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色変わりの眼鏡

 

 「服………ですか?」

 「そう、服。着替えや諸々必要だろう?」

 「はぁ、確かにそうですね。私、何も持っていませんし」

 「安心したまえ。ふふふ、色々あるからね。まずは、ここを拡げよう」

 

 そう言うとクローゼットの中に手を入れた。中が一瞬光った。


 「これでいい。広くなったから、いくらでも収納できる。あとは………ここから選ぶんだけどね、君の好みはどんな服?」


 お父様は何も無い空間を覗きこみ、そして手を入れると何着もの綺麗なドレスを取り出した。


 「この辺りかな………靴や下着、化粧道具もいるかな」


 ぶつぶつと話しながら、次々に物を出していく。


 あの空間は、椅子を出したものと同じものだ。空間の中に何があるのだろう。


 「次々と物を取り出している、それは何ですか?」

 「ん?これ?これは空間収納とでも言うのかな。魔力を使って、収納場所を作っているんだよ。魔力の大きさで収納できる広さが決まる。クローゼットの中も広げておいたからね。君にも教えるから安心したまえ。ところでドレスはこれでいいかな?」

 「ドレスはとても素敵で満足ですが、もう少し動きやすいものがあると助かります。薬作りや薬草作りの時はドレスだとちょっと………」

 「あぁ、そうだね。では、こういう感じでどうかな?」


 次に取り出したものは、襟や袖口に刺繍のある丈が長めのチュニックとゆったりとしたズボンだった。どことなく、中央アジアや西アジアの民族衣装に似ている。間違いなく動きやすいはず。それに、とても私好みだ。今着ている服もロングチュニックに細めのズボンだし、これがいい。


 「これがいいです。動きやすそうです」

 「そうか、いいよ。これも何着かあったはず。腰に帯を着けて、ブーツを履くんだ。西の大陸の草原の民がよく着ている服でね、彼らは馬に乗り草原を自由に往き来する。確かに動きやすいはずだ」

 そう言うと似たような服を幾つか取り出した。


 「あの………何故………女性用の衣服をそんなにたくさん持っているんですか?」

 「……………いろいろとね、大人の事情というものがあるんだよ………」

 「そうですか。すみません、もう訊きません」


 言えない事ってあるものね。私も大人だから、その辺は理解できるわよ。もう訊かないね。


 「あの、たくさんの服や靴などありがとうございます」

 「うん、どういたしまして。 急だけれども、服を片付ける前に、一つだけ魔法を覚えてほしいんだ。 洗浄魔法。 物を綺麗にする魔法だけれど、服や物だけではなく、生き物も綺麗に出来る。お風呂に入れない時や洗濯出来ない時に助かるし、部屋の掃除もこれで大丈夫。便利だろう?」

 「すごいですね。是非とも覚えたい魔法です」

 「少量の水で洗って、風で乾かすのをイメージするんだ。 魔法はね、想像力と具現化力が大事なんだ。いかに想像して具現化するかだね。どんな事をしたいか想像出来たら、自分の中の何の属性を使うか、どれくらい魔力を使うか、どのような形にしていくか、これらを組み合わせて具現化していく。 まぁ、言葉で言うよりもやってみたほうが早いかな」


 服を一着手に取ると、『 洗浄 』と呟いた。

 薄い水の膜が服を通り抜けると直ぐに消え、続いて風が吹き抜け消えていった。服は元の通り、全然濡れていなかった。


 「こんな感じかな。どう?出来そう?」

 「やります。覚えたいです」


 うん、想像、想像。全自動の洗濯機と衣類乾燥機を続けて使う感じで、規模は小さく、魔力は弱く………かな。使う属性は水と風ね。あと、火も少しだけ足して温風がいいかな。 よし、チャレンジ。

 私は服を手に取り、思い描いたように魔力を出してみた。水…風…火…。

 洗って乾かして、といい感じにきていたのに、最後に服が縮んでしまった。

 「あらら、火が余計だったかな。温風は服には駄目かな」

 「なるほど、温風ね。面白いね。髪を乾かす時はいいかもしれないけれど、服には使わないほうがいいみたいだね。生地が縮んでしまった」

 「あぁぁ、出していただいた服を台無しにしてしまい、すみません」

 「ふふふ、大丈夫。元に戻すから。 『 復元 』」

 

