第七十七話 青野原の戦い2
足利方はくじ引きで陣立ての順番を決め北畠顕家の軍を迎え撃った。
しかし最終的には北畠勢が勝利を収め土岐頼遠は一時的に行方不明になった。
高師泰、佐々木道誉、佐々木氏頼、細川頼春らが北畠に反撃した。
敵方は美濃・近江の国境沿いの黒地川を背に背水の陣で待ち構えていた。
そこを疲弊した北畠軍は倒せないでいたのだった。
歴史上ではこのまま北畠顕家は伊賀の国・伊勢の国を経由して吉野に向かう。
そして体勢を立て直して大和の国で戦うが高師直に破れ戦死してしまう。
ということで俺たちは黒地川に向かう。
敵の数から言っても俺たちが加われば戦に勝つことは不可能ではないだろう。
武器はアラブのマドファを使用することにする。
これは初期の銃で口径20mmの金属の銃身に柄がついた形となっている。
弾丸には硫黄、炭、硝石を使用している。
熱した金属を発火装置の穴につけて発砲させる構造となっている。
今回は火槍から変更してマドファの使用をメインにする。
もちろん石火矢も使うことになるが。
そしていざ参らん黒地川へ。
「喜助、今回の作戦はどうする」
「はっ。相手は背水の陣で構えているのですから別動隊の動きに気を付けつつ攻撃していけば勝機はあるはずです」
「本来背水の陣とは時間稼ぎみたいなものだからな」
背水の陣を用いて大勝利を得た軍師は漢の三傑の韓信である。彼の場合は山を前にして水を背にしたことから背水の陣とされている。この場合山中にいた遊軍が来るまでの時間稼ぎで相手を油断させるためにとった戦法である。普通はこんな危険な戦法はとれないのだ。
「北畠顕家殿応援に参った」
「悪いがお前らの力は借りない」
「どうしてそんなことをおっしゃるのですか」
北畠軍は見るからに疲弊していた。
彼らは自軍が有利であるとわかりながらもなかなか攻めきれないでいた。
「これは私たち北畠が片付ける問題だ」
北畠顕家は頑なだった。
「しかしこのまま疲弊して戦えなくなったら元も子もありません」
俺がそういうとそばで控えていた北条時行も一緒になってうなずく。
「北畠顕家殿、ここは新田義興の言うとおりにした方が賢明です」
「むむ……」
北条時行の言葉に彼の心は動かされそうだった。
「俺たちには新しい武器もあります」
「むう」
マドファを見せつけると北畠顕家の目の色が変わった。
「なんだそれは」
「これは西方から出る武器のひとつでマドファと申します」
「そのマドファとやらはどうやって使うのだ」
俺は火を起こして銃身にある穴に金属を当てる。
するとドンッと低く響く音がした。
「これは便利だの」
北畠顕家の心は揺れているようだった。
「はいこれを使えば敵を一網打尽にするのも夢ではありません」
俺がそういうと彼は静かにうなずいた。
どうやら納得してくれたらしい。
「北畠顕家殿それでは新田軍との連合軍を作り上げましょう」
北条時行が彼に耳打ちする。
「勝機があるのならばそれに応じるべきです」
そういって彼は刀の鞘をつかみ自身を奮い立たせる。
「ここまできたら背に腹は代えられないか」
「では新田義興応援を頼む」
かくして俺たちは黒地川にて戦いを始めるのであった。




