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狼な俺のフィアンセは、98歳〜真実の目で本性を見る少年は、老婆な婚約者を溺愛する〜  作者: ジュレヌク


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もう一つの魂


大きく口を開ける魔獣に向かって真っ直ぐに落ちていくオトミー。


俺は、魔力を練り上げ一本の光のロープを作ると頭上の巨木目掛けて放った。


太く長い枝に絡まったのを確認すると、一気に長さを短くする。


俺は、引き上げられるように空を舞った。









オトミーーーーーーー!










バシッ









彼女の手を掴み胸に抱きしめると、俺は、そのまま落ちて地面を転がった。


魔法で衝撃を和らげたが、直ぐそばに荒ぶる魔獣が居る。


一匹の腹の下に潜り込むと、オトミーを起こして前後左右を確認した。


魔獣の数は、三匹。


空中には、黒い霧。


鴉の野郎が、これ見よがしに例の本を掴んで飛んでいる。


アレを回収しない事には、逃げる事も出来ない。



「オトミー、大丈夫か?」



「はい。ウォルフ様が来て下さると信じておりましたから」



涙目で俺を見上げるオトミーの姿は、寝巻きのままだ。


靴すら履いていなくて、手も足も血がこびり付いている。


こんな時、治癒魔法が使えたらと思う。


どんなに魔力があっても、傷ついた者を前に、何もしてあげられない。



「痛かっただろ?」



乱れた髪を撫でてやると、擽ったそうに笑った。


シワシワッと寄る皺が、オトミーの嬉しさを表現しているように見えて、心が温かくなる。



「必ず、幸せにするから、もう少しだけ頑張ってくれ」



「は、はい!」



真っ赤になったオトミーを抱えると、俺は、先程枝にロープを掛けた大木の下へと走り込んだ。


そこには、大きく穴の空いた樹洞があって、人が立って入っても余裕があるくらい広い。


中央にオトミーを下ろすと、俺は、ポケットの中を探った。



「あれ?」



「ウォルフ様、どうかなさいましたか?」



「ここに入れていた忠兵衛が居ない」



「えぇ!」



俺もオトミーも、一瞬呆然としたが、こうなっては仕方ない。


アイツを探す前に、黒い霧を倒さざるを得ないだろう。



「ここで、待ってて」



俺は、オトミーの額にキスをすると、彼女の周りに結界を張ってから、再び外に飛び出した。



「待ってます!待ってますから!どうか、ご無事で!」



オトミーの泣きそうな声に後ろ髪が引かれたけど、今は、我慢だ。



「待たせたなぁ!」



空を見上げると、








まったくもって、気に食わぬ









黒い霧は、グルグルと渦を巻くように空から俺を見下ろしていた。



「へぇ、珍しく、意見が合うな。俺も、お前が気に食わない!」



お前は、本を開けるだけで良かった



「なんでも、思い通りにいくと思うなよ」



啖呵を切りつつも、どうやって奴を倒すか、全く見当がつかない。


地下神殿で会った時より、奴の魔力は数段力を増していた。


何故なら、奴は、他の魔物の力を取り込んでいるから。


今も、奴の渦の中に、先程まで地面で吠えていた魔獣が囚われている。


ミシミシと骨が軋む音と断末魔とも言える咆哮が、森一帯に響いていた。


俺は、腰につけてあった袋から、聖水の入った小瓶を取り出すと、試しに奴の渦に投げ入れた。


カシャン


壊れると同時に、蒸発するみたいに消えた。


風速と遠心力で吹き飛ばされたらしい。


実体を持たない敵と、どう闘えば良い?


俺は、フル回転で頭を働かせ始めた。































「うわっ、これは、酷い」


騎士には相応しくない怯えた声で、団員の一人が呟いた。


目の前には、無数の虫と魔獣の死骸。


どれもが干からび、硬い石のような状態になっている。


何かに、生気を吸い取られたか?


あたり一面を埋め尽くす其れらを避ける術もなく、俺達は、踏み潰して前に進む事にした。



「スタンガン団長」



「なんだ?」



「先程、我らの上を飛び越えて行ったのは、御子息でしょうか?」



「だろうな」



「いやー、びっくりしました。人間て、空を飛べるのかと錯覚する程の高さでしたから」



まだ、若手の団員は、純粋に驚いたようで、興奮気味に話す。


だが、忘れてはならない。


アイツには、アイツの。


俺には、オレの戦い方がある事を。



「アイツが来たと言うことは、もう直ぐ魔導士団もくるだろう。それまでに、敵へ続く道を切り開くぞ!」



「はい!」



この屍を辿れば、きっと息子の元に続く。


我々が辿り着くまで、持ち堪えろ、ウォルフ。




















「もう行ったのか?」



「はい」



穴から這い出した俺達を待っていたのは、爆薬をセッティングしている部下だった。


既に、ウォルフの姿はなく、指示だけ出して何処かへ行ったらしい。


まったく、ここに居るのは、全員お前より年上だぞ。


ただ、婚約者が連れ去られたとなると、それだけ緊急を要するんだろう。



「ドラコ団長!」



呼び掛けられて振り返れば、本部を任せたはずの副団長が、荷馬車に大量の物資を乗せて此方に向かってきていた。


小柄な女が、巨体の馬を御する姿は、何度見ても不思議な感じだ。


これで、魔力が俺の次にランキングされるとは、初めて見る人間なら、信じられないだろう。



「どうした!」



「スタンガン騎士団長より、出動要請です!本隊は、既に向かっています!このまま私と一緒に来て下さい!」



「と言われても、ここに使い物になる奴がどれだけ居るか」



傷だらけで、魔力空っぽ。


立つだけでも精一杯のコイツらに、今から走れとは言えないだろう。



「私を誰だと思っているんです!石橋を叩いても渡らない、超慎重派の魔導士団副隊長、ターシャ・ボホールですよ!」



眼鏡をクイッと上げて胸を張るな。


決して、褒められた性格じゃない。


だが、確かに準備万端なのは、褒めてやろう。


何せ、彼女が乗せてきたのは、大量のポーションと山程の食料だった。























「神様、どうかウォルフ様と忠兵衛様をお助け下さい」



私は、一人、樹洞の中で祈りを捧げた。


お願い。


お願い。


お願い。


強い思いが、体の中じゃ収まりきらなくて、外に溢れ出るような気がする。


こんなに一生懸命、何かを祈るのは、初めて。


前世の記憶のせいか、いつも、どこか達観していて、何かに執着する事なんてなかった。


でも、今回は、違う。


もし、私の命が引き換えに必要だと言うのなら、迷わず投げ出す。


それくらい、真剣な祈り。


すると、不思議な事に、手の平がほんのりと輝いた。


驚いて組んだ手を外すと、両手は光ったままで・・・傷が全て消えていた。


元々、この体は、高い治癒魔法の資質を持った体だと、あの黒い霧が言っていた。


その器に、私の魂を入れたと。


もしかして、私の中に、もう一つの魂が生きている?


その魂も、二人の無事を祈ってくれているの?


私は、もう一度手を組んで祈った。



「お願い、どうか、二人を守って」



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