第271話:小百合の挑戦・7
南2局の流れ一本場。ドラは三索。
「リーチ」
ついに筒井がリーチ宣言し、東を横向きに置いた。捨て牌は明らかに七対子系の、明らかに不規則な河である。
(典型的な七対子…。字牌は危ないわ)
しかしそんな小百合の心配も空しく2巡後───。筒井はツモ牌の西をカタリと横に置いた。
「リーチ・ツモ・チートイ。裏は……」
筒井は裏ドラを確認する。
「おっと、二丁乗ったな。一本場で3,100・6,100」
これで筒井が暫定トップである。
「へへへ。これで俺がトップに立ったな」
その表情は全国大会で小百合を圧倒した時に戻っていた。勝ち誇りながら、筒井は菱崎をチラリと見る。
(もう俺から和了るなよ)
という期待を込めた視線であった。
(ケ……。何が天上位だよ。しゃーねえ、ここは先輩の顔立ててやるか)
視線の意味に気付き、心の中で舌打ちをする菱崎。菱崎もまた、筒井の態度にウンザリしている一人である。
倍満を引き上がって迎えた親番。配牌と第一ツモを見た時点で、手ごたえは十分にあった。
南3局。ドラは六筒。小百合の配牌。
第一ツモでカン八筒引き。絶好調のスタートだ。現時点では雀頭が確保できていない手牌だが、索子の良形が伸びれば自然とクリアできそうな問題ではある。平和一直線のダブ南切りからスタートした。
「ポン」
その南を、菱崎が仕掛けた。
(役牌を一鳴き……)
おそらく。小百合の勢いはまだ落ちてないということを察して、早々に止めにきたのだろう。
(怯むことなどないわ)
小百合のほうも、菱崎の鳴きに動揺せず順調な進みを見せた。
8巡目だ。索子の三面張が残る、理想の入り目。小百合は迷わず、リーチをかけた。
(これで少しは守勢に回ってくれるかも……)
そんなことはなかった。筒井は危険牌である二索をツモ切り、続く菱崎、上家も、色は違うが通っていないところをバシリと切ってきた。
(三面張だ……菱崎の捨て牌に九索が一枚切られているだけであり、待ち牌はまだドッサリと残っている。3人が攻め続けるなら、討ち取れる可能性だってある)
和弥の考え通り、小百合も3人を迎え撃つつもりで強気を維持した。
だが、それからツモれることもなく6巡が経過した。徐々に湧き上がってくる焦燥感に精神を揺さぶられる中、小百合にとって不都合な事態が再び発生する。小百合がツモ切ったドラに合わせ、筒井もドラの六筒を合わせ打ち。その六筒を菱崎が赤五・七筒という絶好の形でチーし、そして初牌の發を切ってきた。
(これで恐らく…いや、確実に聴牌したわね)
するとさらに、菱崎が切った發を筒井が仕掛けた。彼の捨て牌は索子が一枚も切られておらず、小百合の当たり牌を抱えているうちに索子の混一色が完成したという雰囲気を醸し出している。
牌を晒したのは2人だけだが、残る上家にもオリの気配はなかった。次巡に切ったのは抱えていたらしい發だったが、手の内は既に整いつつあるのではないかと思われる。それまでの切り出しが強いところばかりだからだ。
(これはまずいかもしれない…)
小百合はツモりにいく動きがやや緩やかになってしまった。自分のアガリ牌ではなく、相手の当たり牌を持ってきてしまう可能性のほうが高くなっている気がしてならない。
直後に引いてきたのは、初牌の中。
(流石にアウトかしら…)
しかし、その中に声はかからなかった。既に暗刻か、それとも雀頭使いで奇跡的に助かったのだろうか?
以降、流局一歩手前のところで上家が何かを引いてきて手出しした以外は、全員がツモ切りを繰り返していた。
そして結局、アガリ発生せずの流局。上家の一人ノーテンだった。




