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第二十一話 使者

俺たちが密かに金をためているという噂を幕府は聞き付けたらしい。


何より足利尊氏が反旗を翻した。そのせいで鎌倉では疑念が走っている。

裏切り者がいないかどうか。


あの北条高時にしてもここまで来たら厳しい判断に迫られているのだろう。


そして事情を聴きに行った幕府の使者は道中、六波羅からの急使によって事態が予想以上に深刻だということに気がつき、次の行動に出た。


それは人目を忍んで鎌倉を脱出した足利義詮の捜索。また足利尊氏の嫡男竹若の暗殺。

片方は失敗に終わり、もう一方は成功してしまった。


つまり幕府としては一進一退の状況だということだ。


そして場面は冒頭に戻る。


俺と北条高時の関係から新田義貞は巨額の軍資金を要求されることになった。

それはある意味当然で、幕府の存在が揺らいでいる今戦争をするために金が必要になる。


そして俺の力により富を築き上げた新田義貞が協力するのは幕府がわからすれば当然だった。


だが新田義貞は勅命を受けて反幕府勢力の一翼を担っている。

だから北条高時の要請にうなずくことはできない。


「九郎丸、こちらへ来い」

とある晩のことだった。俺は猪に蒟蒻に、幕府攻略に思考を巡らせて疲労困憊状態だったが、主に呼ばれたならそれに応じるのが家臣のつとめだ。

「なんでしょうか」

なるべく礼儀正しく、相手に失礼がないような態度をとることに努力する。


「時期が来た」

「というのも」

俺が首をかしげていると新田義貞がにたりと笑う。


「これから戦が始まるのだ」

「どういうことです」


「正式に北条高時から使者が送られるその前に準備を整えるのだ」


なんでも正式な使者が来るのはあと少しだそうだ。そのときにどう対応するのが問題となっていたが。


「でも俺たちは幕府にご恩があるはず」

「だが今の幕府の体たらくは目に余るものがある」


それになによりと彼は付け足す。


「そろそろ激動の時代が来る予感がするのだ。ここで我が領地にとって最善の策を見極めるのが主としてのつとめであると私は信じている」

「ですがそれは裏切りに……」


「ここまで来たら背に腹は代えられない」

「俺たちは幕府の敵になるということですよ」

「それを踏まえてのことだ」


新田義貞は神妙な面持ちで俺に告げる。

「お前には苦労を掛けるな。だが頼む」

更に頭を下げられる。

「お前の頭脳が必要なのだ。この時期だからこそ」

そしてしばしの沈黙の後。

「協力してくれ」


激動の時代が始まるのだった。

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