第一話 私の平凡だった日常
おまたせしました
変な、どこか知っているような、知らないような夢を見た。荒れた街にたたずむ一人の女性が何かつぶやいているという夢。何を言っていたのかはわからなかったが、一つだけわかることは何かに「後悔」していたということだけ。
「変な夢……」
つぶやき、少女、笹倉なのかはベッドから起き上がる。なのかは今年で小学3年生になるしっかり者の少女。両親はすでに交通事故で亡くなってしまっているため、どこかずぼらな叔母と同じ屋根の下で生活している。ぼさぼさの長い髪を手櫛で整えながら眼鏡をかけ、翡翠色の眼でいつものように時計を見る。
起きたら時間を確認するのが、なのかのルーティンだ。そして時間を確認したなのかは絶望色に顔が染まる。
7時45分
なのかの通う『小雛沢付属小学校』は徒歩十分ほど。食事を含めた準備で間に合うかどうか。こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。準備しないと、ガチで間に合わない。
「うわあああああああああああん!!!! なぁあんでえええええええええええ!!!???」
ドタドタと階段を下りながら着替えていくなのか。寝ぐせも整えず、髪も結わずに生の食パンを加え、大急ぎで荷物をランドセルにブチ込み、さながら遅刻するラブコメ主人公のように家を飛び出していく。
「明日起こしてねって言ったのにいいいい!」
すでに通勤してしまっている叔母に文句を垂れる。
家を飛び出していけしたころには、すでに7時55分。学校の始業時間は8時05分なのでマジでギリギリなのだ。
遅刻したら担任に怒られるのもそうだし、なのかには狙っているものがある。それは皆勤賞。なのかが通っている学校では皆勤賞をとると何かしらの商品を担任の先生が何かしらの品をくれる。ゲームのカセットだったり、時計だったり、カードゲームのブースターパックだったり。とにかく豪華な品がもらえる。なのかはそれを狙っているのだ。
普段は通学路を通っていくのだが、今のなのかには、皆勤賞がかかっている。皆勤賞の品のためには手段を択ばない。それが、なのかのやりかただ。
以前見つけた路地裏。そこを通ると超大幅にショートカットできる。その道を見つけたときは友人と帰っており、友人と帰宅することを優先したため使うことはなかったが、今はその友人もいないし、なりふり構ってられ暇はあるわけがない。
「よーし、とおるぞ~!」
決意を固め、その路地裏を通る。
「狭い!あとなんか変なにおいする!」
文句を言いながら通っていく。5メートルか20メートルぐらい進んだ辺りで景色が一変し、そこは街路樹が立ち並ぶいつもの通学路にたどり着いた。そして学校は近く。
幸いにも信号は全て青。このまま走り抜ければ間に合うが、赤信号になれば一貫のおしまいである。ゆえに、ラストスパートを一気にかけ、学校に向かう。
「間に合え……」
顔をゆがませ、ハヤテのごとく駆け抜ける。残り50メートル。
「間に合えぇ……」
残り30メートル。
「間に合ええええええ!!!」
のこり5メートル。
「間に合ったぁ……」
何とか学校には間に合ったがまだ油断はできない。なのかの教室の3年A組は二階の端っこで、生徒玄関から一番遠いとこにある。そこまでがゴールだ。下駄箱にすぐさま向かい、シューズに履き替え足早に教室に向かう。廊下は走ってはいけないのがもどかしい。
途中で別クラスの担任の長谷川先生とエンカウントする。体育を担当している渋い先生である。
「おー、笹倉おはよう。珍しいな、こんな遅い時間に来るなんて」
「あ、長谷川先生おはようございます。ちょっと今日寝坊しちゃって……」
「なら、今日から気をつけろよ?」
「はーい!」
「廊下は走るんじゃあないぞ?」
「分かりました!」
ほどなくしてたどり着いた時にはもう息も絶え絶え。机に荷物を置いた瞬間にチャイムが鳴った。なのかの学校では朝、ホームルームが始まるまでの10分間に読書の時間を設けている。実質休み時間みたいなものだ。なので当然というか、何なのか、なのかの友人のうちの一人、西園澄玲が近づいてくる
