第3話 鬼貫神伝流
今回遅れてしまいすみませんでした!何とか書き終えましたので投稿します。最後れへんちょっと変な感じになったかなと思いますが、そこは私クオリティーなので多めに見てくださると嬉しいですw
目の奥まで射し込んでくる太陽の光が蒼馬に夜ではない事を知らせる。城に居た時は気づかなかった、日本とは時間の流れが違うと蒼馬は理解する。顔が火照り少し酒を飲んだ事を悔やみながら捜索に向かう。
町が騒ぎで人がごった返す中を蒼馬と兵の二人は駆ける。脱走した男を捕らえる為に。様々な所から悲鳴と爆発音が聞こえてくる。それは鎮圧に向かった部隊が手間取っている事を意味していた。
「どうやら、鎮圧に時間が掛かっているようだな」
「ええ、その様です。いくら少数の反逆者と言えど、ギルドに所属している者達は手練れが多いですからね。時間が掛かって当然と言えば当然かもしれません、ですが問題はないでしょう」
「そうだな……なぁ一つ聞いていいか? 俺がその男に勝てると思うか、相当な手練れなのだろう」
「――勿論ですとも私は勝てると思っていますよ。貴方の【鬼貫神伝流】の力をもってすれば、容易いでしょう」
「……ああ、俺の力を見せてやる」
「ええ、見せてください、間近で見られれば何かしら収穫できて鍛錬に生かせますので」
「ふ、戦うのが楽しみだ」
蒼馬と兵の二人は急ぐ、この国から脱走させない為に。蒼馬は強者と戦える事に感情が高ぶる。蒼馬の表情は、待ちに待ったと訴えかけるような不気味に笑っていた――おっと、抑えなくてはな。先ずは相手を見てからだ――と。感情を抑え蒼馬の顔はいつもの詰まらなそうな顔に戻った。しかしその足取りからは早く戦いたいと、滲み出るようであった。
既に日が沈み始め地平線に近い空が赤く見える頃、蒼馬と兵の二人は国民の住宅が建ち並ぶ比較的静かな所にやって来た。そこは襲撃されている場所から離れているのか、爆発音や悲鳴が遠くに聞こえる。
二人の視線が一人の男に集まる。道の真ん中に立ちはだかるように立つ一人の男が居た。その男こそ脱走した人物である。そして物陰から2人の男が現れ、視線の先の男に加勢するように横に並ぶ。
「あんたか、脱走した捕虜というのは。まさか待ち構えているとはな、探す手間が少なくて良かったよ」
「随分と余裕なのだな、よほど自分の力に自信があるらしい……私の名はグレン・アルスターだ。貴殿の名をお聞かせ願おう」
グレンは堂々とした態度で自分の名前を口にした。蒼馬もそれに応える。
「俺は鬼貫神伝流、第三九代継承者――鬼貫蒼馬だ……さぁ、やろうか」
蒼馬は殺気を放つ。その殺気は常人に耐えられる域を等に超えている。殺気を向けられた男達は震えが止まらないでいる。その光景を見て蒼馬の目に光が灯る――震えてはいるが、倒れないか――と。常人ではないと理解し目を細める。
兵の男も腰の剣に手をかけ蒼馬の後ろで構える。
「全員俺が相手をする、お前は手を出すな、俺は楽しみたいのさこの戦いを」
「そうですか――分かりました。ですが残念ながら、貴方は戦う事なく死ぬのです」
その言葉と同時に剣が抜かれた。肉を断つ音が聞こえ『ボトッ』と音がし地面に落ちる。剣を抜いたのは脱走した男でも、その者に加勢した男達でもなく、蒼馬と一緒に来た兵士であった。
***
「状況はどうなっている、国民の避難は終わったのか!」
「はい、アグネス隊長。ここら一帯の国民は被害のない住宅街に避難させた様です。後は反逆者達を鎮圧するだけです」
「そうか、報告ご苦労――残りは数人だ! 一人につき三人以上で、それぞれカバー出来る距離を保ち鎮圧にあたれ。大暴れしている男は私が引き受ける」
アグネスは部下達に命令を下した。反逆者の大半は、既に死亡又は気絶させ鎮圧に成功している。残った反逆者達は強者たちばかりで、その中でも一際目立つ男が居た。アグネスは大暴れしているその男を鎮圧すべく向かう。
「まさか、お前までもが反逆しているとはな。ギルド序列二位のアデク、愛国心のある男だと思っていたのだが失望したぞ。なぜお前達はこんな事を引き起こした」
「……ふん、アグネスか。状況が変わったのさ、他と手を組んだ方が金も地位も女も手に入る。俺らギルドの者達はそれで動いている者が殆どだ。それ以上の理由などない」
「――そうか。なら【ミレスティア国】の騎士としてお前を拘束する」
「やれるものなら、やってみるがいいさ。この戦いの結果がどうあれ俺達の目的は達成される」
二人の戦いが始まり、戦いは更に激しさを増す。辺りは戦場と化し建物は壊れ多くの死者を出している。悲鳴、爆発音、金属がぶつかり合う音が止むことなくまるで合唱のように響き渡る。
そして、幾分かの時が流れ反逆者達は鎮圧されていった。辺りの建物は壊れ、死体が転がっている。
