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社に響く楽の音を  作者: 紫南
20/25

20 手を組む

2016. 6. 19

0:00投稿分

あと五話ほどで決着が付けばと思っています。

律樹が帰って来た時、響華と優香は二人で談笑していた。


律樹は部屋を見回して尋ねる。


「おやっさんは?」


この場には、沙河の姿がない。それで、不審に思ったのだろう。これに優香が答えた。


「おじさんなら、急患だって言って、ちょっと前に上に上がっていったよ」


優香が指さす方には、タンスが階段となって並んでいる。そこを登って消えていったのだ。


「上にも入り口があるんだってねぇ。ユキちゃんが教えてくれたよ」

「ユキちゃん……そうか……」


少々非難がましい律樹の視線を受けたが、ユキは前足で顔を擦って知らないふりをしているようだ。


「まぁいい。おやっさんは何て?」


ここへ響華を連れてきたのは昨晩の力が体に影響がなかったかどうかの診察のためだ。律樹は結果を尋ねる。


「特に問題ないって。いずれ色々相談させてもらうけど、今は心配ないみたい」

「今は……か。おやっさんが言ったなら仕方ないか」


そう呟いて、律樹はユキに目を向けた。


すると、それを待っていたように姿勢を正し、ユキが報告をする。


ユキは響華の診察が終わってから、長く沙河と話し合っていたのだ。それは、律樹の今回の仕事の事に関係しているようだった。


《今回の仕事。彼女に手伝ってもらうべきだ。主の力であの場を清めたとしても、根本的な解決は難しい。あれだけの穢れを纏ってしまった神だ。一時的に清めた所で、聞く耳を持つとは思えん》

「だよな……」


律樹が一瞬、響華へと視線を向ける。その瞳には迷いのようなものが感じられた。


《沙河が言ったのだ。上も納得する。何より、ナキ様は何も仰らなかった》

「あぁ……あそこに現れたから、てっきり忠告かと思ったんだが、あれから特に何も言ってこない」


ナキは恐らく、ただの買い物や散歩の目的で律樹の前に現れたわけではない。響華を見極めにきたのだ。


「なぁに? あたしら、なんか試されてたとか?」


優香がいつものように軽い口調で問いかける。しかし、律樹に向けた目には、強い意志が宿っていた。


「まぁな。俺らは特殊だ。本来、陰で生きる者だからな。表のお前らに話して良いことと悪いことがある」

「秘密組織なんだ?」

「一応はな。だが、気を付けてんのは、こっちにじゃなく、お前らにとって良いことと悪いことの判断だ。知ってることが、必ずしも良いこととは言えねぇだろ」


律樹の表情は、真剣だった。それは、優香の響華に手を出したら許さないとでもいう警戒心に向けたものだ。


そんな張り詰めるような空気に耐えかね、響華が口を開く。


「協力させて欲しい。私に出来る事なら」


響華はユキの話から、律樹が神と関わる何かをしようとしていることを察した。それならばきっと律樹に協力できるだろう。


それに、律樹の事情を知った以上、力になれるのなら何でもしようと思ったのだ。だが、口にした理由は別の事。


「月姫も心配していたし、私の力は、神様の為の力だから」


そう言えば、律樹も頷くしかない。


「はぁ……仕方ない。なら、頼む」

「うん」


こうして、響華は律樹と夕輪神社へ向かう事になったのだ。

読んでくださりありがとうございます◎

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