「おはよう、なのか。今日遅かったじゃん」
「おはよう澄玲ちゃん。そうなの、今日寝坊しちゃってさあ。大急ぎで来たんだよね」
机の上に座り、澄玲はなのかの話を聞く。
「災難だったねぇ。で、それで倒れかけてると」
「澄玲ちゃん、机から降りなよ。先生に見つかったらまたネチネチ言われちゃうよ?」
「大丈夫ダイジョブ。まだ先生は来ないよ」
だいぶ余裕そうな澄玲は続ける。
「アタシ調べなんだけど、センセって足音だいぶ大きいから来てもすぐにわかるでしょ」
余裕である。油断である。慢心である。その結果、澄玲はすごいひどい目に合う。
なのかは澄玲の顔を見て固まっている。正確にはその後ろだ。
さて、話は変わるが。この世には『フラグ』と、いうものがある。例えば、「なんだ、ただの猫か……」といって油断し、青色のはんぺんのバケモンが急に出てきたり、「こんな部屋いられるか!俺は帰るぞ!」といいそのまま無残な死体の姿で発見されたり。「アンタのことなんかちっとも好きじゃないんだから!」とか言っておきながらそのまま主人公と付き合ったり。まあ、それらを総じて『フラグ』というのだが。そしてそのようなセリフなどを言った後に実際にそのような出来事が起きるっことを『フラグ回収』というのだが。
今まさに、そのフラグをダイナミックに回収した瞬間なのであった、
「? どったの、なのか。そんな幽霊でも見たような顔して」
「す、澄玲ちゃん、う、後ろ!」
後ろにいたのはなのかのクラスの担任である、賀上 院集だった。イケメンで優しく、若い女性教師から人気の先生である。いつもは優しい顔なのだが、いまは笑顔なのだがゴゴゴゴゴとか聞こえそうな気迫を備えている。
なのかに後ろと言われた澄玲はふり向くとようやく気付いたのか、滝のように冷や汗を流す。そしてドドドドドとか聞こえそうな雰囲気で後ろを振り向きニッコニコの賀上先生の顔を見た。涙目である。
「アタシの後ろに何が……! しぇ、せんせぇ……」
「はい、先生です。さて澄玲さん。何故先生が机の上に乗ってはいけないと話した理由は覚えてますか?」
「は、はい!えっと、あの、バランスを崩して倒れるととても危ないからです!」
「なら、すぐにやめましょう。けがをして心配するのは君の友人や、君の家族なのですから」
「ひゃい……」
素直に従う澄玲。先生は示談は優しいが、起こると怖い。マジで怖い。普通にちびる。故に、逆らうという命知らずな行為を行う生徒はほぼいない。そんなことをするのはよほどの大馬鹿者だけぐらいである。
「さて、皆さん席についてください。朝の会を始めます。今日の日直は……佐藤君ですね。」
日直の佐藤が出席をとる。本日も全員出席していた。つぎは先生の話である。基本的には連絡事項や割とどうでもいい話が続くのだが、今日は違った。真剣な顔で先生は言う。
「本日は皆さんに大事な話があります。知っている方もいるかもしれませんが、最近失踪事件が隣町で起きているようです。なので、防犯ブザーを配ります。あとついでに替えの電池も。そして、集団下校を心がけてください。以上!」
そうして朝の会が終わった。会が終わった途端、クラスの男子たちは失踪事件のことで話題になった。
「なあ佐藤、失踪事件のこと知ってたか?」
「知らん……なにそれ……怖……」
「ニュース厨の佐藤が知らない……だと!?」
「あー、でも俺ちゃん聞いたことあるヨ」
「マジか!?」
そして気になったなのかは会話に混ざってく。
語尾が特徴的な鼠こと鼠沢に聞く。
「ねぇねぇ、鼠知ってるの?」
「まあ、うわさに聞いた感じだけどナ。なんでも、化け物が襲ったとカ」
「すごいしょうもない」
「まぁ、疑われてもしょうがないよナ」
「疑わない人間はいないと思う」
「佐藤君も知らないなんて珍しいね」
「おおおお俺のリサーチ不足だな。」
「わわ! 佐藤君顔赤いよ?大丈夫?」