アグネスとアデクの熾烈を極める戦いも終りがやってくる。アグネスの渾身の力で振りぬいた剣がアデクの体を切り裂く。「グハッ」血が噴き出しアデクは地面に倒れる。持っていた剣も飛ばされもはや反撃の余地はなかった。アグネスはアデクを拘束した。
「これでお前達は終わりだ、それ相応の処分が待っていると思えアデク」
「――まさかお前がこれ程の力を持っていようとは……だが」
『ドガーン』
住宅街の方から大きな爆発音が響く。そこは国民が避難した場所だであった皆、慌てふためく。アグネスも見るからに顔色を悪くなる、そしてアデクを睨みつける。
「外道が、そこまで堕ちたか」
アデクは嘲笑うような眼でアグネスを見て答える。
「フッ――何を勘違いしている。俺達の目的は別にある、確かめたければ行ってみるといい。既に遅いがな――フフハハハ!」
「少し黙っていろ」
拳を握りしめアデクの右頬を殴った。アデクはそのまま倒れこみ気を失う。上に立つ者の不安は部下にも伝わってしまう。アグネスは戸惑いを振り払い、部下達に命令を下し捕らえた反逆者達を城の牢獄へと向かわせた。こうしてギルド所属の者達による襲撃は幕を降ろした。
鎮圧に成功したものの、新たな問題が浮かび上がった。アグネスは考えた――奴らの目的が襲撃ではなく別にあるとするなら、俺達は誘き出されたという事になる。なんにしても国民にこれ以上被害を出すわけにはいかない――と。アグネスは更に部下達に命令を下す。
「連絡係の者、至急国民の避難を行っている兵士達に爆発の方に向かえと伝えろ! それとこの中で数人俺に付いてこい、俺達も向かうそ」
「「はっ」」
そう答える部下達に慌てている様子は微塵もなかった。数人の兵士を率いりアグネスは爆発の方へと向かい走り出した。空は日が沈み始め赤く染まる。兵士達の鎧についた返り血は赤い空によって目立つことはなかった。
***
――どうして異世界人というのはこんな化物ばかりなのだ――と。三人の死体を見てその後、蒼馬に視線を向けグレンは思う。視線の先の蒼馬は異様な雰囲気を漂わせながら拳を握りしめていた――兵士の想定外の行動を奴がかわした時に、大人しく引いていればこんな結果にはならなかったのだろうか――と。グレンは自問自答し、今になって後悔する。そう、あの時に誤算が更に誤算を生んだのだった。
「そうですか――分かりました。ですが残念ながら、貴方は戦う事なく死ぬのです」
そう言って蒼馬を連れて来た兵士は、剣を抜くと頭を跳ねる軌道を描きながら切断する。しかし頭が跳ねる事はなく、切断されたのは兵士の腕であった。兵士は驚いた表情を一瞬浮かべたが直ぐに歪んだ。激痛が走ったのだろう悲痛な叫びを上げる。
「な、なぜだ……なぜ分かった」
「教える理由はない。ただ一つ言うとすれば言葉は選んだ方がいい」
蒼馬は兵士の心臓を貫く。兵士は膝をつき前に倒れこむ。蒼馬の手には兵士の血が付いていた。グレンは恐怖する、殺した事にではなくその殺し方に。グレンは視線を左右の部下に向けると顔は真っ青で震えていた。
蒼馬はゆっくり向き直り告げる。
「さぁ、やろうか」
兵士の行動は想定外であったが、グレンにとっては蒼馬の力の方が想定外であった。そう、化物だとこの時点で理解し逃げておくべきだったのだ。圧倒的なまでの力の差がそこにはあったのだから。
想定外の事が起きた後、グレンは勝負を挑むが戦いにならなかった。部下がセットした爆弾を起動させたが効果は全く、剣を抜き斬りかかっても傷ひとつ付けられない。そんな事を繰り返していると蒼馬の表情は段々悪くなっていった。そして、部下の一人がパンチを食らい壁にめり込んで動かなり、もう一人の部下は頭に蹴りを食らい、威力が凄まじかったのだろう体は宙で回転し地面に転がった。
グレンは蒼馬の表情を見ると失望しているのが理解できた。その顔は訴えかけるようであった、お前は弱いと。遂に動きを止めてしまったのだった。
グレンは自らの行動が愚かな行為だったと後悔する。目の前に拳を握りしめる蒼馬、もはや時すでに遅し。
「鬼貫神伝流――奥義。波翔拳」
強烈な一撃が溝に入る、激痛と共に体の内が壊れていく感覚に陥る。
「ガハッ」
宙を舞いグレンは吹き飛ぶ――お前は一体何者なんだ――と。痛みで言葉に出来なかったその問いに答えてくれる者は居なかった。グレンが最後に目にしたのは自分を殺した男の空虚な顔であった。
アグネス達や避難誘導していた兵がやって来たのは全てが終わった後であった。そこには三人の死体と壊れた建物、そして一人たたずむ蒼馬の姿だけ。感の良い者は理解した事だろう、目的が何だったのか、そして結果がどうなったか。
こうして、襲撃事件は『ミレスティア国』の勝利で幕を降ろしたのであった。
まともに時間道理に投稿できない、ちょっと気合い入れなおさなきゃな~