動きやすいようにと男物のズボンを穿き足首を覆う皮の短靴を履いていた。
庭の隅にある物置に向かうと中から如雨露を出すと物置の脇にある井戸から水を汲み上げ如雨露に水を注ぎ庭の芝生に水を撒きはじめた。全体に水を撒き終わると少女は外と繋がる門に向かう。
「…今日も、よろしくね」
少女は外と繋がる門に触れて小さく呟くと門からじんわりとした熱が返って来て了承の意思を伝えてくれた。それに安堵した少女は門の周りにある花にも水をあげると庭を通り屋敷の中に戻った。
朝ごはんの支度をするためだ。
少女は屋敷の台所に向かうと棚に片付けてあった皿を出し、自分で持ってきた手提げの紙袋からタッパーを取り出して中に入っていた厚焼き玉子と焼いたウィンナーを皿に移し換えて朝一で焼いてきたパンを紙袋から出す。ホームベーカリーの予約機能は偉大である。まだ温かく柔らかい食パンを切り別の皿に乗せると用意した朝ごはんを持ち屋敷を出る。
庭に置いてある椅子とテーブルに皿を乗せると門の方から元気のいい声が響いた。
「おはようございます!」
「おはよう、イシュー君」
少女がそう返すと門の方から朝の陽射しを反射させてキラキラさせる金髪の少年が駆け寄って来た。
癖のある金髪に紫の瞳の少年は少女の店の従業員だ。元気一杯といった様子が微笑ましく少女は穏やかに笑う。
「お腹空いてるでしょ? 一緒に食べよう」
「ありがとうございます! いただきます!」
初めのころは一緒に食べようと少女が誘っても頑として食べなかった少年が今は一緒に食事をしてくれるのが少女は嬉しかった。
「ミライさん、今日も豪華ですね」
「…そう?」
卵や腸詰は結構高いと少年は言うが食欲には負けると美味しそうに食べていた。
「…これも、売れるかしら?」
「そりゃあ、売れると思いますよ。ミライさんの仕入れてくる物って味は抜群に良いですからね」
「…でも、生鮮食品だからな…まぁ、そのうちってことで」
未来はそう言い皿の上の物をキレイに食べ終えた。
ちなみにイシューはとっくに食べ終わっている。
「俺、敷物広げときますね」
「うん。お願いね」
未来は皿を重ねて屋敷の中に入って行った。
その後ろ姿を見送りイシューは物置から敷物を引っ張り出す。
そうして着々と開店準備が整っていくのだ。




