第16話 結末…
【あらすじ・ご案内】
第16話(完結)をお読みいただきありがとうございます!
「無の忍術」を纏い覚醒した七技と、感情を捨て去り全ての消滅を企む長男・道離。
一族の宿命を背負った二人の忍びが解き放つ圧倒的な「無」と「時空」の気が衝突し、世界は崩壊の極致へと向かいます。
仲間たちの想い、小夜の温もり、そして兄たちとの思い出を胸に、七技が放つ渾身の一撃。
しかし、死闘の果てに七技が目にしたのは、あまりにも残酷で静寂に満ちた「灰色の世界」でした――。
すべてを失った三男・七技の決意と、異空へと連れ去られる次兄・直影。
ついに完結! ぜひ最後まで見届けてください!
「無の忍術」を纏った七技と、感情を捨て去った道離――二人の忍びが放つ圧倒的な「無の気」が混じり合い、半壊した医療施設の空間そのものがミシミシと歪み始める。
「道離兄さんッ……!!」
七技は機械グローブにすべての「無の力」を凝縮させ、爆風で大地を削りながら肉薄した。
「あぁ、俺の声も届いてないのかよ……!」
仲間たちの想いと一族の術を乗せた渾身の拳が、空間を切り裂く。
「消す…消去…」
対する道離もまた、時空間の理を超越した漆黒の波動を両手に纏わせ、正面から真っ直ぐに迎え打つ。
ドゴオオオオオオオッ……!!
激突。天地を揺るがす膨大な衝撃波が吹き荒れる。
互いに一歩も譲らぬ力と力。激しい閃光と闇が渦引き、ぶつかり合うたびに世界から「色彩」が削ぎ落とされていく。
(絶対に……折れない! みんなが繋いでくれたこの光を……俺は消させないッ!!)
重く冷たい衝撃が全身を打ち叩くたび、七技の脳裏に――溢れ出すように数々の記憶が蘇ってきた。
あたたかな陽光の中で、厳しくも優しく忍術を教えてくれた直影兄さんの笑顔。
かつて家族として肩を並べ、誰よりも頼もしかった道離兄さんの背中。
旅の中で出会い、不器用に笑い合い、傷つきながらも「ありがとう」と言ってくれた人々。
そして――何よりも、いつも自分の隣で温かく微笑んでくれていた、小夜の姿。
『七技、あなたは一人じゃないよ』
耳奥で聞こえた気がした。
あの優しく、どこか哀しげで、けれど誰よりも力強かった小夜の言葉。
散っていった仲間たちの面影。セツナが命を賭して繋いでくれた絆。
それらはただの過去の幻影ではない。今、この腕の機械グローブを通じて、そして七技の魂そのものと溶け合い、力となって溢れ出していた。
(俺は……一人で戦ってるんじゃない。みんなが……小夜が、思いが、ここにいる……!)
涙の乾いた瞳に、揺るぎない覚悟の炎が宿る。
「このまま、道離を…止める……成仏させる……!!」
グローブから溢れ出る仲間たちの温かな祈りが、七技の全身を駆け巡る。
(もう、兄さんの魂はない…!だからこそ、道離を……!!)
過去の思い出すべてが、前に進む強烈なエネルギーへと変換され、限界を超えて溢れ出す「無の力」が、腕輪のアシストによって一つの巨大な光へと集約されていく。
「これで……最後だああぁぁぁぁッ!!」
小夜の手の温もりを、兄たちと過ごしたかけがえのない日々を、その拳に乗せて――七技の叫びとともに、渾身の一撃が道離の胸元へと叩き込まれた!
バリリリリリッ……!!