 お父様がそう呟くと服は元の大きさに戻った。


 うわぁ………凄いわ。まさに魔法だわね。これ、いいな。いつか、使えるようになりたい。



 「今の復元魔法はね、回復魔法の応用。状態を回復させるから。対象が物というだけ。光だけではなく他の属性も使うけれどね。組み合わせ次第で魔法の可能性は広がる。面白いだろう?」

 「はい、面白いですね」

 「洗浄魔法は大丈夫そうだね。よし、いいね。君はなかなかいい弟子になりそうだ。頑張りたまえ。 私は先に下へ行くから、服を片付けたら降りておいで」

 「はい、わかりました」


 私は、ベッドの上に並んだドレスやチュニックをクローゼットに仕舞っていった。クローゼットの中は、まるで一つ部屋が繋がっているかのように広く、幾らでも服を入れられそうだ。ドレスや靴、他いろいろはどれも色合いもデザインも品があり、センスの良さがわかる。


 お父様は見た目だけでなく中身も品があって素敵なのね、きっと。でも、この大量の婦人服は何なのかしらね。……………もしや、複数の恋人?愛人?がいるとか? 大人の事情ってそういうこと? ……………そんな感じには見えないから、違うか。疑うのは良くないわね。 さて片付けしなきゃ。





 一階ではもう夕食の準備が整っていた。


 「ノト、もう準備は出来てるのかい?」

 「はい、軽くとのことでしたから、簡単にさせていただきました。 ところで旦那様、眼鏡の予備はあるんですか?」

 「眼鏡の予備?何故?」

 「ローズにも眼鏡が必要ですよね」

 「あぁ、そうだった。すっかり失念していたよ。ここに住むのならば眼鏡は必要だ。予備が一つあるから、とりあえずそれを使ってもらおう」

 「サイズも違うし、早めに用意してあげてくださいね」

 「わかった。そうしよう。何時にするか……………ノトは明日の予定は?」

 「特に無いですよ。薬作りと畑仕事です」

 「そうか、では明日、眼鏡を買いに行くか」

 「明日ですか?急ですね。でも、急いだほうがいいですかね。そろそろ商人や近隣の人達が薬を買いに来ますからね」

 「うん、そうだね。そうしよう。 お、ちょうどローズが降りて来た。 片付けは終わったかい?」

 「はい、終わりました」

 「明日なんだけれど、出掛けるからね。寝坊は駄目だよ」

 「はぁ、わかりました。どちらに行くんですか?」

 「眼鏡を買いに。ドワーフの国まで」

 「ドワーフの国ですか、そうですか……………ってドワーフ?あのドワーフ?」

 「ドワーフを知ってるの?」

 「名前だけですが」

 「そうか。これ、ノトがかけているのと同じ私の眼鏡」


 お父様は空間から眼鏡を取り出して、軽く持ち上げてからかけてみせた。

 すると、先ほどまでは金色だった瞳が紫色に変わった。


 「えっ?色が変わりましたよ?」

 「そう、これはね、『 色変わりの眼鏡 』っていうもので、ドワーフの細工物。ドワーフはこういう物を作るのが上手いんだよ。君の瞳の色も隠さないといけないから、眼鏡が必要なの。だから、明日買いに行くよ。出来るまでは私の予備の眼鏡を使っておいてね。はい、これ」


 空間からもう一つ取り出した眼鏡を受け取ると、私もかけてみた。少し大きい。特に色は付いていないようだ。壁に掛けてある鏡まで歩いて行き、そっと覗いてみると瞳は紫色に変わっていた。

 これが、『 色変わりの眼鏡 』か………。面白いね。

 眼鏡を外すと、元の金色の瞳に戻った。

 でも、どうして瞳の色を隠すのかしら?お父様と私の金色の瞳とノトの赤い瞳………。それは隠さないといけないものなの? 何故?




 


 




読んでくださり、ありがとうございます。感謝、感謝です。読んでくださった皆様に良い事がありますように!

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