25 なんでなの
美味しい美味しいと楽しそうにご飯を食べていて、僕も用意しておいてよかったとか。嬉しいなとか、楽しいなとか。
思っていて、思っていたら、ねえさんは急に黙った。ピタリと何も話さなくなった。
起きたばかりの時もあった。おそらくこれは姉さんの癖なのだろうなと思う。思いはするけど心配になる。だってまだそんなに知らないから。ねえさんがどんな人かなんてちゃんと分かっていないから。
温めが足りなかったかな?とか苦手ものでもあったのかな?とか、急に僕のことが嫌なったのかもしれない、とか。
そんなわけない、ただ考え込んでいるだけだって、分かっていても、ネガティブな事ばかり頭の中でぐるぐるまわる。
意を決して姉さんのことを見つめてみる。
視線は合わない。
……あの時と同じように。
ねえさんはあいつじゃないって分かっている。
分かっているのに。
見るのが…怖くて。だって今の僕は僕だから
言われて嫌なことを言われたらそのまま受け取らなくてはいけないから。
それでも見続けた。自分でも何故か分からなかった。ただ、目が離せなかった。
急に思いっきりこっちを向かれた。
ついに来たと思った。怖くて少し涙が出そうだった。
ねえさんは口を開いた。
言葉を発した。
「一番好きなごはんってな〜に?」
は?
意味がわからなかった。脳の処理が追いつかなかった
なんて?なっ、一番好きなごはん?
「僕が?」
「もっちろん。他に誰がいるの?」
それさっき僕が言ったやつ。少し得意げで自信に満ちた顔。自分の肩の力が抜けるのを感じた。
急に考え込んだと思ったら、僕の好きなご飯ってなんなのほんとよく分からないこの人。
どういうこと?
「きょ興味があるなぁ〜、私、すっごく」
顔を見つめてみる。嘘では、ないようだった。
「ハンバーグ」
口から勝手に出ていた。もう少し考えたかった。
子供っぽいとか思われないだろうか。
「ハンバーグね!いいよね!美味しいよね!」
姉さんは、
いつもハイテンションだなぁと思う。
でも、僕がハンバーグって答えただけでハイテンションになっている所を見るのは、まぁ、うん。
べつに……悪い気はしなかった。
「じゃあ、好きな色は?」
「え」
「アクトの、好きな色は?」
……脳が固まった。だってなぜ自分が嫌だと思っているのかは分からなかった。
考えた。僕はいつだって考えている。
…… 自分が嫌な思いをしないために。
そして気づいた。ねえさんは僕のこと、何もしれないと言うことに。
そして気づいた。僕たちは全然お互いのことを知らない。二人で話すことも全然してない。
……なるほど。理解した。
「義姉さんは僕の好きなことを知って、そこから、好きにさせるつもりなんでしょ?」
「あぁ、え?いやいや、アクトと仲良くなりたいなぁと思って。」
……なるほど。理解した。
「僕への質問は一日につき一つまで、分かった?」
それ以上その場に居られなかった。席を立ってとっとこ歩く。あぁ、僕は僕は僕は、
「わ、わかった!」
遠くから義姉さんの声がする。隣で聞いていたい声だった。くるりと戻って懇切丁寧に何もかも自分の気持ちをさらけ出したくなる。でも出来ない。それが出来ないから僕は…。
自分の部屋に着く。ドアが閉まる音が聞こえる。自分でも意識しないまま息を止めていたらしい、荒い呼吸を整える。
「はぁ……すぅ……はぁ」
肖像画や本の中でしか出てこないこの世界の神様とやらに会って、自分でも意識しないままに浮かれていたのではないか。まるで小説の中の世界の話みたいで、自分が主人公になって、世界を救えるようで。
あぁそれと。家に一人じゃないせいだ。
寂しさか消し飛んでた。だから浮かれすぎてたんだ。
義姉さんが僕と親しくするのは、
世界のみんなを救うため。
人類を救うためだから。
別に僕に魅力があるわけじゃない。僕が必要なわけじゃない。
だってそう。まだねえさんは僕のこと知らない。僕のことを全然知らないのに必要だとか好感を持ってくれているたとか……そんなわけないのに。
そう。義姉さんだってきっと。
僕は、××××××××のだから。期待するな。信じるな。浮かれるな。
何が義姉さんだ。本当はもうこんなにも感情が動くくらい、ただの姉では無いのに。
ねえさんだなんて思えてないのに。
だってぼくを見つけて、肯定してくれたから。
もう結構、だいすきなのに。あぁもう!!
なんでいっつもこうなのかなぁ。
ぼくのおおばかっ。




