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第四十四話 奇襲

さて後方支援を求められた俺たち一行だが成良親王と離ればなれになるのはまずい。ということで切れ者と噂される足利直義と交渉することにする。

「さすがに後方支援だけだとこちらも立つ瀬がありません。我々だけの部隊を作ることはできませんか」

「それはならぬ」

「では成良親王のお側に控えるのはいかが致しましょう」

「それは執権たる私の仕事だ」


ならぬならぬそればかりだ。頭の固い人ってどうしてか話が通じない人が多いんだよな。


「では我々も譲歩しましょう。この新田義興が直義殿の部隊に所属させる代わりに義貞さまが成良親王の傍らで待機するのはいかがでしょうか」


「それにより私たちが得る利益とは」

「この新田義興、わしがいうのもなんだがなかなか使える男での。そばにおいて悪いことはない」


すかさず新田義貞が援護射撃にはいる。


「ふんっどれほど使えるものか見ものだな」

「それは使ってみてからのお楽しみだ」


お互い腹の探りあいとばかりに不適な笑みを浮かべる。百戦錬磨の男同士言葉に表せない迫力がある。


「すぐにくたばらないといいが」

「わしの義息子だからその心配はないぞ」


一秒二秒額に汗が浮かぶのを感じながら足利直義の返答を待つ。

「よかろう、ではさっそく義興には私の部隊に入ってもらう」

交渉成立だ。

そして俺は市中捜査に駆り出されたのであった。


鎌倉の町には北条の残党が潜伏している。当然その中にも北条時行が含まれているのだがいかんせんその実態がつかめない。だから俺は直義の部下として市中を探索することにした。


もちろん直義は執権だからそう簡単に動くわけにいかない。

俺の方もあくまで後方支援が中心だから弓矢や兵糧の支給といった本陣での仕事と平行して敵情視察にうかがったわけだ。


「せやっ」

「うわあああ」

小さな脇差しで敵を倒す。動けないようにして情報を得るため足を狙って攻撃をした。


「足利直義軍だ」

「ひっ。助けてくれ俺はなにも知らないんだ」


「ただ北条時行様が再びこの地を訪れて鎌倉を奪還するおつもりだということくらいしか」


あとはなにも知らないようだった。これ以上尋問しても効果はなさそうだ。


「行けっ」

「くっ」


空き家に隠れている残党も多い。それに荒れた神社や寺の境内を拠点としている敵もいる。


ということでかつての館が立ち並んでいたところに潜入すると。


「成良親王はここから北方の寺社に陣を構えているという」


北条の残党が見張りをしながら会話しているのが耳に入った。


「しかも足利直義軍が活躍しているというから心配だな」

「安心しろ。俺たちには北条時行様の軍が用意されている」


あっちでもこっちでも北条時行。まるで何かの合言葉のようだった。


「果報は寝て待てだ。焦らずに待っていれば必ず時行様が現れるだろう」

「そうだな。それまでは足利直義軍の足止めを頑張ろう」


うなずきあってこちらに近づいてくる。


「そういえばさっきから気になっていることがあって」

「ああ。そこのことだな」


敵の気配に俺は身を小さくして隠れる。


一歩二歩と近づいて。

内心焦ったのもつかの間北条の残党はそこで歩を止める。


「この皐手入れが全然されてないな」

「まあ戦乱が続いたから仕方ないだろう」


そうしてまた来た道を引き返していった。どうやら首の皮一枚繋げたようだ。


とりあえず北条時行のことを足利直義に報告しよう。

なにか不穏なものを感じながら俺は本陣に戻るのであった。

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