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一番強い属性


 次に試した玉は黄色、地の属性だ。 

 手に取ると、強く光ったあと玉と同じ黄色の光が溢れだし、身体の周りをぐるぐると渦巻いてから消えていった。 


 「これは、まぁまぁと言ったところかな。どんどん試してみよう」


 続けて、赤い火の属性の玉、そして緑の風の属性の玉を手に取った。どちらも黄色の時と同じように、光は身体の周りを渦巻いたあと消えていった。


 「地・火・風はいずれも同じくらいの強さだね。黒と白はどうだろうか」


 お父様はそう言うと、黒い闇の属性の玉を差し出した。


 魔力を流すと黒い玉は強く光り、黒い霧のようなものが部屋いっぱいに広がってから消えていった。


 「ほぉ………闇の属性が強いね。水と変わらない強さだ。意外だな。………白はどうだい?」


 白い玉、光の属性の玉を手にして魔力を流した。すると、強く光ったあと、玉から白と金色の光が幾つも飛び出し部屋を埋め尽くした。光は互いにぶつかり合い、弾けてあちこちにぶつかっている。光が当たった壁やテーブルがガタガタと音を鳴らしている。


 「これは驚いた!光の属性が一番強いとはね。私とは異なるんだね」

 「旦那様、当たり前のことを言わないでください。親、兄弟、違って当然でしょう?」

 「ん?あぁ、そうだね。違って当然だ。ノトの言う通りだね。 私とローズの属性の強さが異なるのは当然だ。うん」



 お父様は何やら考え込んでいる。 一方、ノトは嬉しそうだ。キラキラとした瞳で私を見ている。


 「ローズ、これから回復薬やその他の薬作りを一緒に頑張ろうね!」

 「はい、いろいろ教えてくださいね、ノト」



 これから私のやるべき仕事が一つはっきりして、嬉しくそしてホッとした。



 すると突然、お父様は俯いていた顔を上げ、私に訪ねてきた。


 「ローズ、君は光の属性が強いから回復薬をたぶん幾らでも作れると思う。良い薬職人になれると思うよ。だけどね、違う選択も出来るよ」

 「違う選択?」

 「旦那様、薬職人はないでしょう?せめて、薬師とか薬剤師とか言ってください」

 「意味は通じるだろう?いいじゃないか」

 「あの、違う選択って何ですか?」

 「ふふふ、ローズ、聖女様になってみるかい?」

 「聖女様?」

 「そう、時々顕れる存在だよ。光の魔法で、人々の病や怪我を治し、穢れを浄化するんだ。何処でも誰からも大事にされるし、王族のような暮らしが出来るよ。どう?」


 「どうと言われましても……………ピンときませんし、興味は無いです」

 「そうか………まぁいい。では、闇の魔法を使い、一流の呪術師とかは? もしくは、アンデッドを使役して、アンデッドの女王になるとかどうだい?」

 「呪術師もアンデッドの女王も嫌です。気持ち悪いですよ。無理です」

 「そうかい? ゾンビは確かに気分の良いものではないけれど、スケルトンならそうでもないと思うけど」

 「ゾンビもスケルトンも絶対に嫌ですよ!」

 「そうですよ、旦那様。女の子に何を言っているんですか! ローズはここで回復薬を作るんですから、変なこと言わないでください!」 

 「ノト、あくまでも選択のひとつだよ。選ぶのはローズだからね。 強制は良くない」

 「それは、わかってますよ。強制するつもりはありません。僕の希望なだけです」


 「あの、私は薬や回復薬の作り方をお父様やノトから教わりたいです。もちろん、薬以外のことも。ですので、聖女や呪術師、アンデッドの女王は今のところはなしということでお願いします」

 

 「そうか、君が良いならそうしよう。ノトの手伝いをしながら、少しずつ覚えていけばいいよ。それでいいかな?ノト」

 「はい、よろこんで。薬作りだけではなく、薬草作りも一緒に頑張ろうね!」

 「はい!」



 ひとまず話は落ち着いてホッとした。揉めるのは困る。



 ノトは属性調べの玉が入っている箱を元の引き出しにしまった。


 「僕はそろそろ、晩御飯を作りに行きますね。旦那様、ローズの部屋の用意をお願いしてもいいですか?」

 「あぁ、いいよ。それと、晩御飯は軽くでいいよ。それほど空腹でもないから」

 「わかりました。ローズはどう?」

 「私も、軽くでお願いします。結構クッキーを食べたので」

 「じゃあ、軽く用意しましょう」


 そう言うと、ノトは台所に向かった。


 

 「ローズ、君の部屋を調えよう。二階に行くよ」


 私はお父様のあとに続いて階段を上がった。


 「二階には部屋は二つ、奥の部屋が私の部屋。手前の部屋が君の部屋だよ。扉に付いている魔石に魔力を登録するよ。椅子の時と同じにね。ただ、今回は私の魔力も同時に登録する。君に何かあった場合、誰も入れないと困るから。いいかな?」

 「はい、わかりました。かまいません」


 お父様と一緒に魔石に手をあて、魔力を流した。椅子の時と同じように、魔石は光ってから元に戻った。これで登録完了のようだ。 


 「部屋に入るよ」


 部屋に入ると、明るさに軽く目を細めてしまった。窓から午後の日射しがたっぷりと射し込んでいる。壁は木の壁だが、タペストリーが掛かっていて暖かそうに感じる。何やら模様もあり高価な気がする。ベッドカバーやカーテン、足元マット、クッションは一階の居間と似た雰囲気でまとめてある。窓際には小さな机、壁に鏡と洗面台もある。木の台の上に洗面器が置いてあるだけだけど。


 え?水道あるの?私が思っているより、技術は進んでいる世界なのかな。


 だが、洗面台には筒状のものがあるだけで、レバー等は付いていない。赤と青の石が大きな陶製の洗面器にはめ込まれているだけだ。しかも、排水する管も無い!……………顔を洗ったり手を洗ったり出来るのか疑問だ。



「これをじっと見てるけど、使ってみる?青い石を触れば水が、赤い石を触ればお湯が出るよ。もちろん魔力を流してね。もう一度触れれば止まるから」

 「あの、使った水やお湯は何処にいくんですか?」

 「気になるのはそこか。洗面器にある程度たまると無くなるよ。移動するように魔法をかけてあるから」

 「移動?何処に?」

 「庭にね。便利だろう?」

 「凄いですね」


 排水口の掃除がなくて楽でいいなこれ。主婦は喜ぶよきっと。


 しみじみと感心していると、少し低めの真面目な声音でお父様が声をかけてきた。


 「座ってもらえるかな。幾つか質問したいことがあるんだ」


 真剣な表情のお父様を前にして、私は少し不安な気持ちになってきた。





 


読んでくださり、ありがとうございます!感謝、感謝です。読んでくださった皆様に良い事がありますように。

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