第1話 月夜を駆ける三つの影
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本作は、現代に生きる忍びの三兄弟が、やがて世界を揺るがす壮大な運命と『異世界』の謎に巻き込まれていくダークファンタジー/バトルアクションです。
絆、裏切り、そして託された未来――。
主人公・七技の壮絶な戦いを、ぜひ最後まで見届けていただけると嬉しいです。
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ご提示いただいた第1話「月夜を駆ける三つの影」を、スマホで読みやすい「なろう向け(一人称・七技視点)」にアレンジしました。
一人称にすることで七技の心理や忍術を使う感触がリアルに伝わり、改行を多く挟むことでスラスラ読めるテンポに整えています。
第1話 月夜を駆ける三つの影
月明かりすら届かない深夜。
都心にそびえ立つ十五階建てのオフィスビル「遠山商事」。
表向きはごく普通の貿易会社だが、その実態は周辺国の暗闘に関わる闇組織の隠れ家だ。
「——よし、全員配置についたな。これより極秘資料の奪取任務を開始する」
耳元に仕込まれた小さな通信機から、穏やかだが芯のある声が響く。
長男・道離兄さんの声だ。
「了解、兄さん。俺は正面から失礼させてもらうよ」
そう答えたのは、次男の直影兄さん。
仕建ての良いスーツに身を包み、残業帰りのエリート会社員になりすまして堂々と正面玄関をくぐっていく。変装術と度胸においては、兄さんの右に出る者はいない。
「七技、裏からの潜入状況は?」
「問題ないよ、兄さん。警備の巡回ルートは把握済みだ」
ビルの三階。外壁のわずかな窪みに身を潜めていた俺——三男の七技は、闇に溶け込むような声で返した。
するりと音もなく廊下の窓から侵入し、通路の隅に置かれた観葉植物の鉢植えへと静かに歩み寄る。
「——咲け」
指先で印を結び、そっと湿った土に触れる。
俺が扱う「七つの忍法」の一つ——植物を操る術だ。
術力を流し込むと、カサカサと音を立てて緑の葉が急速に伸び、膨らんだ蕾から一瞬で幻想的な紫色の花がひらいた。
「ん……? なんだ、この甘い香りは……」
曲がり角から歩いてきた警備員が、ふと足を止める。
「なんか……あぁ、気分が……」
花から舞い散った極微量の花粉を吸い込んだ瞬間、警備員の瞳からすっと光が消えた。
俺の使う催眠の花粉だ。
「失礼しますよ」
「あ、はい……」
崩れそうになる警備員の背後に回り、そっと身体を支えながら問いかける。
「管理室のスペアキーと、今夜のセキュリティコードを教えていただけますか?」
「……コードは……八・三・二・一……キーは……右のポケットに……」
虚ろな声で答える警備員から首尾よく情報を聞き出すと、俺は指をパチンと鳴らして花粉の効力を調整し、彼を深い眠りへと落とした。
「兄さん、直影兄貴。コードは『8321』。地下資料室の鍵も確保したよ」
「助かった、七技。流石だな」
「なんだ? 今回は兄貴って呼ぶのか?」
無線越しに直影兄さんがからかうように言った。
「前に気に入ったみたいなこと言っただろう? じかげ兄さん」
「そういうところは、しっかり覚えてるんだよな」
「その話は帰ってから続けてくれ。俺は資料室に行く」
「了解。僕は4階に行くよ」
「じゃ、自分は待機する」
二階の警備員控室では、道離兄さんがすでに本物と寸分違わぬ警備員の制服へと着替え終えているはずだ。
四階の役員フロアでは、直影兄さんが手際よく裏取引のデータを忍具へ吸い上げている。
「バッチリだ、兄さん。データはいただいた。……っと、そろそろ巡回が来るな。退散するよ」
直影兄さんの不敵な笑い声とともに、窓を開ける風の音が聞こえた。
「七技、今どこだ?」
「いつでも脱出できるように裏口の近くにいるよ」
「よし、もう少しで終わる」
地下資料室で最高機密文書を手に入れた道離兄さんから、合図が入る。
「全員、目的のブツは確保したな。撤収だ。……今夜の夕食の残りは、七技の好物の煮物だったな。早く帰ろう」
「ふふ、兄さん、それを楽しみに頑張りました」
「おいおい、俺の分の肉は残ってるんだろうな!?」
無線の向こうで笑い合う声を聞きながら、俺はビルを脱出した。
夜の静寂の中、月明かりに照らされた三つの影が駆け抜けていく。
闇の中で別々に動いていた俺たちは、明日も変わらず続くはずの、あたたかな我が家へと帰っていくのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
平和で温かい三兄弟の日常からスタートしたこの物語ですが、ここから彼らの運命は大きく動き出します。
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