「ダダダダ大丈夫!俺は大丈夫だからな!」
そしてなのかは澄玲のところへ戻る。
「鼠曰く「化け物のせい」らしいけど……どうしたの?暗い所にいる猫の目みたいな目になってるけど」
「……」
「澄玲ちゃん?」
「この人たらしめ」
「なんで!?私なんか変なこと言ったかな!?」
そんな話をしているとチャイムが鳴った。
時間あっという間に過ぎてゆく。
気付けばもう給食の時間だった。机を寄せ、澄玲ともう一人の友人のゼフィラス、──あだ名はゼフィー──と給食を食べる。
なのかはあの夢のことを話す。
「そういえば、今日変な夢見たんだよね。妙にリアルな夢なの」
「どうしたのさ、急に」
「いや、起きる前にどうしても気になっちゃって。」
「なのかの気にしすぎじゃないの?」
「ん~ヤバいカモですね」
話を聞いたゼフィラスが解説を始める。
「澄玲は今までどんな夢を見たことがありマスか?」
「え?そりゃ……あれ?あんま覚えてないかも」
「ソウ、それが基本的な事なんデスヨ。基本的に夢の内容なんてシャボン玉みたいにぱっと消えるモノなんデス。なのかちゃんがさっき、「妙にリアルな夢だった」っていうぐらいには覚えているんデショウ?」
「え、うん。なんか、燃えてる街中で、大人の女性が公開しているみたいな感じの夢なんだけど……」
「もしかしたらそれは予知夢カモしれませんね」
「予知夢?」
予知夢について知らないなのかと少し知っている澄玲。
「え、予知夢って仮面ライダーゼ〇ツの?」
「それとは少し違いマスが、日々のストレスから、脳が未来に起こる展開を無意識にシミュレーションしていた結果、あのような夢を見てしまった……というのもあるらしいのデスが、実際にガチで未来を予知している場合もあるとカ。まあ大かたの原因はストレス、デスネ。なにか心当たりはありまセンカ?」
「……昨日、おばさんが肉じゃがを作ったはずがなぜかカレーになってたこととか?それくらいしかないよ」
「まあ、休めってことじゃない?おばさん料理できないからほぼ毎日なのかが作ってるんでしょ?」
そんな雑談をしていると、すぐに休み時間は過ぎてったのだった。
次の授業は五時限目。五時間目は算数の授業だった。ちなみになのかの苦手な教科である。まあ、どちらかといえば、というほうだが。
(算数か……苦手なんだよね……)
自身の席である主人公ポジの席にて授業を受けるなのか。小雛沢付属小学校では水曜日と金曜日は五時間で下校することになっている。
だがしかし、普通にめんどくさいので気分が乗らない。退屈だ。その退屈を紛らわすように外を見る。校庭を見やるとまずはグラウンドを見る。猫がじゃれあっているだけの平和な校庭だ。そして次に花壇を見る。
(あ、校庭の向日葵が咲きかけてる。いつになったら咲くのかな……あれ?誰か……いる?)
花壇の咲き掛けの向日葵を観察していたなのか。そして、花壇の前にいる人影を見つける。その人影は黒い服を着ていた。
(誰? 夢の中にいた人なのかな? 恰好が少し似てるけど……)
そして瞬きをした瞬間にその人影は消えてしまった。まだ探せばいるかもしれないと思い、花壇の周りを観察するも誰もいない。
(気のせいだったのかな?でも実際にいたと思うんだけどなぁ……)
納得もいかずに考えるなのか。そして夢中で考えすぎた結果、先生の話をききのがしていた。
「……さん?笹倉さん?」
「ウェ!?は、はい!」
「この問題はわかりますか?」
グラフの目盛りを読む問題。
「あ、えっと……2冊?」
「残念、3冊です。」
「ああぁ」
地獄の底からひねり出したような情けない声をあげるなのか。
「ちゃ、チャンスはぁ……」
キーンコーンカーンコーン(煽)
煽るかのようにチャイムが鳴る。
「残念。また月曜日にリベンジしましょうね」
少し涙目のなのかを慰める賀上先生。優しいね。
掃除の時間になった。ほうきで床のゴミをはいていく。
「……」
「……なのか大丈夫?」
「ワ、ワタシだって、そんな日もありマスよ。次頑張りましょう!
