第十七章 チョウチョウとの契り
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## 第十七章 チョウチョウとの契り
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王子との初夜から、十日が経った。
肩の傷は、もうほとんど治っていた。
セイネが最後の確認をして、包帯が取れた。
薄い傷跡が残っていた。
璃生はそれを見て、しばらく触れた。
痛くなかった。
ただ、そこにある。
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包帯が取れた日の夕方。
チョウチョウが、部屋に来た。
ヤコがお茶を用意して、出ていった。
二人になった。
チョウチョウは椅子に座って、璃生を見た。
「肩は治ったか」
「はい。今日、包帯が取れました」
「そうか」
「傷跡は少し残っています」
「……見ていいか」
璃生は少し考えて、袖をずらした。
肩のあたりに、薄い傷跡があった。
チョウチョウはそれを見た。
何も言わなかった。
でも、顔が、少し固くなった。
「大丈夫です」
「……分かってる」
「王子様は、毎日修練を続けています」
「知ってる。バクシンから聞いた」
「そうですか」
チョウチョウは視線を外した。
窓の外を見た。
「……王子のことが、好きか」
璃生は少し考えた。
「好きです」
「怖くないか」
「怖い部分は、あります。でも好きです」
「両方あるのか」
「両方あります」
チョウチョウは窓の外を見たまま言った。
「……おれも、ニジトセ様のことが好きだ」
璃生は聞いた。
「……最初は、情報として見ていた。でも、今は違う。本当に、好きだ」
「はい」
「……それは、分かるか」
「分かります」
「分かるのか」
「チョウチョウさんが、本当のことを言っているのは分かります」
チョウチョウが璃生を向いた。
琥珀色の目が、まっすぐだった。
「……縁を結びたい」
静かだった。
璃生は、チョウチョウを見た。
「俺とも、縁を結んでほしい」
「はい」
「……即答するな」
「考えなくても分かります」
「なんで」
「チョウチョウさんだから、大丈夫だと思えます」
チョウチョウは少し目を細めた。
「……王子の件があったばかりだ。怖くないか、本当に」
「怖い部分は、あります」
「それでも」
「それでも、します」
チョウチョウは少し間を置いた。
「……なんで、そんなに真っ直ぐ言えるんだ」
「チョウチョウさんが、最初から本当のことを言ってくれるから」
「最初から、ではないぞ」
「途中から、本当のことを言ってくれるから」
「……それも、怪しい」
「でも今は言ってくれています」
「……今は言っている」
「だから、信頼しています」
チョウチョウは、璃生を見た。
しばらく見た。
「……本当に、変な奴だ」
「よく言われます」
「誰に」
「チョウチョウさんに」
「そうだな、おれが一番よく言う」
「はい」
チョウチョウが、少し笑った。
それから、真剣な顔になった。
「……いつがいいか」
「チョウチョウさんが決めてください」
「おれが」
「はい」
「……今夜でもいいか」
「はい」
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夜になった。
ヤコが、部屋を整えてくれた。
何も言わなかったが、準備をしてくれた。
出ていくとき、璃生に頭を下げた。
「……よろしくお願いします」
小さな声だった。
璃生は頷いた。
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チョウチョウが来た。
侍従の服から着替えていた。
普通の、少し柔らかい服を着ていた。
璃生の部屋に入って、扉を閉めた。
璃生を見た。
緊張している顔だった。
「……緊張しているんですね」
「うるさい」
「わたしも緊張しています」
「そうか」
「同じですね」
「……おれのほうが緊張してる」
「なぜですか」
「……ニジトセ様が怖くないかどうか、心配だからだ」
璃生は少し考えた。
「わたしの心配をしているんですか」
「当たり前だろう」
「ありがとうございます」
「礼を言うな」
「言います」
チョウチョウが、璃生の前に来た。
距離が縮まった。
璃生の心臓が、速くなった。
怖い、という感覚が、少し来た。
でも。
チョウチョウの顔を見た。
まっすぐな目だった。
心配している目だった。
怖い、という感覚より、この人は大丈夫だという感覚のほうが、少し大きかった。
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「一個だけ、確認してもいいか」
チョウチョウが言った。
「はい」
「怖くなったら、言ってくれ。止める」
「分かりました」
「本当に止める。言ってくれ」
「はい」
「……あと」
「はい」
「急がない。ゆっくりやる」
「はい」
「……大丈夫か」
「大丈夫です」
チョウチョウが、璃生の頭に手を乗せた。
頭を撫でた。
子どもをあやすように。
「……へんな感じだな」
「何がですか」
「こんなに丁寧にしようとしているのが、自分でも変な感じだ」
「いつもと違いますか」
「……全然違う」
「どう違うんですか」
「……大事にしたいから、丁寧にしたい。そう思ったことが、あまりなかったから」
