目が覚めて
うーん、ここはどこだ。
腕にチューブが繋がってる、ああ点滴か、すると病院だな。
あいつ溺死って言ってたからな。
天井を見る限りここは個室だな、相部屋だと仕切りのカーテンがあるからな。
ん?あそこに洗面台があるな、でもまだ動かないほうがいいだろう。
鏡を見れないから顔の確認はできないけども、手を見ると若い男の手だ。
良かった、子供でも老人でもないし、ましてや女の子でもない。
いや待てよ、若々しい老人とか、雄々しい女の子とかって線も捨てきれない。
頭の方の壁にネームプーレトがあるな。
(山本 純 16歳 男性 主治医,安室玲子)
良かった、若々しい老人でもなければ、雄々しい女の子でもなかった。
主治医は女医さんかぁ、"アムロレイコ"ってなんだかモビルスーツに乗ってそうな名前だな。
それよりも読めるってことはここは日本なんだ。
テレビもあるな、しかも液晶テレビみたいだ。
やった、技術水準から言っても、ここは元の世界の現代だ、間違いない。
すると死んだのが2020年ですぐに生まれ変わったら16足して2036年。
生まれ変わるタイムラグがあったとしても病室の設備を見る限り100年とか先ではないだろう。
16歳かあ、青春真っ盛りだな、彼女できるかな、恋愛もしたいし
てか、あいつ…いやいまは俺か、彼女いるかもしれない。
かわいい彼女だったらいいなあ。
前世では高校は工業高校で男ばっかりだったからなあ。
今は工科高校って言うんだっけ?まあいいけど。
いろいろと考えを巡らせていると扉をあけて誰か入ってきた。
ここは目を閉じて寝ているふりをしておこう。
「山本さ~ん、お熱測りますね~」
看護師さんかな。ごそごそ、脇を拭いている。汗かいていると正しく測れないからな。
で、体温計を挟んでと、んん~?なんで胸まで拭くのかな。
ああ、汗をかいているからか、丁寧だな。
「やっと私の当番が回った来たし。スーハー、あー男の子の匂い、いいわあ」
ピピピピ、ピピピピ・・・
「あっ、体温計っと。熱は無いようね、スーハー」
何を言ってんだかとおもいつつ、そっと目を開けてみる。
おお、なかなか美人な看護師さんだ。
ここは当たりだね。眼福眼福ぅ~。
お?目が合った、ちょっとにっこりしてみよう。
「ヒッ、あっ、あの、すぐに先生を呼んで来ますので、じっとしててくださいね」
看護師さんは俺にそう言うと、慌てて走って行っちゃったけど病院で走っちゃダメだろう。
それに「ヒッ」ってなんだよ。俺の笑顔がそんなに怖いのか?とっても傷つくぞ。
程なくして医師がさっきの看護師を連れてやってきた。
看護師は涙目だな、きっと叱られたんだろう。
先生もとても美人だし楽しい入院ライフになりそうだ。
「本当に目が覚めたのね。さて、私が君の主治医の安室玲子です。」
「あのあの、私が本日の担当看護師の響 キョウコ 24才です」
「君ねえ…まあいい、それでだ 純君のご家族様には先ほど連絡したら、こちらへ向かっているところだそうなので、じきに来られるだろう。
じゃあ少し質問するよ。君の名前と年齢は?」
「山本 純 16歳です」
さっきネームプレートで見たし間違いないね。
「じゃあ今年は?君が救急で運ばれて来てから数日だから、覚えている年でいいよ」
「えっと、2036年だったかな」
「え?」
あれ?もう少し後だったか。言い直しても間違ってたら拙いし、どうしよう。
<コンコン>「純ちゃん、気が付いたって聞いたけどもういいの?」
お?きれいなお姉さんが入ってきた、家族を呼んだって言ってたな。これはきっと姉ちゃんだな。
「うん、もう大丈夫だよ 姉ちゃん」
「え? 純ちゃん、私が判らないの?先生これどういうことですか?」
あれ?ちがうのか、しくったかな。
「落ち着いてください、純君のお母さん」
うわぁ、見た目若いお母さんだった、どうしよう。
「純君が救急搬送されて来たときは心肺停止状態でしたので、蘇生処置を施しましたが、そのあいだに脳にダメージをうけた可能性があります」
え?俺、馬鹿になっちゃたの?
「先ほども今年は何年かを聞いたら、2036年と答えたのですよ」
「純ちゃん、今年は2696年よ。それに私のことも判らないの?」
マズイ、マズイ、何か重大な齟齬がある。
このままでは頭のおかしい子認定されちゃう。
お母さんらしき人はもう泣きそうになっているし。
「まあ、昨日撮ったCTを見た限り、異常は見うけられませんでしたので、一時的な記憶の混乱によるものでしょう。
今日のところはこのまま安静にしていただいて、明日の朝から検査を致しましょう。
その結果を見て今後どのようにするかを決めていきましょう」
「はい、先生よろしくお願いします。それじゃあ純ちゃん、また明日来ますね。」
「頭痛、吐き気があればすぐに看護師を呼ぶようにしてください。安静にしているんですよ。純君」
・・・行ったか。母さん泣きそうだったな。
お昼休みの間にきたと言っていたが仕事場は近いのかな。
しかしなんで今年が2696年なんだよ。
現代の日本じゃあないのか?
生まれ変わりを主張してみるか…
厨ニ病みたいに痛いやつ認定されそうだな。
ラノベみたいに記憶喪失のふりをするか。
ラノベといやあ、あれだな試してみるか。
「ステータス」「オープンウインドウ」…って駄目だよな。魔法は無い様だ。
まあ、先生に相談するとして成り行きでやってみようか。
何とかなるだろう。