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第275話:戦い済んで

 結局その日は、麗美以外は立川南の圧勝で終わった。


「今回はウチの圧勝みたいだったね、ハナちゃん」


「認めるよ完敗。これから最初から私が出張るんだったね」


 綾乃と麗美の会話を他所に、一人だけ納得出来ないでいる男がいた。菱崎である。


「おい…っ。場所を変えて再戦と行こうじゃねぇか。1回戦負けただけだ」


「いいけど、今日はもうカンベンしてくれ。シャワー浴びて寝たいんだ」


 目線も合わさず和弥が手を振る。


「んじゃあ……場所を変えてやろうぜ」


 あくまでも食い下がる菱崎は、立川南が帰り支度を始めてもまだ興奮気味だ。


「場所はどこがいいんだ? 雀荘でもOKなのか?」


 菱崎の態度に、和弥もムッとした表情で答える。かなり虫の居所が悪そうであった。しかし綾乃は「まぁまぁ」と宥める。


「そんなに打ちたいなら、紅帝楼(こうていろう)あたりでやればいいじゃん」


「はぁ?」


 和弥が呆れ返る。紅帝楼は表向きは18歳未満お断りだからだ。


「───あのな先輩。紅帝楼は18歳未満は…」


「カタイこと言いっこ無し。キミが打ってるんだし」


「………だとよ。どうする?」


 つまらなそうに和弥は確認を取る。


「面子は? それぞれの部から一人づつか?」


「一般客入れりゃいいじゃん。その方が公平な勝負が出来るってもんでしょ」


 麗美が言葉を言い切ると同時に、菱崎が前に出てきた。


「そっちから3人でもいいぜ。ようは1対3だ」


 先ほどまで小百合相手にほぼ3対1だったくせに、相当自惚れが強いようである。


(ハダカデバネズミが大人しくなったと思ったら、今度はこいつか。やれやれ)


「フリーの客に入ってもらえばいいだろ。あとからとやかく言われたくないしな」


「それでもいい! よし決まりだっ!! 来週の土曜午後からでどうだっ!?」


 興奮気味に菱崎がまくし立てる。

 また貴重な土曜休みが潰れるのかとうんざりする和弥だったが、


「分かった、それでいい」


 菱崎の熱意に負けてOKしたのだった。

 筒井の黒子に徹して負けたのが、相当腹に据えかねてるらしい。


「言っておくがその雀荘は1,000点100円(テンピン)だ。初見さんは見せ金2万は必要だぜ?」


「了解だ。順位の争奪こそが麻雀の醍醐味だしな」


 健康麻雀じゃないと打たないと言い出すかと思いきや、意外な菱崎の返答であった。

 今更テンピンで打つほどカネには困ってない和弥だが、菱崎は腕だけなら筒井よりも上かも───そんなことを思い始める。


「面倒なやり取りが無くて助かるな。それじゃあ今度の土曜、紅帝楼で。場所はそちらの部長さんに聞いてくれ」


◇◇◇◇◇


「どうだった、莉子?」


 帰りのバス内で、紗枝が莉子に尋ねる。


「何がなんだか分からない内に終わちゃった…。牌の残りを読むとか、もう別世界過ぎて…」


「まあ、仕方ないよ。私もここに来た時は似たようなもんだったし。竜ヶ崎先輩なんて今でも別次元の人間のように感じるもん」


 ため息を付く莉子を慰める紗枝であった。

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