第八十五話 鎌倉合戦
少し戦線から遠ざかってしまった俺と義治は鎌倉に向かった。
というのも敵は鎌倉を狙っていたからである。
途中で石堂・三浦の援軍を得て我らが本拠地へと急ぐ。
敵はあの足利高氏の息子、足利基氏がやって来るらしい。
ということで俺たちは鎌倉にて迎撃を開始する。
「行くぞ義興」
義治に促され俺は戦地へと向かう。
「遅かったな義治義興」
鎌倉は新田義貞の力によって守られていた。
敵方は切通を通って新田軍を攻撃していたがこちらも弓矢で応戦していた。
そして。
足利基氏が姿を表す。本来ならば鎌倉公方としてこの地を支配していた男。それが俺の歴史改変のせいで煮え湯を飲まされた男。
「皆のもの、新田軍を殲滅するのだ」
「はっ」
険しい切通のなかを新田軍の猛攻にあいながらも前進を続ける基氏。彼の兄義詮を北畠顕家と倒したことを思い出す。今回も新田の力で足利を倒せればいいのだが。
「こちらも負けてはいられないぞ」
俺たちも味方を鼓舞する。彼らもまた俺たちの仲間だから気を抜いて死なれでもしたらいけない。
「行くぞ」
俺たちは敵方の動きを確認しながら得意の石火矢と弓矢で攻撃する。
「新田軍の攻撃に負けていられるか」
彼らは戦線を拡大していく。
「足利基氏殿ここは前進あるのみです」
「そうだな」
彼は兵士の言葉にうなずき戦いはじめる。
「行くぞ」
彼は派手な大鎧で俺たちの軍を攻めていく。
こちらが弓矢で攻めれば相手は太刀で切りつけ前へ前へと進んでいく。
そして切通の奥に火を放っていく。
次第に形成が逆転していく。
まずい。このままでは俺たちが負けてしまう。
ここで作戦変更だ。石火矢と弓矢を使用した待ち伏せ作戦では火にやられて全滅しかねない。
そこで俺たちは本拠地を山の下に移動させ相手に気づかれないよう挟み撃ちにすることに。
「新田はどこだっ」
「はっ基氏様それがどこにも見当たりませぬ」
「くそっ敵の前で逃げたか」
「己新田めっ。我々をどこまで愚弄すれば気がすむのだ」
基氏は声をあらげ今度は切通を戻ってくる。
「来たぞっ」
俺たちは合図をすると再び弓矢を使用して相手を翻弄する。
史実ではここで敗走して足利の元に戻るのだが。
基氏は全速力でこちらに挑んでくる。
(どういうことだ)
俺が歴史を変えたことにより少しずつだが未来も変わっていくのかもしれない。
ここで撤退を選ばず前進してくる基氏軍に戦慄すら覚えた。
「奇怪な武器を使って我々を翻弄しても無駄だぞ」
慣れた手つきで太刀を振るう。その様子には無駄がなく俺たち新田軍の兵士たちは少しずつだが戦力が削がれていく。
(このまま敵にやられてしまうのか)
だとしたら俺の命はどうなる?ここで死んだら元の世界には戻れないのか?
そんな疑問が脳裏をよぎる。
だけど。負けるわけにはいかない。
俺は奇襲をかけることにした。
「行くぞ」
背後から矢を放つ。だがすんでのところで避けられてしまう。
「何奴」
基氏は振りかえると俺と目が合う。
暫し見つめあいじりじりと間を詰めていく。
そして。
基氏は刀を引き抜く。俺も彼にあわせて腰に携えた鬼丸に手をかける。
「名乗るほどのものではない」
「お前が総大将の次男新田義興だろう」
彼はフッと笑いこちらに向かってくる。
斬ッ。
鋭い剣捌きだった。
実力では相手に分がある。
それを上回るためにはなにか策を練らなければならない。
そうして考えている間にも基氏の手は止まらない。
「残念だったな。ここではお前らの得意な火は使えない」
「そうだな」
逆に向こうは町に火を放つことだってできる。
ということは。
「これで最後だ。鎌倉の町は火の海になるだろう」
切通から来た炎が次第に火の手がこちらに回ってきた。
それと同時に背後の火が足利軍を飲み込む。
「くそ」
基氏はそのまま火だるまになりながら絶叫した。
「くそっくそおおおおお」
「基氏様っここは逃げましょう」
家臣たちが必死に火のついた大鎧を脱がそうとするが時すでに遅し。
「俺たちの勝ちだ」
かくして戦いは足利直義が待ち受ける笛吹峠へと移るのだった。




