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オッサンフェアリーと私  作者: さむぺん
序章 旅の始まり
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新幹線を降りた先

 まず私達は最寄りの駅へ向かい、新幹線が止まる大きな駅へ向かった。

 電車に乗るのなんて、いつぶりだろう。

 仕事以外で出歩く事はなかったし、職場も近場だった。

 思っていたより、狭い世界で生きていたと思い知らせた気分だ。


「なに良い感じな雰囲気醸し出してんの」


 周りの人の目から見た私は風景の一部にしか過ぎない訳で、でもそれが当たり前で。

 しかし現実は奇妙で、私の横には妖精が座っている。オッサンの妖精。

 目に見えるものが全てじゃないんだよなぁ。


「自分に酔ってるの痛々しいよ」


 きっと今同じ車両にいる人はこの空間を静かな空間だと言うだろう。

 心地良い揺れと温度で居心地が良いと。


「外出てからずっと無視は酷くないかな」


 でも私は違う。最高にうるさい。不快だ。

 外で返事をすると私はただ無に話しかける変人になる。まだ社会性は捨てたくない。


「パパーン、妖精豆知識っ!」

 なんかよくわからないコーナーが始まった。

「極々稀に君みたいに妖精が見えちゃう人がいるよ!波長が合うって言うのかな?ですてぃにー!」


 ここで初めて、自分が妖精見えちゃう人だと知った。

 なるほど、だから仕事辞めさせてまでカエル探しに……ってそれを先に言えばもう少しスムーズに納得出来ていたかも知れなくも……ないか。


「豆知識パート2!妖精が見える人には共通点があるらしいよ!それが何か覚えてないけどっ」


 車内放送が降りる駅の名前を呼んだ。

 降りる準備は完璧である。

 オッサンはもう席を立ち、扉の前にいる女性のスマホを覗き込んでいた。


 ここまでの電車賃は許容範囲だが、問題は新幹線代だ。

 頼むから1万円以内にしてくれと願う。

 私の想いは届かなかったようだ。


「わーお、13870円。高っ」


 財布の中まで軽装備になってしまった。

 この旅が終わったら早急に仕事探そう。

 あわよくば請求してやろうと領収書を財布にしまった。


 新幹線に乗り込み、空いている席に座る。

 オッサンも横に座った。正直、3人席だから真ん中を詰めないで座って欲しい。


「新幹線ってワクワクしちゃうね!あのねー」


 オッサンが話しかけてきているのを横目に私は深い眠りに落ちた。


 1時間ほど眠ったのだろうか。

 降りる駅の1つ手前で目が覚めた。


「おはよん、結構寝たねぇ」


 窓の外を見ると、山と田んぼしか存在しないくらいの田舎風景が広がっていた。

 来た事は無いけれど、どこか懐かしい雰囲気だ。

 都会っ子かつインドアの私には目に映る全てが新鮮で、綺麗で。


「田んぼと山しかないけど、この辺に住んでる人ってどうやって生きてんのかねー?自給自足?」


 出来れば1人の時にこの感動を味わいたかった。

 まぁ、1人だったら絶対来ないだろうけど。


 到着を告げる車内放送と共に席を立つ。

 新幹線が止まる駅にしてはこじんまりとしている。人も少ない。

 ここから電車で2駅ほどで陽真村らしい。

 ホームの時刻表を見た。

 電車は基本3時間に1本で、次に来るのは2時間後。終わった。


「ね?軽装備で良かったでしょ」


 オッサンのドヤ顔が癇に障る。

 近辺に店なんて無いし、歩くしかない。

 仕方なく自販機で飲み物を2本買い、駅を出た。

 都会の2駅は正直余裕で歩けるけど、田舎はかなり歩く必要がありそう。

 周りは自然しかない。人もいなければ建物もほぼ無いような場所。


「なんか人類滅びた後みたいだね」

「不謹慎ですね」


 オッサンは私が返事をした事に少し驚き、ニヤニヤしている。

 妖精は羽根があるから楽そうだ。

 飛んでると言うより、浮いてるだけど。


 1時間半歩き、陽真村に到着した。

 歩いている間、昨日何食べた?みたいな薄っぺらい会話が何回かあったくらいで後は黙々と歩き続けた。


「長時間浮くのってキツイんだね」

「長時間歩いた私への嫌味ですか」


 妖精が浮くのは根性らしい。

 人間界では浮くのがやっとレベルで、妖精界では逆に歩くんだとか。なら歩けばいいのに。


「で、ここから陽真ノ森へはどの道で行くんですか」

「え、いつもドアでワープしてるから知らないよ?」


 このオッサンはどこまで足を引っ張れば気が済むのか。


「これからどうするんですか」

「探すしか無くない?逆にどうしたいの?」


 とりあえず逆ギレする悪い癖をやめて欲しい。

 しかしこんな所で揉めていても何も進まない。

 ひたすら山へ向かって歩く。

 周りを見わたしても、自然が広がっているだけで、民家さえも見当たらない。


「やっぱり人類滅びてるんじゃない?」

「人類に恨みでもあるんですか?」


 恨みがあったとしても、今あなたの横で一緒に旅してくれているのも人類だと言うことを深く頭と心に刻んでいただきたい。


「妖精って案外無力なんですね」

「それを妖精に言っちゃう?」

「だって……」


 物語に出てくるような妖精は、魔法が使えて、読者に夢と希望を与えてくれるでしょ?とは流石に言えなかった。


「だって、実際無力じゃないですか」

「少し考えて出たセリフがそれ?」

「これでもオブラートに包んでますよ」

「それにしても森見当たらないねぇ」


 山の近くまで来ることは出来たものの、陽真ノ森と書かれた看板すら見当たらない。

 見つけたものといえば、1件の小屋くらいだ。


「あの小屋に行ってみるしかないね」

「本能的に行きたくないんですけど」

「この辺で野垂れ死にするよりは良くない?」

「変に殺されるよりは野垂れ死にの方が……」


 小屋のドアが微かに開いた。

 騒ぎすぎたか、もしくは風のいたずらか。

 後者であって欲しいと願いつつ、仕方なく小屋へ近付く。

 ドアの前まで来ても、開く気配は無かった。

 なんだ、やっぱり風のいたずらじゃないか。

 ゆっくりとドアを開いた。

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