第2話 襲撃
一週間空いてしまいすみませんでした。プロローグと1話も少し手直しをしたのでそちらの方も良かったら読んでください。内容は変わってないので問題ないと思いますが。それと簡単にですがPVを作ったのでTwitterの方に投稿しようと思うのでそちらもよろしくお願いします♪
「――ここが、異世界か」
「はい、その様ですね」
転移ゲートへと入り白く果てしなく続く光の中を歩いてきて、ようやくたどり着いた先に元居た世界では見る事はないであろう光景が広がっている。鎧を着た数多くの屈強な男達が二人の左右に一列で並んでおり、奥には貴族と思わしき高貴な服を着た者達が居る。この光景は二人を自分たちは異世界にやって来たのだと思わせるのに十分すぎるほどの光景であった。
そして二人の先には誰も座っていない椅子が一つ中央に置かれている。それはここが王の間と呼ばれている場所という事を意味している。そして二人の前方から『コツコツ』と足音がすると一人の男が現れた。
「無事に来られたようですね」
その者は右手に杖を持った三〇代くらいの男性で、声は聞き覚えのある声であった。
「改めて自己紹介させて頂きます。私はキャスベル・ブリジット。キャスベルとお呼びください――この「陛下がお見えになります」
最後キャスベルが何かを言いかけた時、声が重なる。大きくはないが透き通った声で響く。するとこの場に居る者達は玉座の方に向き頭を下げる。それを見た二人も少し遅れ軽く頭を下げた。静寂の中、足音がゆっくりと聞こえてくる。そして音が聞こえなくなると同時に王様は言葉を発する。
「頭を上げてくれ」
その言葉に従い頭を下げていた者は一斉に頭を上げる。二人も同じく頭を上げる。そして上げた先には、高貴な服を着て王の象徴と言える王冠をかぶった男性が玉座に腰かけていた――こいつが王様か――と。蒼馬は堂々と腰かけている王様を見つめる。
「蒼馬殿、犬井殿。私の名はグリフィス・ルイ・ローウェルだ。ようこそ私の国へ歓迎しよう」
「いえ、こちらこそご招待ありがとうございます。キャスベル殿から話は伺っております、私で宜しければ尽力させていただきます」
軽く会釈してそう告げる。蒼馬のそんな態度がツボに入ったのか、キャスベルは声を殺しながら少し笑っていた――笑う要素ないだろ、言葉遣いが似合わないとでも思っているのか――と。蒼馬は軽くキャスベルを睨みつける。
「そうか――頼もしい限りだ。では早速で悪いが蒼馬殿の力を見せていただきたい、キャスベル」
「――はい、陛下。現在ある国の騎士を捕らえていまして、その者と戦ってもらい蒼馬殿の実力を示していただきたいと考えております。その者は四年前の【全面戦争】を戦い抜いたほどの強者で、相手にとって申し分ないと思います」
キャスベルは反応が少し遅れたが、何事もなかったかの様にふるまう。キャスベルの言葉の中に気になるワードがあった。【全面戦争】とは一体何なのか二人には分からない。なぜなら、この世界に来たばかりの二人がこの世界の歴史を知っているはずもないのだから。
二人の様子を見たキャスベルは付け加える様に話し始める。
「あぁ、すみません。全面戦争とはですね、四年前に人間と魔族の間で起こり、多くの死者を出し熾烈を極めた戦いの事です。興味がおありでしたら後程教えて差し上げましょう」
キャスベルの話では魔族というのがこの世界には居る様だ。今の光景といい魔族の存在といい蒼馬にとっては目新しいことばかりだ。蒼馬は感情が高ぶっていくのを感じていた。
「そうか、ならその時は頼む、俺が望む強者であることを祈ろう……ん?」
先程と変わらない表情と立ち振る舞い。しかし明らかに違うと感じさせる程の威圧感を蒼馬は与えていた。皆息を呑み見つめる。そんな中、蒼馬は何かを感じ取る――この感じ、殺気か。どうやら戦う前にやる事が出来た様だな――と。蒼馬はグリフィス王に視線を向けた後、殺気を放つ男の頭を掴み地面に叩きつける。
「ガハッ!」
神速の如きその動き、誰も目で追う事が出来ず反応が遅れ、何が起きたのか瞬時に理解することは出来なかった。この場に居た者達に動揺が走る。
「な、何を!?」
キャスベルも反応が遅れ、慌てていた。蒼馬は叩きつけている鎧を着た男の首根っこを掴むと起き上がらせる。男は叩きつけられた衝撃で抵抗する力はなく、辛うじて意識がある状態だ。蒼馬はグリフィス王の前へと歩いていき男を投げた。『ガシャ』という音が響く。
「この者は陛下に殺気を向けていました。どうやら、実力を示す前に片付けないといけない事がありそうですね」
蒼馬がそう告げると、動揺が混乱へと変わり始め、ザワザワと騒ぎ始める。がしかし、それも直ぐに終わる。王様が手を叩き静まれと声を上げて告げると、しだいに静まっていった。
「――蒼馬殿、その者が殺気を向けていたとは本当なのか? いや本当なのだろうな、嘘でこのようなことはすまい――ん、キャスベルその者の顔をよく見よ、変ではないか?」
キャスベルは杖の先端で男の顔を持ち上げた。すると男の顔の皮膚が剥がれている事に気づく。すぐさま手を掛け皮膚を剥がすと違う顔となった。それを見た者達に再び動揺が走る。
蒼馬も目を見開き驚く――まるで変装マジックだな。これで信じただろう、さて問題はこいつの目的だが――と。蒼馬はそう思い様子を伺う。
