ベリル、魔国へ行く
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ノトが出掛けてから暫くしてロータスが戻って来た。
無事に引き継ぎが出来たのかスッキリとした顔をしている。
一方、ノトがナズナ村から戻って来たのは暗くなりかけた頃だった。
余程楽しかったのか明るい表情であった。
ナズナ村でどうだったのかを訊くなど野暮な事は誰もしない。
皆、温かい眼差しでノトを見るだけだ。
ただ、クリムゾンだけはニヤニヤとした表情でノトを見ていた。
ローズが小声でクリムゾンに言う。
「そんな顔して見ないのよ」
「だってさ、ノトの嬉しそうな顔‥‥‥」
「それでもよ」
「わかったよ‥‥‥我慢する」
「そうしてね」
その日の夜はローズが作った夕食を食べながら、楽しく過ぎていった。
∗∗ 翌日 朝食後 ∗∗
「皆、今日は私はメルクリウスと出掛けてくるよ」
「メルクリウスさんと?どちらに行かれるのですか?」
「‥‥‥ちょっと魔国までね」
「「「 魔国? 」」」
「以前話したと思うけれど、少し気になる事があるので確認してくるんだよ」
「確か‥‥‥魔国の森に気になる物があるって言っていた?」
「そうだよ。メルクリウスと共に調べてくるよ」
「わかりました。私とノトとティムとクリムゾンは留守番でしたよね」
「そうだよ。ロータスがいてくれるから、何かあっても大丈夫だろう。ロータス、皆を宜しくたのんだよ」
「はい、ベリル様お任せください。何者が襲ってきても皆を護ります」
「あぁ安心だ」
「僕達は今日も薬作りを頑張ります」
「そうね、たくさん作りましょう」
「俺も手伝う」
「‥‥‥僕も」
‥‥‥‥‥ん? なんか、ティムは元気が無いわね。昨日も寝てばかりいたし。まだ疲れが残っているのかしら? 続くようなら回復薬を使った方がいいのかな? それとも、お父様に相談しようかしら‥‥‥。
「ティム、疲れているのなら無理しなくていいのよ?」
「‥‥‥うーん‥‥‥寝てようかな」
「いいわよ。‥‥‥回復薬を使う?」
「ううん、大丈夫。眠たいだけなんだよ」
「そう?」
ローズとティムのやり取りを聴いていたベリルが声をかけた。
「どうかしたかい?」
「ティムが元気無くて、眠たいそうなんです」
「そうか‥‥‥‥‥」
ベリルはティムをじっと見つめた。
「なるほど‥‥‥。ティムは寝かせておきなさい。病気ということでは無さそうだから、私が戻って来るまでゆっくり休ませておくようにね」
「はい、わかりました。そうします」
ティムは窓際のソファーに行き横になったので、そっと毛布をかけた。
「地下で薬を作っているからね。時々様子を見に来るわね」
「うん」
ティムは眼を閉じると直ぐに寝息をたてた。
∗∗ ∗∗ ∗∗
「それでは、行ってくるよ。行こうかメルクリウス」
「はい、ベリル様」
家の前で2人が手をあげた。
静かに風が渦を巻き、ベリルとメルクリウスを包む。
2人は竜型へと変化した。
ベリルは緑がかった水色の、メルクリウスは明るい緑色のドラゴンとなった。
どちらの鱗も透き通っていてキラキラして美しい。
音もなく静かに地を蹴ると、ベリルとメルクリウスはあっという間に空高く浮かんだ。
そして家の上空を旋回すると魔の森の奥を目指して翔んでいった。
「壮観よね~」
「うん、凄いよな」
「お2人とも美しいドラゴンだよね」
「ノトの言う通りね」
「はい、ベリル様もメルクリウス様も御立派な姿です」
私達は2人の姿が見えなくなるまで眺めていた。
「さぁ、行こうか」
「そうね、薬作りを始めましょう」
「よーーし、俺も手伝うからな」
「え‥‥‥と私は‥‥‥」
「ロータスは居間にいてくれるかしら?ティムを1人にするのは心配だわ」
「そうだね、それがいい。もし、お客さんが来たら知らせてくれると助かるよ」
「はい、わかりました。居間で番をしております」
「ふふふ、大袈裟ね。もっと気楽でいいのよ?」
「はい‥‥‥」
それからは地下の製薬工房で、様々な薬を作った。
ローズが楽しみにしていた美容液や回復薬、強壮薬も作った。
満月の晩に採集した薬草と、以前魔蟻の女王から貰った魔蟻ダケを使った。
どれも貴重で高価な素材であった。
‥‥‥‥‥この魔蟻ダケ、実は私、幾つか持っているのよね。女王から貰った後、庭で働き蟻さん達とノトのお菓子と交換したのよね。私の空間収納に仕舞ってあるのよ。‥‥‥そしてこの事は誰にも言ってないの。 高価な素材だから、いつかホンベルクに行ったら売ってお金にしようと思ってね。ふふふふ、私のおこづかいよ。
「ローズ嬉しそうだね。そんなに美容液が嬉しいの?」
「へ?いやあの、そう嬉しいわ」
「自分で使って効果を確認してみてね」
「えぇそうするわ」
ノトはローズの思惑を知らずにニコニコと笑顔だった。
◇ ◇
「この辺りだったね」
「そうです。あっ彼処です。あの切り立った岩です」
「よし降りよう」
ベリルとメルクリウスは岩壁の前に広がる草地に降り立った。
降り立つと同時に人型の姿へと変わる。
2人はゆっくりと岩壁に近付いて行く。
「私はベリル。東の地に住む古代竜にして水の竜王。魔国に行く門を開けてくれ」
-----ズズズズッ---ズズッ---。
岩壁の前に地中から台座に乗ったガーゴイルが2体現れた。
2体の間はかなり離れている。
ガーゴイルの眼が赤く光った。
-----確認しました---水の竜王ベリル様---お進みください---。
岩壁に壮麗な門が現れ、静かに開いていく。
ベリルとメルクリウスは門の中へと入った。
暗い道には両側に明かりが灯されていた。
2人は背に翼だけを出し、先へと進んで行った。
そして門が静かに閉じられた。
-----ズズズズッ---ズズッ---。
ガーゴイルは地中へと沈んでいった。
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:*(〃∇〃人)*:




