女子たちは
今日、3組悲願の男子が来る、と言う噂だ。
前にいた男子は入学後3日で退学してしまった。
今度の男子はどうだろう。クラスに馴染んでくれるだろうか。
彼女になんて望んでない。友達に成れなくてもいい。
クラス替えをしないこの学校で3年間居てくれればそれでいいのだから。
担任の先生が教室に来た。転校生は廊下で待っているのだろう。
「今日からこのクラスに転校生が来ます。男子生徒です。」
「本当ですか」
「実は女子とかじゃあないの?」
教室内が騒がしくなる。
「山本君、入って頂戴」
扉を開けて入ってきた男子を見た途端、今まで以上に大騒ぎになった。
「やった、男の子よ」
「やっとウチらのクラスに男子が」
「男子来た男子」
「ペロペロしたい」
男子に引かれるからやめなさい。それにしてもあの男子の着ている服は・・・
「それじゃあ自己紹介をお願い」
促されて黒板に縦書きで氏名を書いて横に立つ男子。
「山本 純です。聖蘭学園から転校してきました。よろしくお願いします」
終った。バラ色の学校生活よ、さようなら。クラスが絶望に包まれる。
「あの~山本さんは男の子が好きですか?」
委員長が聞いている。
当たり前じゃない、聖蘭学園に行ってたんだから。
家庭の事情とかじゃあないと転校なんてしないでしょう。
「男子も女子も好きですよ」
バイかあ、ゲイよりはましか。相手してくれるなら妥協するか。
「バイなんですか?」
だよね。委員長もそう思うよね。
「バイとかそう言うことでなく、友達として好きであって、敵意を持っている奴まで好きなわけじゃあありません。
そして、この学校で友達とか彼女が出来たらいいなと考えています」
「「「「「「「「「「やったぁ、委員長グッジョブ」」」」」」」」」」
「「彼女に立候補します~」」
「ペロペロしてもいいよね」
しまった出遅れた。さっき以上に大騒ぎとなった。私も友達になれるだろうか?
「それじゃあ、このままホームルーム最後までフリートークと言うことで自己紹介の続きをしてね。それと席は空いているところに座ってね、純君」
くそう、担任のくせに一人でアピールしやがって。私も名前で呼びたい。
「先生ズルイ、どさくさで名前呼びしてる。私も名前で呼んでもいいよね、純君」
「「「「「私も名前で呼んでもいいよね、純君」」」」」
「いいですよ、俺もなるべく名前呼びするから。」
「「「「「**です」」」」」
「みんながいっぺんに言ったら判らないよ。徐々に覚えるからよろしく。
それから、俺は訳あって記憶喪失になっているから、一般常識さえ判ってないので、おかしいと思ったら、その都度教えて欲しい。」
はあ、かわいそうに記憶喪失なんて。
周りは自分を知っているのに、自分は周りを知らない。
きっと、聖蘭学園でも居たたまれなくて、
女性に対する嫌な記憶も消えたこともあり、転校しやすいここへ来たのかも。
彼の記憶が戻らないことを祈っているわ。