「貴様……この国の者ではないな、変装して潜り込むとは、兵はどうしたのだ!」
キャスベルの問いに男は不敵な笑みを浮かべる、まるで分かり切っているだろうとでも言うように。
「フッ……殺したに決まっているだろ……なぁグリフィス王さんよう、あんたは王として相応しくない。そう思っている連中が居る事を忘れる――な」
蒼馬に食らったダメージが大きく、途切れ途切れになりながら男はそう言い残し、遂には限界を迎え気絶した。男が言い残した言葉は想像以上の動揺を生む。今度ばかりはグリフィス王も動揺が走る。
そんな状況の中、王座の間に一人の兵が知らせを持ってやって来た。
「陛下、お忙しい所申し訳ございません。町の中でギルド所属の者が暴れております。至急、鎮圧部隊を向かわせていただきたく――」
『ドッガーン!』
城内の中からでも聞こえる程の凄まじい爆発音が響く。すぐさまグリフィス王は切り替え命令を下す。
「アグネス・マクラウドは居るか? 至急、部隊を率いて鎮圧に向かうのだ、生死は問わない、民の安全が最優先だ」
「畏まりました陛下……この場に居る俺直属の兵は俺に付いて参れ! その他の者は陛下を護衛する者と国民の安全を確保する者に分かれ行動してくれ。暴れている奴らは俺らが叩く」
アグネスの指揮の下、鎮圧部隊が三十名、護衛四名、安全確保を行う二十名に分かれた。すぐさま行動に移し護衛以外の兵達はそれぞれの目的の為玉座の間を後にした。
「――まさかこんな事になってしまうとは、蒼馬殿が言った通り、実力を示していただく前に片付ける事が出来てしまいました。これは私どもが対処致しますので、蒼馬殿と犬井殿はこの場に待機していただいて大丈夫です」
鎮圧は時間の問題ですからと自信がある様な態度でキャスベルは付け加えた。しかしどこか表情はパッとしない。彼の顔色が優れない考えられる理由は一つ、それはあの男の発言である。
(王として相応しくない)という言葉が脳裏によぎる。
蒼馬は腕を組んだ――暴動だけなら実にくだらない者達だ。他に目的があるとするならば、注意を向けさせる為の暴動と考えられるが――と。そんな事を蒼馬は考えていると、足音が聞こえてきた。音が途切れずに聞こえる事から走っていると予想できる。そして血相を変えて一人の兵が姿を現した。
「た、大変です、捕虜が脱走しました! 見張りの兵が倒されており、現在行方を追っていますが、人手が足りず兵を捜索に回していただけないでしょうか」
「何ですと!? 目的は捕虜の奪還でしたか――困りましたね、兵を回そうにも今ここに居る兵は動かせませんし、一体どうすれば」
「……俺が行こう」
「――ですが、これは国の問題ですので蒼馬殿に動いていただくわけには」
「手伝って欲しいから俺をこの世界に呼んだのだろう? どの道、倒す相手だ。それが早いか遅いかの違いだ」
蒼馬の言葉に納得したのか笑って「そうですね」と頭を下げる。蒼馬はその後犬井に待機を命じ、兵と共に捜索に向かおうとするが、グリフィス王から声を掛けられる。
「蒼馬殿行ってくれるのか? 感謝いたす。私の国を助けていただきたい」
「ええ、どうやらそう望まれているようなので――では急ぎますのでこれで」
蒼馬は兵の後ろを付いていき、走って玉座の間を後にする。
***
グリフィス王は蒼馬の背中が見えなくなるまで目で追う――蒼馬殿の助力があるのであれば……諦めていた選択を選べるかもしれん、あの計画を決断する時が――と。考えるグリフィス王は、少しばかり晴れやかな表情をしていた。
「陛下、何か良い事でもおありでしたか? 笑っておられましたが」
キャスベルの言葉に驚く――そうか、笑っていたのか私は――と。グリフィス王は自らの頬を触る。
今後自分がどの様な行動をするのか、どの選択を選ぶのか。期待に胸を膨れませながら命令を下し護衛を離れさせる。キャスベルと2人で話す為だ。
「……キャスベルよ、私はずっと考えておったのだ、大国である【バビロス帝国】の属国の件の事を。既に周辺の小国の殆どが帝国の属国となり、もはや私の国と【リスティール国】、【スレイブ国】の3ヶ国のみだ。もはやこれまでと、属国を受け入れるしかないのだとそう思っていたが――蒼馬殿の助力があれば、捨てていた選択を拾えるかもしれん」
「捨てていた選択、ですか? 陛下がどの様な事を考えているのかは分かりかねますが、それが何だったとしても付いていく所存でございます」
「すまないな――其方には感謝しておる。其方の提案がなければ諦めていた事だ。そして危険を冒して転移魔法を行ってくれた者達……私は良い配下を持って嬉しく思う」
「ありがたき言葉、感謝いたします。しかし私達はこの【ミレスティア国】と陛下に忠誠を誓った者、当然の事でございます。例え自らの命を引き換えにしたとしても、全てはこの国と陛下の為に」
キャスベルは頭をさげ忠誠を示す。その言葉に嘘偽りなど微塵もない。グリフィス王は配下の忠誠心を見て胸が熱くなるのを感じる――私も其方らの忠誠心に応えねばなるまい、それが王の務め。先ずはこの一件を片付けねばなるまい――と。グリフィス王は決意を固めるのであった。
来週も投稿出来るように頑張らなくちゃ!