咆哮を上げるような衝撃の果て、空間全体がガラスのように割れ散った。
「うわぁっ!あがっ………!」
視界のすべてが眩い閃光に呑まれ、やがて――世界は静かな「灰色」へと包まれていった。
*
「……っ……ふぅ……」
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
七技は、冷たい触感とともにゆっくりと目を覚ました。
「勝った……のか……?」
身体中の激痛に耐えながら体を起こし、力なく呟く。手元には、仲間たちから託されたあの機械グローブが静かに鎮座していた。一瞬だけ胸を掠めたのは、死闘を制した勝利の安堵。
だが――周囲を見渡した瞬間、その感情は冷え切り、絶望へと塗り替えられた。
「な……んだ……これ……」
そこには、何もなかった。
「そ、そんな……」
崩れかけていた医療施設も、さっきまで広がっていた屋敷も、街並みも、空も、土も――すべてが色彩を奪われ、干からびた「灰色」の荒野と化していた。
直影が眠っていたはずの医療カプセルも、跡形もなく消え去っている。
「直影……兄さん……? 小夜……? みんな……!?」
声を限りに叫ぶが、返ってくるのは不気味なほどの静寂だけ。
「あぁ……みんな……消えた……」
自分の放った「無の力」と道離の力が激突した結果、世界そのものが消去されてしまったのだ。
「俺は……守れなかった……」
全員を守ると誓ったのに、守るべき世界そのものが、兄もろとも無に還ってしまった。
「うあ……あぁぁぁぁッ……!!」
膝を折り、灰色の地面を血の滲む拳で叩く。
「なんでだっ!!どうしてっ!!俺は…勝った……いや、これは勝利か……わからない……くそっ……!!」
膝から崩れ落ちる七技を、冷たい風だけが吹き抜けていく。
(……待てよ)
慟哭の渦中で、七技の研ぎ澄まされた感覚が、僅かに残る「空間の歪み」を捉えた。
「そうだ…道離は…!?」
道離の姿が、どこにも存在しない。消滅した破片すら残っていない。そして、目の前の空間には、かすかに次元の裂け目が閉じた残香が漂っていた。
「まさか……道離は、異世界へ吹き飛ばされた……!?」
死んだのか、それとも生きているのか。確かめる術はない。
「もし、そうだとして…生きていたら…?」
だが、もし生きているとしたら――感情を捨て、全ての異世界を消去しようとしたあの狂気が、別の世界で再び解き放たれることになる。
「俺たちの世界みたいに……他の世界まで消す……!」
七技は涙を拭い、ガタガタと震える足でゆっくりと立ち上がった。
「ダメだ……こんな結末は、こんな思いを……他の場所で、他の人に……与えたくない!!」
腕の機械ブレスレットを愛おしそうになでる。この中には、仲間たちの想いと、これから紡ぐ『旅日記』が入っている。
「道離……俺は追う。あんたを見つける……お前を完全に止めるまで……俺の戦いは終わらない!」
直影も、世界も失ってしまったという深い傷を胸に抱いたまま、七技はかすかに残る空間の歪みへと手を伸ばした。左腕に刻まれた『異世界移動の魔法の刻印』が眩く輝き、次元の扉が開く。
「左腕の力で……本当に行けるんだな……」
自分に宿った新たな力を確かめながら、七技は覚悟を決め、絶望の果てにある「異世界」への旅路へと力強く一歩を踏み出した。
*
七技が異次元の彼方へと消え去り、再び静寂が訪れた灰色の世界。
「シュー……はぁー……」
誰もいなくなったはずのその荒野の片隅に、奇跡的に「無の力」の消去を免れた物体が、ポツンと残されていた。
「ピッ…ピッ…ピッ…」
半壊した青いガラス。静かに液体の循環音を立て続ける――大型の医療カプセル。
「こふぅ……しゅこぉ……」
そのガラスの表面には、七技が刻みつけた血の指紋と、深々と削られた『直影』『ZIKAGE』の傷痕がはっきりと残されていた。
カプセルの中で眠り続ける男の胸が、かすかに上下する。
ザー……ッ
不意に、灰色の空を切り裂いて、重厚な飛行艇の駆動音が響き渡った。
「おいっ!! あそこに何かあるぞっ!!」
空間の歪みから現れたのは、異世界の精鋭部隊――「ノーネーム」と呼ばれる兵士たちだった。
「これは、なんだ…おい、誰か中に入っているぞ……人だっ!!」
「……反応を確認。生体シグナルを検知した! 生きているぞ!」
「この世界に生存者が……? カプセルごと回収する。急げ!」
黒い装甲に身を包んだ兵士たちが手際よく降り立ち、医療カプセルをワイヤーで固定していく。
「よし、固定完了っ!!」
カプセルの向こう側。
青い液体の中で、男――直影は、ゆっくりと、しかし光の宿らない瞳を薄く開いた。
ガラスに刻まれた『ZIKAGE』の文字が、彼の瞳に映る。
「はぁ……はぁ……」
だが、その心には何も浮かんでこない。自分の名前も、家族の顔も、愛した世界の面影さえも――すべては深い暗闇の底へと押し流されていた。
「バイタル安定。これより本隊へ移送する!」
カプセルはゆっくりと引き上げられ、異世界の戦艦へと収容されていく。
すべてを失い、復讐と追撃のために異世界へ飛び立った三男・七技。
医療カプセルに入ったまま、謎の兵士「ノーネーム」の手によって異空へと連れ去られた次兄・直影。
「閉じるぞっ!!」
崩壊した世界の残骸を残し、二人の運命の歯車は、それぞれの交差する「次の世界」へ向けて、静かに動き始めたのだった――。
【あとがき】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
「無の忍術」による世界の消滅、仲間たちの遺志を継いで未知の異世界へと旅立つ七技、そして記憶を失ったまま謎の部隊「ノーネーム」に回収された直影。
残された希望と深まる謎を抱え、物語の舞台は次なる『異世界』へ――!
ここまでの激闘と切ないドラマを見届けてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。
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