璃生は、チョウチョウを見た。
「チョウチョウさん」
「なんだ」
「わたしのことを、大事にしてくれているんですね」
「……うるさい」
「本当のことを言いました」
「……言うな、恥ずかしい」
チョウチョウが少し顔を赤くした。
璃生は口元が動くのをこらえた。
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チョウチョウが、雑談を始めた。
「今日の図書館、コールが珍しく入口のほうまで来ていた」
「見ていたんですか」
「棚の配置を確認しに来たとか言ってたが、明らかにおれが何を読んでいるか見に来ていた」
「コールさん、気にしているんですね」
「全然気にしていないという顔で気にしていた」
「コールさんらしいです」
「……あいつ、少し面白い」
「そうですね」
「最初は怖い人間だと思っていたが、慣れたら普通だ」
「コールさんも、チョウチョウさんのことを、悪くないと思っていると思います」
「どうして分かる」
「日記に書いていました」
「……おれの話が出てくるのか、コールの日記に」
「少し」
「……なんと書いてあった」
「気にしていないと書いてありました」
「それは気にしているということだろう」
「そうだと思います」
チョウチョウが、少し笑った。
璃生も笑った。
笑いながら、気づいた。
体の力が、少し抜けていた。
雑談をしている間に、緊張が和らいでいた。
チョウチョウが意図してやっていたのか、自然にそうなったのか、分からなかった。
でも、気づいたら、体が少し楽になっていた。
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チョウチョウが、また璃生を見た。
目が、今度は少し違った。
まっすぐだったが、柔らかかった。
「……いいか」
「はい」
「怖くなったら言え」
「言います」
「本当に」
「本当に」
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チョウチョウは、ゆっくりだった。
ひどくゆっくりだった。
どこかに触れるとき、必ず確認した。
「大丈夫か」
「大丈夫です」
「ここは」
「大丈夫です」
璃生の答えを、毎回確認した。
答えが来てから、動いた。
答えが来るまで、待った。
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璃生は、ちゃんとそこにいようとした。
感覚を遠ざけないで、ちゃんとそこにいようとした。
怖い、という感覚が来た。
来たとき、チョウチョウが止まった。
「怖いか」
「……少し」
「やめるか」
「……やめないです。少し待って」
「待つ」
チョウチョウが待った。
璃生は深呼吸した。
チョウチョウの顔を見た。
まっすぐな目だった。
心配している目だった。
待っていてくれる目だった。
「……大丈夫です」
「本当か」
「本当です」
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ゆっくりと、時間が流れた。
チョウチョウは急がなかった。
璃生が答えるたびに、少しずつ進んだ。
璃生は、感覚が遠ざからないように、意識していた。
怖い、という感覚があった。
でも、温かい、という感覚もあった。
チョウチョウの手が温かかった。
あの握手のときと同じ温かさだった。
温かい人だ、と思った。
怖いより、温かいのほうが、少しずつ大きくなっていった。
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夜が深まった。
璃生は、ちゃんとそこにいた。
感覚を遠ざけなかった。
全部、感じた。
怖いも、温かいも、両方感じた。
どちらも本物だった。
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終わったあと、チョウチョウが璃生の隣に横になった。
天井を見ていた。
璃生も天井を見ていた。
静かだった。
「……大丈夫か」
「大丈夫です」
「怖かったか」
「少し、ありました」
「……すまない」
「謝らなくていいです」
「でも、怖かったんだろう」
「少しありましたけど、温かいのほうが大きかったです」
チョウチョウは少し間を置いた。
「温かい」
「チョウチョウさんの手が、温かかったです」
「……手が温かいのは、体質だ」
「知っています。握手したときから分かっていました」
「……あのとき、怖くなかったか」
「あのときも、少し怖かったです。でも温かかったです」
「両方あったのか、あのときから」
「はい」
チョウチョウは天井を見たまま言った。
「……おれは、昔から、人を情報として見てきた」
「はい」
「大事にする、という感覚が、よく分からなかった。ヤコのことは大事だと思っていたが、それは妹だから当然で、そういう感覚だと思っていた」
「はい」
「でも、今夜」
止まった。
「今夜、ニジトセ様を大事にしたいと思った。それが、ヤコのときと同じ感覚だった」
「そうですか」
「……家族みたいな、という意味じゃない」
「分かっています」
「大事にしたい、という感覚が、こういう形でも来るんだと思った」
「はい」
「……それが分かって、少し驚いている」
璃生は少し口元が動いた。
「チョウチョウさんは、自分の感情に驚いているんですね」
