地図が欲しい
オッサンの実家を離れ、妖精界と水精界を繋ぐトンネルへ向かう。
1番妖精が集まっている中心部を避けているとはいえ、都会ということに変わりはない。
「妖精界は公共機関も無いんですか?」
「無いねー、電車とか車なんて人間しか使わないよ」
「でもどういう物かは知ってるんですね」
「学校で習うんだよ」
妖精界では“人学”という科目があるらしく、人間についての知識を学ぶのは義務なんだとか。
感覚的には多分、私達が外国の勉強をするのと同じ感じだろう。
だからオッサンも新幹線を使うとかちゃんとわかってたのか、勉強出来るタイプの馬鹿という訳だ。
「水精界まで歩くとなるとどれくらいの時間がかかるんですかね」
「どの界も1週間くらい歩いたら縦断出来る計算!」
「という事は少なくとも5週間は一緒に旅しないといけないと言うことですか」
新手の拷問だろうか。知らない世界を歩き続けるだけでもかなり過酷だというのに。
「まぁ僕と一緒だし百人力ー!ねー!」
共に旅するのがこの全ての元凶かつ不安要素のオッサンである。
私の胃が耐えられるかどうかもこの旅が終わるかの重要なポイントと言える。
グダグダとこんな事を考えていても現状は変わらないし、気を取り直して上手くやる他無い。
「妖精界の地図とかって持ってないんですか?」
「え?なんで?」
「現在地の把握とか、どの道通ったらいいかとか……」
普通に考えてわからないだろうか、旅をするのに地図はなにより大事だという事が。
オッサンの反応的に確実に持っていないのは明確、まずは地図の入手が最優先だ。
「どこか地図が買えるようなところってありませんかね」
「地図なんて売ってるの見た事ないなー」
「地図自体は存在してます?」
「高齢妖精なら家に置いてるかも!」
地図持ってる高齢妖精はサブスクドアとかいうシステムに着いていけてない層なんだろうな。
でも存在している事がわかっただけでも励みにはなる。
「高齢妖精に知り合いとかいません?」
「いたら良かったんだけどね……」
「とりあえず地図の入手を最優先に考えつつ、トンネル目指しましょう」
「なんかワクワクするね!あいあいさー!」
出来ればオッサンの実家周辺、土地勘がある場所で地図を入手しておきたい。
少し歩いた後、突然オッサンの足が止まった。
「あ、あの高齢妖精見たことあるよ!」
オッサンは1人の妖精を指差す。
私からするとかなり若く見えるのだが、妖精同士だと高齢かどうかはわかるものなのだろう。
「声、掛けてみます?」
「任せて!人懐っこさには定評があるよ!僕の中で!」
自己評価なのには不安しかないが、率先して交渉してくれるならもうそれでいい。
私はこういう対人系は不得意だから尚更だ。
オッサンは高齢妖精の元へ走り出した。
「すいませーん!そこのおばーちゃん!ちょっといいですかー!」