「そういう慰めが結構効くんだよね……ありがたいけど。心配してくれてるのも重々承知なんだけどもさぁ」
「ご、ゴメンナサイ!!」
そうして仲良し三馬鹿は掃除を完了した。
そして帰りの会が始まる。
「皆さん。朝の会でも私が言ったように、必ず集団下校を心がけ、変な人が追いかけてきたらすぐさま防犯ブザーを起爆するように!」
「起爆って……」
苦笑するなのか。
「はーい!」
何の違和感も持たない生徒たち。なんでやねん。
(なんでさ……なんで誰も違和感持たないのさ……)
そして下校していく生徒たち。各々が7から8人の集団で自宅に向かって友人たちと帰宅していく。のだが……
「……うん知ってた。こっち方面がアタシとなのかとゼフィーしかいないのは分かってたけど!いつもと変わらないじゃん!?」
「ま、まあまあ落ち着いて」
「そうデースヨ。それに先生は『一人で帰るな』という意味で言ったんだと思いマスよ?ワタシたちは一人で帰ってませんし、先生の言いつけは守っているのデース!」
「そう……なのかな?」
三人はいつも通りの道のりで帰っていく。
「そうそう、私今日ここ通ってきたんだよね。結構近道なるよ?」
「へぇ……度胸すごいな……絶対怖かったでしょ?」
「余裕だよ。うん」
そして分かれ道。
「ここでワタシ達はお別れデスネ。デハなのか。また月曜日会いましょう」
「まったねーなのか!」
「また明日ー!」
そうして、ゼフィーたちと別れ、一人帰路につくなのか。そうしてとことこ歩いていると、ある違和感に気付いた。
「食べている音?」
そう、くっちゃくっちゃと。何かを食べている音が聞こえてきた。好奇心に駆られたなのかは音のするほうへ向かう。好奇心は、猫をも殺す。うまい言葉だ。──まさになのかが好奇心に駆られた猫だったものである。
「ヒッ!!」
悲鳴を上げた瞬間、なのかはすぐさま口を閉じる。
「ルルル……」
なのかが見たもの。それは多人数で食事会をしている場面などではなく。人が、食われているところだった。三匹の犬のような怪物に。
捕食行為を行っている怪物の見た目は犬に近い。だが、犬歯や前足が異様に長いし、何より、目が一つもついていない。なのかはむかし、犬が飼いたくて精一杯調べたのだが、あんなイヌ科の生物は見たことがない。
なおも怪物は人を食べている。くっちゃくっちゃと、人の肉体をむさぼる。内臓が、血が飛び散り怪物の顔を鉄錆色に染めていく。そしてその食われている人の顔は恐怖で引きつっていた。まるで生きたまま食われているかのように。
「に、逃げなきゃ……!」
恐怖に駆られたなのかは急いでこの場から離脱しようと背を向けて走る。
「ルゥゥアアアアアアアアアア!!!!」
しかし犬みたいな怪物はなのかに気付いていた。ただ、目の前の獲物を食らうことに夢中だっただけ。なのかというのこのこと現れた新しい捕食対象が逃げるとなれば、それを許すはずもない。
怪物は逃げたなのかを追いかけ始めた。
「はぁ……はぁ……」
なのかは必死に逃げる。死にたくないから。それでも所詮体力は子供。次第に走れなくなってしまった。怪物はなのかをむやみやたらに追いかけまわしていたのではなく、七日の体力切れを狙っていたようだ。
「ガウッ!」
一匹が、我先にとなのかに襲いかかる。
「いやだ……死にたく……ない!」
今から襲われ、食われると察したなのかは。そのまま怪物に食われ、その人生を終えてしまう。
刹那。
一筋の光が落ちてきた
更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした




