ドラゴの思惑
見つけてくださり、ありがとうございます✨
国境警備隊の兵士達は、南北街道を目指して馬を走らせた。
「おい、何か来るぞ!」
「ゴブリンだ!」
「何体かいるぞ!」
「逃すなよ!一匹も!」
「「「 おぉ 」」」
南北街道から逃げてきたゴブリン達は焦っていた。
自分達は数も多く上位種もいたのに、たった2人の男に悉く殺されてしまったのだから。 とにかく逃げなければ! そう考えて逃げたのに、前から違う男達が何人もやって来る。しかも、強そうな奴らが。 ゴブリン達は散り散りに逃げるしかなかった。
戦意を失っているゴブリン達は、警備隊の兵士達に抗うこともなく、殲滅させられた。
「他にゴブリンは見あたらないか?」
「居ないようです」
「死体はそのままでいい、先に行くぞ」
彼らは馬を走らせた。
◇ ◇ ◇
‥‥‥気を失っているようだな。 女の子が2人‥‥どちらがローズだ?
確か、水色の髪と言っていたか‥‥こちらの方か。
‥‥‥何故、下着姿なのだ? ‥‥‥あぁ、赤髪の娘に服を着せたのか。
このままでは良くないな。 若い娘の下着姿を晒すわけにはいかぬ。
「ダンテ!私の外套を持ってきてくれ!」
黒い大きな馬は、外套を口に咥えると主のもとへ歩いてきた。
ドラゴは愛馬から外套を受け取ると、ローズを外套で包み、抱き上げた。‥‥所謂、お姫様抱っこというあれだ。
‥‥‥ふむ‥‥幼く見えたが、小柄なのか‥‥それなりに胸はあるのだな‥‥やはり人目に晒すわけにはいかないな。
‥‥‥しかし、先ほどから周りをチョロチョロしている精霊は何だ? この娘の知り合いなのか?
「精霊よ。何故この娘の周りを飛び交っているのだ?」
「え?あなた、私が見えるの?何故?」
「何故と言われても、見えるものは仕方ない。おそらく、私の中にエルフの血が流れているからだと思うがね」
「エルフの血?」
「あぁ、曾祖母がエルフだったそうだ」
「ふーん、確かに綺麗な見た目をしているわね」
「私の親族は見目好い者が多い。だが、精霊やら妖精やらを見ることが出来るのは、今のところ私だけのようだ」
「そう、先祖返りしたのかしらね」
「かもね。それで、この娘との関係は?」
「関係と言われても、知り合いというくらいよ。この子、ローズって言うんだけど、ローズの父親や同居人を知っているのよ。まぁ他にもいろいろね。あとは、言えないわ」
「そうか、知り合いなのか、なるほどね。‥‥何があったのか、聴いても?」
「それなら、構わないわ。 そこの赤い髪の娘がゴブリン達に追われていたのを、ローズが助けに行ったのよ。それだけ」
「そうか、助けにね‥‥随分と無茶をするんだね」
「えぇ本当に、びっくりしたわ。 ローズを助けてくれてありがとう」
「気にしないでくれ、大したことじゃないよ」
「そう言えるなんて凄いわね」
「そうかな」
ドラゴ達の方へもう片方の男ハインツが歩いてきた。
「ドラゴ、娘達はどうだ?」
「あぁ、2人とも気を失っているだけだよ。大きな怪我は無さそうだ。ハインツ、君の外套も借りていいかい?」
「そう言うと思って持ってきたよ」
「さすが、我が従兄弟。気が効くね」
ハインツは自分の外套でケイティを包むと、ドラゴと同じように抱き上げた。
「若い娘を地面に横たわったままにはしておけぬからな」
「その通り」
2人がそんな会話をしていると、東の方から、複数の馬の蹄の音が聴こえてきた。
「誰か来たようだな」
「あぁ、かなり人数いるな‥‥兵士か?」
「おそらくな」
馬に乗り、同じ鎧と装備の男達は一目で兵士だと判る。規律正しい動きは、しっかりと訓練されている証拠だ。
その中の幾分立派な姿の男、40代くらいの---おそらく、リーダーか---が馬から降りると声をかけてきた。
「君達、もしかして、2人でこのゴブリン達を倒したのか?」
「えぇそうです」
「そうか、大したものだな。協力感謝する。私は、国境警備隊の隊長をしているフォルクスだ。君達は、冒険者‥‥でいいのかな?」
「はい、そうです。私はドラゴ、彼はハインツです」
「こんな聞き方をしてすまないね。君達は冒険者にしては、見た目が良くて品があるもので‥‥‥気を悪くしないでくれると助かる」
「構いません、大丈夫ですよ」
「ところで、君達が抱き上げているのは、女の子か?」
「そうです」
「2人?」
「えぇ、2人とも女の子ですよ」
「2人か‥‥‥ケイティと誰だ?」
「ケイティ?その赤髪の娘の名前ですか?」
「髪色は知らないが、姉がゴブリンに襲われていると、弟が言っていた。弟の髪色も赤だったから、おそらくこの娘が姉のケイティだろう。もう一方の娘の事は聴いていないが‥‥‥」
「この水色の髪の娘はローズという名前だと思います。南北街道を南に行ったところで、ゴブリンと闘っていた青年が話していましたから」
「ゴブリンと闘って?その青年は大丈夫なのか?」
「私の仲間が1人助けに入っています。おそらく大丈夫でしょう」
「こんなあちこちでゴブリンなんて、どういうことだ‥‥‥」
「ゴブリン達は森から続々と出てきていましたよ。かなりの数でした。‥‥森の中も確認した方が‥‥討伐隊を出した方がいいでしょうね」
「そうか‥‥検討しよう」
◇ ◇ ◇
「あっあれを!人がたくさんいますよ」
「あそこだろうね」
「そうだな」
馬に乗ったクラウスと、空飛ぶ魔法の箒に乗ったノトとメルクリウスは、南北街道を東に入った辺りにいる集団に向かった。
兵士達は、街道の通行の邪魔にならないような場所にテントの設営をしたり、ゴブリン達の死体を集めたり、ゴブリンの血で汚れたところを浄化したり、忙しそうに動いていた。
「すみません、女の子がいませんでしたか?」
「女の子? あぁ、それなら向こう、隊長のいるとこだな」
ノト達は兵士が指した方へ目を向けた。
隊長らしき人物とその部下とおぼしき兵士、そして、クラウスと共にいた2人の男達がいた。男達は外套に包まれた何かを抱き抱えている。
「ドラゴ、ハインツ。無事だったか。ローズはどうだ?」
「クラウスも無事で何より。ローズも無事だよ。今、気を失っているけれども」
「え?気を失っている?大丈夫ですか?」
「たぶん、ホブゴブリンの生首を見て失神したんだと思う。それと、魔力の使いすぎかな」
「魔力の使いすぎ?」
「必死に結界を張っていたからね。強い結界のおかげで、女の子2人は無事だった」
「そうですか‥‥‥結界‥‥一生懸命練習していましたからね。良かった。‥‥‥えぇと、ドラゴさんとハインツさん、でいいんでしょうか、ローズを助けてくださり、ありがとうございました!!クラウスさん?もありがとうございました!!」
「いいんだよ、気にしないで」
「そうそう、俺達、強いから」
「えぇ気にしないでください」
3人は笑顔で言った。
「あぁー話し中すまないが、テントが出来たようなので、女の子達を移動してもらっていいだろうか?テントの中には衛生兵もいるから、怪我の手当ても出来る」
警備隊の隊長が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「わかりました。連れていきます」
ドラゴとハインツは、ローズとケイティをテントまで抱き抱えていった。
テントの中には、横になれるように敷物が敷いてあり、薬品等が準備されていた。男性の衛生兵が1人いた。
「娘さん達をこちらに寝かせてください」
ハインツはケイティをそっと寝かせた。
ドラゴはローズを抱き抱えたままだ。
「あの‥‥その娘さんも」
衛生兵はそう言うが、ドラゴは応じない。
「この子の姿を見せるわけにはいかないな。衛生兵と言えど、君も男だしね。」
「はい?えぇっと‥‥」
衛生兵は困り顔でハインツの方を見た。
「ドラゴ、どうしたんだ?ローズも診てもらわないと」
「ローズは膝を擦りむいたくらいだよ。ひどい怪我は無い。魔力が回復するのを待つだけだよ。回復するまで私が抱いているから気にしないでくれ」
そう言うと、ドラゴはローズを抱き抱えたまま、椅子に座った。
膝の上に座らせるように抱え直して、ハインツの方を見た。
「私はここにいるから、説明その他は頼んだよ」
「はぁ‥‥‥わかったよ。好きなだけローズを護ってくれ。 この男のことは、気にしないでください。」
ハインツは、衛生兵にそう言うとテントを出て行った。
「君、こちらを気にせず、その娘の治療をしてくれたまえ」
ドラゴは満足そうにローズを抱えて座っていた。
テントから出てきたハインツは、クラウスに声をかけ手招きした。
小声で話し出す。
「クラウス、ちょっと不味い事態になっている」
「どうした?」
「ドラゴがローズを気に入ったようだ。」
「は?」
「連れて帰ると言い出したらどうする?」
「まさか‥‥だって、あいつ、婚約者がいるだろう?」
「あぁそうだ。悋気が凄まじい姫様だ」
「連れて帰るのは無理だろう。ローズに何をするかわからないぞ」
「‥‥‥言い出さないと良いのだが‥‥‥」
「‥‥‥そうだな‥‥‥」
ハインツとクラウスは小さく溜め息をついた。
読んでくださり、ありがとうございます✨
また、おつきあいくださると嬉しいです。
皆様に良いことがありますように✨




