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静かな雨

見つけてくださり、ありがとうございます✨



 獣人の集落で子を産むと聴き、

 城からも護衛を付けたかったが、

 集落には退魔と退人の結界が張られていた為

 魔物達は入る事すら出来ない。

 人族もだ。

 当時、人族が獣人族の集落を襲い獣人族を捕らえる事件が多発していた為だ。

 魔物と人族を寄せ付けない結界なので、

 魔物と人族に襲われる心配は無い。

 その油断が不味かった。


 ベリルが不在の時、

 集落は襲われた。

 そこに住む者達と同じ獣人に。

 

 異変に気付き直ぐに戻ったベリルだったが、

 対面したのは2度と微笑むことは無い妻の姿であった。


 涙と共にあげられた咆哮は雷雲を呼んだ。

 辺りは雷鳴に包まれ、

 集落を襲った獣人達は雷撃を受けて消し炭の様になった。


 こっそりと集落の外で護衛をしていた魔物達が

 怪しい動きをしていた人族の兵達を捕らえた。

 集落を襲った獣人達を操っていたのだ。


 竜型になったベリルは兵達を一纏めにすると足で掴み、

 兵達の所属する国へと飛んでいった。


 数刻経ち戻ってきたベリルは、

 奥方を優しく抱き上げると何処かへと静かに飛んでいった。


 その後、7日ほどの間

 東の大陸に静かな雨が降り続いていた。


 後日、風の精霊達からの話では、

 兵達の国だけは激しい雷雨に見舞われ水没したらしい。

 400年経った今でもその地は湿地となっている。


 水晶の城にベリルが姿を現したのは、

 奥方を失ってから50年ほど経ってからであった。



 

 「‥‥‥私が知っているのはこれくらいなのよ」

 「‥‥‥私は何も知りませんでした」

 「辛い出来事だったから、此処では誰も話題にしないわ。‥‥‥ローズもベリル様に訊いては駄目よ」

 「はい、勿論。‥‥‥とても訊けません」


 ‥‥‥あの穏やかで優しいお父様に、そんな辛い過去があったなんて。

 ‥‥‥私だったら絶対に許せない。人族全部を憎むと思うわ。

 ‥‥‥人族があまり好きではないのも無理のない事だったのね。


 「ローズ、大丈夫?」

 「え?」

 「泣いていてよ?」

 「そうですか?気がつかなかったです」


 私は慌てて涙を拭った。


 「2度目の奥方も失ってしまったけれど、貴女がいてどんなにか救われたことでしょうね」

 「‥‥‥‥‥」


 ‥‥‥お父様には2度目の奥方はたぶんいないと思うし、私は本当の娘ではないから救いにはなっていないと思う。言えないけど。


 「ローズ、ベリル様をたのむわよ。私達では駄目なのよ‥‥‥」

 「ウンディーネ様‥‥‥私に何が出来るのか‥‥‥」

 「何もしなくていいのよ。娘なのだし、側に居てくれればそれでいいの」

 「‥‥‥それならば出来ますね」

 「えぇ、ありがとう。さぁ、少し休んで。魔の森へ行くのでしょう?」

 「はい」


 私が横になるとウンディーネ様はそっと部屋を出ていった。


 

 眠れる訳がないわーーー!!

 お父様の奥方、しかも人族。

 黒い髪に黒い瞳、400年前‥‥‥。

 何かが引っ掛かるのよね、何だったかしら?



 -----コンコンコン、コンコンコン


 窓の方から音がする。


 何かしら?


 「おぉーい、ローズ、俺だ、クリムゾン。ティムも一緒」


 私は慌てて駆け寄り、窓を開けた。

 バルコニーにティムを背負ったクリムゾンがいる。


 「どうしたの?」

 「退屈だからローズの部屋に来た」

 「退屈って‥‥‥休まないと夜が大変よ」

 「うん、だからローズの部屋で休む」

 「お姉ちゃん、何処かに行ってたでしょ?お話聴かせて?」

 「‥‥‥それが目的か」

 「へへへ、いいだろ?」

 「いいわよ、中へどうぞ」


 ティムとクリムゾンは部屋へ入ると、真っ直ぐにベッドへ向かった。

 クリムゾンはポンっとケット・シーの姿に戻るとティムと共にベッドに潜り込んだ。


 「皆で寝ようねぇ」

 「そうね、そうしましょう」


 私もベッドに入ると、

 ケルピーと湖に行った事を話した。

 最初のうちは話を聴いていた2人だったが、そのうちにスースーと寝息をたて始めた。

 

 私も寝よう。

 2人のおかげなのか直ぐに眠りにつくことが出来た。



 ‥‥‥‥‥‥‥‥。

 ‥‥‥‥‥。



 「ねぇお姉ちゃん、起きて」

 「おーい、そろそろ起きないと不味いぞ」


 「んーーー了解」


 私は寝ぼけ眼で起き出した。


 扉の外が少し騒がしいので、見に行ってみた。

 

 「姫様、起きられましたか」


 見知らぬ女の人が扉の前に立っていた。

 緑色の髪に桃色の瞳。

 凛々しい顔立ち。

 ドレス姿ではなく、動きやすい服装をしている。


 「あの、貴女は?」

 「姫様、私です。ロータスです。人化の指輪を使いました」

 「えぇ?‥‥‥ロータスなの? 驚いた、女性だったのね」

 「ケルピーの姿では分からないのも無理はありません。これからはこの姿で姫様をお護り致します」

 「どうもありがとう。あの、少し騒がしいのは何故かしら?」

 「ベリル様方が起きられ、支度をなさっているからでしょう」


 そう話していると、廊下の奥からお父様、メルクリウスさん、ノトが歩いて来た。


 「起きたのかい?」

 「はい、今さっき」

 「‥‥‥可愛いデザインではあるけれど、若い娘が寝間着姿で廊下に出るのはどうかな?」

 「え?‥‥‥わぁーー着替えてきます」


 私は慌てて部屋に入ると姿見を覗いた。

 

 このドレスって寝間着だったの?

 確かに少し生地は薄いけど、可愛いドレスよ。

 ‥‥‥透け透けでなくて良かった。


 「どした?」

 「何でもないわクリムゾン。さぁ着替えましょ」


 私は空間収納から2人の服と自分の服を取り出した。

 動きやすい服に着替えて廊下へ出る。

 ティムとクリムゾンにロータスを紹介して、皆のところへ向かった。


 「ローズ、護衛が増えたな」

 「そうね、皆仲良くしてね」

 「勿論だ、宜しくな」

 「僕も宜しくねぇ」

 「こちらこそ宜しくお願いします」


 1番年上っぽいロータスが1番丁寧ね。

 皆仲良くやっていけそうで良かった。




 ウンディーネ様達が用意してくれたお弁当を空間収納に仕舞って、城の前の広場に向かった。

 森の奥へは魔法の箒で行く予定。

 ロータスは自分で飛ぶらしい。 

 ‥‥‥‥‥飛べるんだ。


 「行ってきまーす。お世話になりました」


 「皆さん、気をつけて」


 ウンディーネ様やニンフさん達、衛兵の皆さんに手を振り、魔の森の奥へ向けて出発した。


 東の空には満月が上り始めていた。



 

 

読んでくださり、ありがとうございます✨

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皆さんに良いことがありますように✨

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