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第八十二話 四条畷の戦い

藤井寺合戦と住吉合戦が勝利に終わりひとまず平和が訪れた。

楠木正行は今上帝に謁見を願い出た。


「この戦が終わったら私たちはお暇いただきたいと思っております」

「それはどうしてだ」

今上帝の疑問に言葉をつまらせる楠木正行だった。

おそらく彼は死を覚悟しているのだろう。

「この度の戦で我々が生きて変えれる可能性は低いと思います。だから今生のお暇をいただきたいのです」

「そなたの気持ちは分かった。立派な心がけだ」

今上帝は楠木正行の心がけを称えた後真剣な面持ちとなった。

「だが命は全うするのだぞ」

そう告げて俺たちは別れた。


此度の戦いの相手は高師直だ。足利直義と対をなす存在。

彼を倒せば足利方の首領は実質一人となる。

今上帝の命令を全うするためにもこの戦いに負けるわけにはいかない。


敵は騎馬装甲部隊と弓射歩行部隊に別れて戦いを挑んでくるようだ。

今回はこちらも同じ作戦に出たら負けてしまう。


ということで火薬を使うことに。

北畠顕家とともに高師泰を撃退したときに用いたマドファを使用する。


相手の作戦はこうだ。

騎馬装甲部隊の俺たちを弓射歩行部隊を囮に使って疲弊したところに同じ騎馬装甲部隊を向かわせる。

つまり二段階あるということだ。

まずは弓射歩行部隊から片付けなければ行けない。彼らを倒すのには遠距離攻撃が妥当だから作戦通りマドファを使用する。

そして装甲騎兵にたいしても同様に火薬を用いた火槍を使用する。

今回はこちらは騎兵を使用せず歩兵にて対応する。

それは火薬を使用することで馬が驚き暴れる可能性があるからだ。

そして最後に高師直を確実に倒すこと。

これができて初めて作戦成功ということだ。

なかなか難しい戦いとなりそうだ。


「では参るぞ楠木正行殿」

「はっ」

こちらには新田の軍があるということで戦力差を縮めることができた。

舞台は河内の国の北篠。またの名を四条畷という。

「まずは歩兵部隊を殲滅するぞ」

俺たちはマドファを構えて敵に照準を定める。

「なんだ楠木軍が使っている奇妙な武器は」

弓射歩兵たちは疑問の声をあげながらも職務通りに弓矢を放ってくる。

「あれは高師泰殿がやられた西方より渡来した武器だそうだ」

早速マドファを使わせてもらう。

「行くぞ」

ドンッと低く響く音がする。

「なんだこれは」

足利方は騒ぎ出す。だが後半戦のためにもマドファは温存しないといけない。

「これでまずは相手の意表を突くことができた」

「では次の手に出ましょうか」

敵の攻撃に弓矢で応戦しつつ一部隊を率いて囮に出る。

そして敵をこちらに引き出していく。

「新田軍がこちらにやってきたぞ」

「皆のものかかれ」

敵は本気を出してきたようだ。弓矢が雨のように吹き荒れる。

だがその間を潜り抜けて俺たちは一人一人と剣を交わす。

「全力で潰しにかかるぞ」

「負けてたまるか」

俺たちはなるべく歩兵を引き受けて囮としての役目を果たす。

「くっ」

敵は俺たちの勢いに圧倒されているようだった。

俺も鬼丸を片手に一人二人と薙ぎはらっていく。

「こんなところか」

ひとまず囮としての動きには成功したようだった。弓射歩兵の気はこちらに削がれているようだった。

「次は装甲騎兵がやってくるぞ」

温存していたマドファの出番だ。

「何をやっているか」

案の定歩兵部隊は叱責を受けている。

「これから援軍がやって来る。ここは待機だ」

どうやら本命の装甲騎兵がやってくるようだ。


馬の蹄が土を蹴る音がする。

「皆のもの楠木と新田の軍を打ち倒すのだ」

馬の上から声がする。

「まずは新田を狙え」

俺たちの部隊が狙われているとのことだった。

「じゃあ行くぞ」

マドファに灯をともす。すると。

ドンッと低く響く。

この音に馬たちが暴れだす。

「なんだこれは」

「くそ。馬が言うことを聞かない」

続けて火槍を敵に向ける。

バンッと爆裂音がする。

「なんてことだ。これでは馬が使い物にならない」

それどころか今となっては邪魔でしかない。

敵方は混乱を極めて阿鼻叫喚としていた。

(ここで優位に持っていけたのはいいが)

