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21.アルカトラの終わり

「あのなぁ、俺はそもそも一層で逃げてくる囚人達を足止めしておけって言ったんだが。」

「最初はそのつもりだったんだけど意外と誰も来なくてさぁ。こっちから迎えにいったら、彼らまだ檻の前で首輪を外そうと四苦八苦してて!ほら、彼らスキルとか使えないから誰も首輪壊せないんだよね。その様が哀れで面白かったから『僕とじゃんけんして勝ったら首輪外してあげるよ!』って。」

「それでこの惨劇か……。」

「そーそー。よく考えれば誰か一人スキル使えるようになったら他の人の首輪も外せちゃうからさぁ。一回負けたら勝手に外し始めちゃって。じゃんけん百連戦を無敗で乗り切れば話は違ったかもしれないね!」


 やたら自慢げにアホ面を見せつけるユン。ガジュとしては、ユン達がガジュを支援するために強力なスキルを持つ囚人の首輪を破壊して回っている、ぐらいの想定だったが、キュキュはともかくユンにそんなことを期待したのが間違いだった。そうやってガジュが落胆していると、彼の元にシャルルが二人の囚人を連れて現れる。


「ガジュ、見つけました。こっちが【補修】でこっちが【修復】のスキル持ちの囚人です。」

「よし、じゃあこいつらに壊した部分を修復して貰って、シャルルは囚人達を檻に入れ始めてくれ。俺達は落ちたカナンの様子を見に行ってくる。」

「分かりました。正義と秩序に従い、適切に裁きます。」

「あ、そうそうシャルちゃん!これ、シャルちゃんのでしょ?なんか囚人が持ってたからパクってきたよ。」

「これは……!そうでーーーす!!!シャルはこれで悪を裁きまーーーす!!!全員並べーーー!!!」

「うわうるさっ。渡さなきゃ良かった。早く行こガジュ、耳壊れちゃう。」


 完全に調子を取り戻したシャルルに暴れる囚人達を任せ、ガジュとユンは先ほど空いた縦穴を眺める。カナンはスキルの効果を完全に失い、この穴を落ちていった。力をコントロールして大きく破壊するのではなく細い縦穴を空けることに努めたから、穴は恐らく百層近くまで空いているだろう。それほどの距離の穴を落下すれば流石のカナンも無事では済まないはず。


 そんな期待のようなものを抱き、ガジュ達は縦穴を飛び降りていく。照明は壊したままだから【闇の王(ナイトメア)】の効果は充分、エレベーターを使うよりずっと早く下まで行けるはずだ。


「何にせよ、悪かったなユン。俺一人であいつを倒すとか言っておきながら結局助けを借りないと勝てなかった。」

「パーティなんてそんなもんだよ。せっかく四人いるんだから全員で仲良く頑張ればいいんだって。」

「そうだな……。」


 ここは『カイオス』ではなく『クリミナル』。助けを求めなくても勝手に助けてくれる空間だ。ガジュはそのことに感謝しつつ、縦穴の先へと降り立つ。大体九十層程度だろうか。二人は深い闇に包まれたその場所で、カナンを探し始める。


「お、いたいた。死にかけでもイケメンなのは変わらないねこいつも。」

「はぁ……何だい君達。僕の死に様でも見にきたのかい……?」

「凄いね!よく生きてるね!」

「囚人がいなくとも僕には看守共もいるからね。全くあいつらはろくなスキルもない雑魚だからね……困り物だよ。」


 発見したカナンは看守のスキルを使って生き延びてはいたものの、床に血を流して横たわり、瀕死とも言える状況だった。減らず口だけは止まらないようだが、この調子なら直に心臓も止まり絶命するだろう。その様を眺め、ガジュはユンの肩を叩く。


「ユン、回復魔法は使えるか。こいつにかけてやってくれ。」

「使えるけど……本気?」

「大丈夫だ。俺は今スキルで強化されてるし、看守のスキルしか使えないこいつに出来ることはない。いいか、こいつは殺さない。俺が閉じ込められていたあの暗い檻で、生き地獄を味わってもらう。」


 慈悲でもあり報復でもある決断。この残虐な男を殺してもシャルル含め誰一人咎める人間はいないだろうが、ガジュ達はもう囚人ではなくなるのだ。無用な殺生はせず、正当な処罰を食らわせる。それが脱獄する人間としてのケジメだろう。ガジュはそう考え、ユンの治癒を受けたカナンを百層へのハッチの中へと叩き込む。


「囚人から奪った首輪とか手錠とかこれでもかっていう程つけちゃお!二度と出て来ないでよね!」

「心配しなくても出る気はないよ。もう痛ぶる囚人達もいないしね。アルカトラが機能を取り戻しても僕は囚人のままだろうから。」


 ユンによって体がどんどんと拘束されていき、カナンは諦めたように下を見る。これでアルカトラでやるべきことは全て片付けた。シャルルの救出も、カナンの撃破も、囚人達の後始末も。


 後は自由を手にするだけだ。


「じゃあなカナン、いやアルカトラ。俺達は()に行かせて貰う。」


 こうして長かった脱獄は終わりを迎え、ガジュ達はエレベーターで地上へと向かっていった。

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