「……うるさい」
「正直ですね」
「うるさいと言っている」
「ありがとうございます」
「礼を言うな」
「言います」
チョウチョウが、深く息を吐いた。
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しばらくして、チョウチョウが言った。
「……好きだ」
天井を見たまま言った。
「はい」
「ニジトセ様のことが、好きだ」
「はい」
「……答えなくていい。ただ言いたかっただけだ」
璃生は少し間を置いた。
「わたしも」
「……言わなくていい」
「言います」
「なんで」
「言いたいから」
チョウチョウが、璃生を向いた。
琥珀色の目が、璃生を見た。
「……言え」
「チョウチョウさんのことが、好きです」
チョウチョウは少し固まった。
「……なんで、そんなに真っ直ぐ言えるんだ」
「本当のことを言っているので」
「……おれより真っ直ぐだ」
「チョウチョウさんも真っ直ぐですよ。さっき、好きだと言いました」
「……天井に向かって言った」
「聞こえていました」
「……知ってる」
チョウチョウが、また天井を向いた。
耳が赤かった。
璃生はそれを横目で見た。
かわいいな、と思った。
素直にそう思えた。
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翌朝。
目が覚めたとき、チョウチョウがまだいた。
横で眠っていた。
璃生は起き上がらないで、しばらくチョウチョウを見た。
眠っている顔は、起きているときよりずっと子どもみたいだった。
くせっ毛が、枕の上で広がっていた。
璃生は少し笑った。
声は出さなかった。
でも、笑えた。
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しばらくして、チョウチョウが目を開けた。
璃生を見た。
「……起きていたのか」
「はい」
「……何を見ていた」
「チョウチョウさんの寝顔」
「……見るな」
「かわいかったです」
「……絶対に言うな」
「本当のことを言いました」
「……本当のことでも言うな」
チョウチョウが起き上がった。
髪が、ひどく乱れていた。
「……くせっ毛が、寝るとひどくなります」
「……今すぐ出ていかせてくれ」
「どうぞ」
「なんで笑ってるんだ」
「笑っていないです」
「笑っている」
「気のせいです」
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チョウチョウが立ち上がった。
服を整えた。
扉に向かった。
扉の前で止まった。
「……ニジトセ様」
「はい」
「愛している」
振り向かないで言った。
璃生は少し驚いた。
でも、すぐに言葉が来た。
「わたしも」
「……聞こえなかった」
「聞こえていましたよね」
「……聞こえなかった」
「チョウチョウさんのことを、愛しています」
チョウチョウは扉を開けた。
出ていく前に、一瞬だけ振り向いた。
耳が真っ赤だった。
「……よろしく」
「よろしくお願いします」
扉が閉まった。
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璃生は、閉まった扉をしばらく見た。
それから、自分の胸の文様に触れた。
服の合わせをそっと開いた。
金木犀の輪郭が、そこにあった。
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白くなかった。
白ではなかった。
黄金色だった。
鮮やかな、黄金色だった。
琥珀色が混じった、深みのある黄金色。
白い輪郭だったものが、鮮やかに色づいていた。
金木犀が、完成していた。
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璃生はしばらく、それを見た。
金木犀の文様が、胸の上で輝いていた。
朱色の彼岸花のそばに、鮮やかな黄金色の金木犀。
生きているみたいに、温かく輝いていた。
璃生は服を戻した。
窓の外を見た。
朝の光が入ってきていた。
今日も空が青かった。
きれいだ、と思った。
素直に、きれいだと思えた。
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昼前に、チョウチョウが侍従として廊下に現れた。
いつもの服を着ていた。
くせっ毛が、きちんと整えられていた。
璃生を見て、少し顔が赤くなった。
「図書館へ行くか」
「はい」
「……先に行け」
「一緒に行きましょう」
「……一緒は、今日は少し」
「どうしてですか」
「……顔を見ると、さっきのことを思い出すから」
「そうですか」
「……うるさいな」
「何も言っていないです」
「顔が言っている」
「何を言っていましたか」
「かわいいとか何とか」
「言っていないです」
「顔が言ってた」
璃生は口を閉じた。
チョウチョウが先に歩き始めた。
璃生はその後ろを歩いた。
チョウチョウの背中が、今日は少し、柔らかかった。
硬い決意の背中ではなく、少し肩の力が抜けた背中だった。
良かったな、と璃生は思った。
素直に、そう思えた。
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図書館に着いた。
コールが、いつもより少し入口に近い場所にいた。
