第270話:小百合の挑戦・6
2026年、明けましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願いします。
南1局。ドラは七索上家がリーチをかけていた。二・五・八索の三面張、高目安目なしのハネ満ツモという手だった。上家は17,200点持ちの現状ラスではあるが、この手をツモアガリすることが出来れば、他家がリーチさえしてくれればそのリーチ棒も合わせて30,000に届く。
これが小百合の手牌。運悪く二筒を引いてしまった。
(駄目だわ…。あの捨て牌に筒子は切れない)
仕方なく九萬を切っていく。四・七索待ちでテンパイしていたが、回る派目になってしまった。二筒を上手く処理できない限りは、どうすることも出来ない手となってしまっている。
とはいえ、現在はトップ。このまま上家がツモれずに流局となってもセーフではあるので、オリてしまうという手もあるにはある。むしろこの手牌では、そうするよりないともいえるか。
15巡目、安全牌を切り続けていた筒井が、突然危険牌である三筒を押してきた。現在筒井は3位。この親を流されると苦しいし、流石に多少は焦っているのだろう。
次巡、リーチ者のツモ切りに続き、小百合がツモ牌を引いてくる。引いてきたのは、なんと二筒であった。
願ってもないツモといえるだろう。これで二筒を雀頭にしての役アリ聴牌が復活した。選択打牌は当然、前巡に通した九萬。
筒井の顔が一層険しくなる。恐らく聴牌にすら取れないのだろう。
(この局を凌げれば…!!)
小百合はいま一度面子の顔を見回してから、深く深呼吸をする。
「ねぇ紗枝…。西浦先輩はどうして聴牌だったのに二筒を止めたの?」
「リーチ者の捨て牌を見て『筒子は切れない』って判断したんだと思うよ。莉子はまだオリるとかの感覚が掴めてないと思うけど、やってれば分かるようになるよ」
後ろで観戦しながらヒソヒソ声での莉子の質問に、紗枝が答えた。
上家もまた捨て牌にあまり小細工をしない打ち手なようで、手を大きく広げることに置いた打ち方。ある意味現代型の麻雀である。
(ハダカデバネズミの親が流れれば、勝利が見えてくるな…)
和弥も小百合の聴牌形を見ながら、菱崎の手元を見る。和弥も清一色が気になっていた。
(むしろ問題なのはこの菱崎って奴だ。さっきのチンイツは和了る気あるならダマだろう。初心者でもないようだが)
堅実に小さな手を取りにきたと思えば、今度は堅実とはかけ離れた染め手。和弥も菱崎の真意は掴みかねていた。
結局上家は最後まで和了れず、流局となる。
「ノーテン」
筒井が無念そうに牌を伏せる。
「聴牌」
上家の手を見て、二筒がアタリだったことに安堵する小百合であった。
「聴牌」
「俺も聴牌だ」
菱崎も七対子で八筒を止めていた。次はその菱崎の親である。
「さーて、俺の親か」
筒井から1,000点を受け取った菱崎は、ゆっくり牌を収納口に落としていく。
(問題はこの男…)
小百合も聴牌料の1,000点を受け取ると、牌を落としていった。




