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属性に影響するもの

 私は静かにベッドに腰掛けた。


 「あの、質問って何ですか?」

 「君の属性の事なのだけれどね、……………君、もしかして心の中に何か闇を抱えていたりするのかな?」

 「闇ですか?ん………そうですね、抱えているといえばそうかもしれません」

 「聴いてもよいのかな?」

 「はい、いいですよ。秘密にすることでもありませんし」


 私は思いあたる事を少しずつ話し出した。

 子供の頃から、母親の言動や行動に傷付き、大人になってからは距離を置いていたこと。 近所の同級生から仲間外れにされたこと。 仲が良いと思っていた友人が、進学をきっかけに連絡がこなくなり、なのに私の元彼とはしっかり連絡をとっていたこと。 職場では、同期よりも言葉きつく注意されたり、面倒臭い仕事をいつもやるはめになっていたこと。 他にもたくさんあるが、全てを話すと長くなるので幾つかを簡単に話した。


 「うん………、なかなか経験してきたんだね。一つ一つは小さな事でも、それが長年続いていけば、心の中に澱のように溜まってしまう。 それが浄化出来なければ、心の闇として君の中に存在し続けるだろうね」

 「心の闇ですか………」

 「でも、これで納得したよ。闇の属性が強かった理由がね。私の力を与えたといっても、君が持つ個性によって変化するんだ。私と全て同じにはならないんだよ。 それと、……………いろいろ大変だったと思うけれど、全て過去の事だからね。今起こっている事ではない。過去の出来事に囚われ支配されてはいけないよ」

 「………そうですね。囚われてはいけませんね。気をつけます。 あの、念のためお話しますけれど、私、楽しい事もそれなりにありましたし、大人になってから素敵な友人も出来たんですよ。まぁまぁの人生だったと思ってます」

 「そうか、それは良かった。安心したよ」



 私は、もう会えない友人の顔を思い浮かべて少し寂しくなった。お互いにいろんな悩みや思いを語り合った、私にとってとても救いになった人達。 

 みゆさんとゆきさん、二人には私が元気でいることを伝えたい。二人だけではなく、息子と娘にも。………他の人は、まぁいいや。あっ、孫に会いたかったなぁ。

 娘の大きなお腹を思い出し、もう会えないんだという現実をひしひしと感じ始めた。



 「ええと、次の質問をしてもいいかな?ちょっと元気がないけど、大丈夫?」

 「はい、大丈夫ですよ。どうぞ」

 「光の属性の事だけれど、一番強かったよね。何か心当りはある?」

 「心当りですか?ん…例えばどのような?」

 「そうだね、神殿で働いていたとか誰かを癒す仕事とか、そういう場所に住んでいたとかその辺りかな」

 「そうですね、私、若い頃ナースをしていました。それですかね?あと、かなり信心深い方だったので、神仏には手を合わせていましたね」

 「ナースとは?それと、神仏とは何?」

 「ナースというのは、病院で治療の補助をしたり患者さんのお世話をしたりする仕事をする人のことです」

 「病院というのは、治癒院のことかな?」

 「たぶんそうだと思います。 神仏というのは………神様のことです。私のいた国にはたくさんの種類の神様がいたんです。纏めて言っただけです」



 仏様のことを上手く説明出来ないから、八百万の神様として説明することをお許しください~~。………きっと許してくださるわよね。



 「そうか、治癒院で働いていたのか、これも納得だね。治癒院は大抵神殿の側に建てられていて、回復魔法や治癒魔法といった方法で人々を救っているんだ。これらの魔法は浄化魔法と共に聖魔法とも言われていて、光の属性がなければ使えない。他の属性に比べて数は少ないんだよ。だから、光の属性を持つ者は神殿に集められることが多くて、神殿で神官になったり治癒院で働いたりするんだ。 君が経験した仕事が属性に影響したんだね。信心深いというのも影響しているかもね。神殿では、創世の女神に祈りを捧げているから」

 「創世の女神?」

 「そう、この世界を創られた女神。そこのタペストリーの中央に描かれている方だよ」


 ベッドのすぐ側の壁に掛かったタペストリーを見上げた。中央に光輝く女の人がいて、左右に金色と銀色の大きな蛇?がいる。それらを取り巻くように六色のドラゴンが翼を広げていた。黒・白・赤・黄・緑・青のドラゴン。属性調べで使った玉と同じ色。 おそらく関係があるのだろうと思われる。ドラゴンの周りには、山だったり川だったり、木や草花や様々な生き物が描かれている。人らしき者達は戦っているようだ。 まるで、曼陀羅のように見える。


 「君も君の世界の神に祈りを捧げていたのだろう?神からの恵みがあったのだろうね」

 「はぁ、どうでしょう」

 「ふふふ、そうだと思うよ。 さて、次の質問をしてもいいかい?」

 「どうぞ」

 「君は何故、そんなに落ち着いているんだい?」

 「は?落ち着いていますか?」

 「あぁ、そうだ。普通、いきなり知らない所に放り出されたら動転して、パニックを起こすだろう?見ている限り、君は私のことも君の身に起きていることも冷静に受けとめているよね。何故なのかな?この世界に来たことがあるの?」

 「ええと、来たことはないですよ。 なんと説明すればよいか………」


 なんて説明しようか。私が、ラノベや漫画にアニメが好きなオタクオバサンで、それらに描かれている異世界に似ているんですよ~~、とは言えないよね。言っても通じないと思われるわよ。ここは、言葉を選んで説明しようか。


 「あの、私、物語を読むのが好きだったんです。神話や伝説や作り話です。この世界は物語の中の世界に似ているんです」

 「物語?ほぅ……………私のようなドラゴンも出てくるのかい?」

 「はい、勿論です。よく出てきますよ」



 定番ですとも。



 「どんなふうに?」

 「ええと、お話によりますけど、神のようだったり、悪者だったり、いろいろです」



 悪く描かれるほうが多い気がするけど、それは内緒にしておこう。



 「悪者か……………それはきっとワイバーンだね」

 「はい?ワイバーン?」

 「あぁ、我々ドラゴンと見た目が似ているから一緒くたに考えられることがあるが、似て非なるものだ。我々ドラゴンは聖獣とも呼ばれるが、ワイバーンはドラゴン型の魔物。全く違う。見た目だけで判断し、ワイバーンを倒してドラゴンスレイヤーなどと言う者もいる。納得出来ないね」

 「そうなんですか。いろいろと難しいのですね」

 「まぁいい。なるほど、わかったよ。物語で得た知識があったから、この世界もすぐに理解出来たということでいいかな?」

 「はい、その通りです」



 本当にその通り。オタク知識が無かったら、絶対にパニック起こしてましたよ。読んでて良かったラノベに漫画。見てて良かったアニメーション。自分で自分を褒めてあげよう。 ただ、ゲームは全然やらなかったから(………老眼だし、反射神経鈍いし………)その辺りの知識は不足しているのよねぇ。それは残念。仕方ないわね。


 

 「うん、私からの質問はとりあえず今はこのくらいかな。君からは何かある?」

 「いろいろありますけれど、今はいいです。少しずつ訊いていきます」

 「わかった。気になることは何時でも訊いてくれて良いよ」


 お父様は立ち上がると、クローゼットの前まで歩き、扉を開けながらにこやかに言った。


 「さて、これから君の着る服を用意しなくてはね」

 



 





読んでくださり、ありがとうございます。感謝、感謝です。読んでくださった皆様に良い事がありますように!

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