第274話:連勝
「さゆりん絶好調じゃん…」
由香の言葉通り今日は和弥だけではなく、小百合もツイているらしい。麻雀というのは不思議なモノで、配牌とツモを最大限まで使ってやると次からも気分がいいくらい、好牌が集まってくれるようになる。2回戦目も小百合は3連続の和了りで南4局を迎えることになった。その時点で持ち点は56,200点であり、ダントツのトップだ。
ドラは九索。これが小百合のオーラスの配牌だった。789の三色を狙ってくださいと言わんばかりの好配牌だ。第一ツモは五筒で、小百合は東から切り出す。
2巡ツモ切りが続いたが、その次に一番欲しかったカン八筒を引いてきた。何かのトリックを疑うくらい、ここまでツモが気分良く来てくれるのは初めてかもしれない。もう役牌云々という手ではないので、今度は南を迷わず切り飛ばす。
そして次巡、六萬を引いてきた。もはやなんの遠慮もない。小百合は五筒を切ってリーチをかけた。
すると一発目に三筒がいた。さらに裏ドラもひとつ乗る。
「メンピン・一発・ツモ・三色・表裏。4,000・8,000」
2回戦目は62,200点持ちという圧倒的なトップ。
小百合の異様なツキに巻き込まれた同卓者3人の内、上家がギブアップ宣言を上げて席を立つ。
「完全に仕上げられたな。俺は一抜けするよ。負け席でいいなら誰か入りな」
その時の上家の悔しそうな表情は印象的だったが、小百合は無理にその顔を見ないようにした。
『麻雀は4人の中で一番弱いヤツを殺すゲーム』
───和弥が常日頃から言っているセオリーだ。そのセオリー通り、上家が干しあがった。
その後、欠けた面子を補うために、赤坂という少年が入った。
面子が変わったあとも、小百合の勢いに衰えはなかった。
ドラは八萬。
起家スタートの配牌である。第一ツモは六筒、小百合は北を切る。
1巡目から下家である筒井から發が出たが、小百合は見向きもせずにツモ山に手を伸ばした。第2ツモは、八筒であった。
(今ならどんな手でも面前で和了れる…)
もう筒井は全国大会で苦戦した時の筒井ではない。小百合のその自信を、ツモが次々と後押ししてくれる。
5巡目には、この形になっていた
(六萬じゃないのね)
───という贅沢な文句を心のなかで漏らしながら、小百合は九筒を切ってリーチをかけた。
明らかに空気が重くなった。が、小百合からすれば知ったことではない。
3巡後、小百合は平然と六萬をツモりあげた。裏は乗らなかったが、4,000オールである。
一本場、小百合はまたも満貫をツモった。4,100オール。
その次の二本場で、下家の赤坂に親ッパネを直撃した。───彼のトビで3回戦目はあっという間に終了した。
「ごめんなさいね、赤坂くんにはキツすぎる相手だったわね。今日のところは、こんなところで勘弁してやってくれないかしら」
そう言った麗美は、真顔であった。小百合は小さく頷き、席を立った。
なお、赤坂は最後のゲームが終わるや不機嫌を露わにした足取りで店の奥へと消えていき、もう一人の面子であった菱崎もやはり不機嫌を顔に出しながら卓を離れ、ソファーのもとへと歩いていった。
少々申し訳ないような気がしながら、小百合も席を立った。
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