最後は高師直をここに引きずり出せればいいが。

史実では楠木軍が偽物をつかまされて苦戦を強いられたという。

俺がいるからにはそんな状態に持っていくわけにはいかない。

俺たちは洗浄を駆け抜ける。

ふと視線を背後にやると楠木正行が心配そうにこちらをうかがっていた。

「大丈夫だ」

俺は大声をあげる。

その言葉に安堵したのか楠木正行は攻撃を再開する。

(高師直はっと)

辺りをキョロキョロと見渡す。だが相手はなかなか見つからない。

もし俺が高師直だったのならば。

俺は装甲騎兵部隊にいると思う。そちらの方が安全だから。

だが今この混乱の中でだったならば。

きっと彼は馬を捨てて後方に待機するだろう。

新たな作戦を産み出すためにも。

しかし敵の層が厚い。奥に進むにはどうすればいいか。

「仕方ない」

俺は敵の馬を奪って後方に駆け抜ける。

ドンッドンッと爆裂音が響き渡るなか馬は暴れながらも俺の指示にしたがっていく。

「よしっ」

俺の見解は当たっていたらしい。後方に高師直の姿がある。

「某新田義興と申す。一騎討ちを願い出るものはいないか」

まずは一騎討ちに願い出る。だが案の定願い出るものはいなかった。

「新田義興だと」

敵はひそひそと話はじめる。どうやら俺のことを警戒しているらしい。

「あの高師泰殿を打ち倒した新田義興が一騎討ちを願い出ている」

「高師直殿いかがいたしましょうか」

家臣たちが高師直にお伺いをたてる。

「ここまできたならば致し方ない」

高師直は腹をくくったらしい。

「某高師直と申す。一騎討ち引き受けさせてもらおう」

その言葉と同時に俺は馬から降りる。

「行くぞ」

鬼丸を引き抜いて相手の出方をうかがう。

「ふん」

高師直が刀を振るう。それを鬼丸で引き付けて。

「ぐっ」

俺は次の手に出る。刃が交わるたびに敵の腹部を蹴りあげる。

「新田義興といったか」

「ああ」

「お主もなかなかやるのう」

ふっと高師直は笑った。

「だが甘いな」

高師直は見方に合図をおくり彼らは俺に襲いかかる。

「くそ。卑怯じゃないか」

「ここまできたら作戦などあってないようなものだ」

一対五になり俺の勝ち目はほぼないに等しいようなものだ。

どうやってここを切り抜けるか。

ここで諦めるわけにはいかない。

「行くぞ」

敵は刀をふるっていくのを一つ二つとかわしていく。

「なかなかしぶといな」

男達は低く笑った。

「だがそれもこれまで」

カンッと金属音がして俺の手から鬼丸が落ちる。

(不味い。もはやこれまでか)

とその瞬間だった。

背後から楠木軍がやって来る。

「これで五分五分だな」

楠木正時がやってきたのだった。

「助かった。感謝する」

「いや感謝には及ばない」

そして地面に落ちていた鬼丸を手にして戦いを再開する。

「楠木正行は」

「兄は後方で部隊を指揮しています。今は優勢です」

「ならこっちも早く片付けようか」

そう言うや否やこちらも太刀で敵に切りかかっていく。

ザンッ

まずは一人目が打ち倒された。

次はーー

キンッ

合わせて二人が倒れ残りはあと二人に。

続いて。

ザンッ

最後の一人がやられ残りは高師直一人に。

そして。

俺たちの部隊に囲まれた高師直に逃げ場はなく。

「高師直お前の敗けだ」

かくして四条畷の戦いは幕を閉じたのだった。

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