璃生が入ってきたのを見て、また奥へ向かおうとした。
チョウチョウが入ってきたのを見て、止まった。
「……おはよう」
「おはようございます」
チョウチョウも「おはようございます」と言った。
コールがチョウチョウを見た。
チョウチョウがコールを見た。
「……昨日は来なかった」
「用事がありました」
「……そうか」
「今日は読みます」
「……第五巻まで読んだか」
「読みました。難しかったです」
「……どこが分からなかった」
「エルメキアの章が全部」
「……来い」
コールが、チョウチョウを奥の本棚へ案内した。
璃生はそれを見た。
コールが自分から、チョウチョウを案内していた。
璃生は椅子に座って、本を開いた。
本棚の奥から、低い声が二つ、説明と質問を繰り返している音がした。
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お茶の時間になった。
コールがお茶を用意した。
カップが、三つあった。
今日は三つ。
璃生のカップと、コールのカップと。
もう一つ。
コールが、チョウチョウのほうへカップを持っていった。
「……飲むか」
チョウチョウは少し驚いた顔をした。
「……いただきます」
「礼は要らない」
「でも言います」
「……勝手にしろ」
コールが自分の場所へ戻った。
チョウチョウが入口のほうへ戻って、カップを持ちながら本を読んだ。
三人で、静かに、それぞれの時間を過ごした。
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夕方、図書館を出るとき、チョウチョウが璃生に小声で言った。
「コール、カップを三つ用意していたな」
「そうですね」
「……あいつ、おれのことを考えていたのか」
「合理的な判断だと思います」
チョウチョウが少し笑った。
「……そうか」
「はい」
「……悪くないな」
「何がですか」
「ここに毎日来るのが」
璃生は少し間を置いた。
「そうですね」
「最初は分からなかったが、毎日来ていたら分かってきた。おまえがなんで毎日来るのか」
「どうして来るのか、分かりましたか」
「……ここに、大事なものがあるからだろう」
「はい」
「……おれも、そう思えてきた」
璃生はチョウチョウを見た。
琥珀色の目が、図書館の扉を見ていた。
柔らかい目だった。
「チョウチョウさん」
「なんだ」
「来てくれてありがとうございます。毎日」
「礼を言うな」
「言います」
「……本当に勝手だな」
「そうですね」
チョウチョウが歩き始めた。
「行くぞ、夕食の時間だ」
「はい」
廊下を並んで歩いた。
夕方の光が、窓から差し込んでいた。
橙色の光だった。
チョウチョウの黄金色の巻き毛が、その光の中で輝いていた。
璃生は横目でそれを見た。
きれいだな、と思った。
金木犀の色だな、と思った。
素直に、そう思えた。
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その夜。
璃生は日記を書いた。
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今日、金木犀の文様が色づきました。
チョウチョウさんの色です。
鮮やかな黄金色でした。
見たとき、きれいだと思いました。
怖かったことも、ありました。
でも、温かかったことのほうが、大きかったです。
チョウチョウさんが、大事にしてくれました。
わたしも、大事にしたいと思いました。
三つの花のうち、一つが色づきました。
あと二つ。
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書いて、ノートを閉じた。
コールへの日記も、今日は少し書いた。
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コール様へ
今日、図書館で三人分のカップがありました。
ありがとうございます。
ニジトセ
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短く書いた。
それで十分だと思った。
明日届くコールの日記が、楽しみだった。
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翌朝、届いたコールの日記には、こう書いてあった。
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三人いるなら、三つあるほうが合理的だ。
それだけだ。
今日、ファーブ族がエルメキアの章を全部分からなかったと言った。
説明した。
思ったより、聞き方が素直だった。
教えやすかった。
別に、悪くなかった。
コール
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璃生は日記を読んで、また笑った。
今日も一人で、声に出さずに笑った。
コールさんは、悪くなかったと言いながら、教えるのが楽しかったのだろう。
それが分かることが、嬉しかった。
璃生は日記を閉じて、支度を始めた。
今日も、図書館へ行こう。
今日も、王子のもとへ行こう。
そう思いながら。
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*(第十八章へ続く)*




