ストーカーでも猫が飼いたい!
『ストーカーに餌をあげないで!』第12部に相当
『ナーオ……』
「……!」
とある放課後、いつも通り彼をみつめながらアパートへと帰っていると、
その途中で猫を見つける。タオルの敷き詰められたダンボールに住んでるようだ。
つまり捨て猫だ。
「……」
しばらくその場に立ち止まる。
私は猫大好きだ。猫を見つけるとふらふらと近寄って行くレベルの猫好きだ。
しかし実家では家族に猫アレルギーが多いこともあって飼えなかった。
自由を手に入れた今、私が猫を飼っても責める人は誰もいないのだ。
『ミーィ』
ダンボールを持ってアパートに帰った私は早速お風呂で猫を洗ってやる。
今までは野良猫に近づいては逃げられる毎日だったけど、この猫は触り放題。
統計的にも少女単体よりも少女と猫のセットの方は男はぐっとくるらしいし、百害あって一利なしだ。
お風呂から出た後は、猫を飼うための知識等をインターネットで検索。
その中に重大な事実が。
『基本的にアパートで動物を飼ってはいけません』
……知らなかった。でもアパートによってはOKらしいし……と部屋の契約書を読み直してみるが、残念ながらペット禁止のようだ。もしばれたら最悪追い出されるかもしれない。
……大丈夫、ばれないばれない。隣の部屋の彼にストーカーがばれていないのだ、大家に猫を飼ってることなんてばれるはずがない。
次の日の放課後、今日は彼の後をつけずにスーパーへ向かい、猫缶などのグッズを買う。
偶然にも彼もスーパーに用事があったらしく買い物中に見かける。何だかすごく不機嫌そうだ。
『ナーオ』
美味しそうに猫缶を頬張る猫を見てにんまり。
彼はたまにランニングをするから、その時に猫と散歩して偶然を装って出会おうなどと今後の作戦を立てていると、
「あら、3号室の」
「あ、大家さん。こんちゃす」
外から大家さんと彼の話し声が聞こえる。
気になった私はこっそりドアを開けて二人の会話を盗み聞き。
「……ところで、昨日下の階から猫の鳴き声がするって、あなたの上の階の住人が言ってたんだけど」
「……」
まずい、ばれかけている。しかも彼が疑われている。
上の階の住人に鳴き声が聞こえてしまうということは勿論隣の彼の部屋にも聞こえているのだろう。
彼が私が猫を飼っていると告げ口しないようにと願っていると、
「ああすいません。演劇部の役作りで猫の声を練習してたんです」
「あらそうだったの。あなた体育会系だと思ってたけど文化系なのね」
猫の神様が微笑んだらしく、彼は正体もわからない隣人のために嘘をついてくれた。
なんて優しいんだろうか彼は。ますます惚れてしまう。
納得して大家さんが去って行くのを見届けたあと、ほっと肩をなで下ろす。
しかしこのまま猫を飼っていればばれるのも時間の問題だろう。どうするべきか……
「まったく大家さんにも困ったものだよ! 俺が猫を飼っているだなんて! このアパートは動物禁止だからもし飼ってたら追い出されちゃうってのに! まあ、アパートの敷地からちょっと離れたところを寝床にしている猫の世話をするくらいなら問題ないだろうけどさ!」
習慣づいている彼の独り言が答えだった。
『ニー』
翌日の朝、アパートを出てすぐのところで気持ちよさそうに寝ている猫を彼が見つけて撫でる。
その後少し遅れて私も猫を撫でる。これなら毎日会えるし契約違反にもならないはずだ。




