21 待ち伏せ
2016. 6. 20
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響華と律樹、優香の三人は、沙河の家を出ると、真っ直ぐに夕輪神社へ向かった。
しかしそこで、思わぬ人達が待っていた。
「あっ、響華ちゃ〜んっ」
「早希?」
「親父……」
人通りの少ない神社。その前に二人の人物が離れて立っていた。
待ち合わせには向かない静かな神社の前。デートでもしようというような可愛らしい姿の早希と、難しい顔をして立っている私服姿の律樹の父親だった。
「あれ? 知り合いなの?」
「う、うん……早希なんでここに?」
早希は呑気な様子で、口を引き結んだまま立っている律樹の父親を見ながら駆け寄ってきた。
「だって、響華ちゃんならここに来るかなって。気になってたみたいだから」
「だからって、あんたいつからここにいたの?」
優香が呆れたように尋ねる。すると、早希は笑顔で答えた。
「そこは任せて。さっき着いたばっかりだよ。昼間から怪しい事出来ないじゃん。だからせめて夕方かなって。凄いでしょっ」
「あ〜……うん。早希ってそういう所あるよね」
「うん。凄い……」
勘で生きているようだ。無駄足になる事など考えてもいないのだろう。
「でも、そういう時は連絡して」
「え? あっ、そっか。メールすればよかったんだ。忘れてた」
「早希って、スマホ依存ないよね……」
「今日は充電大丈夫?」
「充電なら二日前に……あれ? 瀕死だった」
連絡手段を持っていても意味のない早希に、響華と優香は溜め息をついた。
そんな三人から数歩離れた所では、律樹が父親を見て固まっていた。
「……なんでここに……」
「……水鳴土御神に聞いた……お前が神の姿を見て、その力になる仕事をしていると……」
律樹は思わず舌打ちする。あの神ならば説教ついでに話すだろう事は予想していたのだ。
「その格好にも意味があると……家に帰らない事にも理由があるんだろ。なぜ言わなかった」
「言わなかったんじゃねぇ。言わせなかっただろ」
「……」
親子の気まずい沈黙。律樹を真っ直ぐに見つめる父親。その視線を受け止めきれずに目をそらす律樹。それを、響華達は静かに見守っていた。
しばらく動けずにいた二人だったが、律樹が歩き出す。
静かに父親の横を通り過ぎ、神社の階段へ向かう。だが、階段を登り始める前に一度立ち止まった律樹は一言告げた。
「危ねぇから帰れよ」
そして、そのまま振り返る事なく階段を登っていった。
その後ろを、それまで隠れていたユキが追う。
「あ、それじゃぁ、早希、優香。私も行くから」
「何言ってんの。あたしらも行くよ。響華だけじゃ心配だもん」
「え?」
「うんうん。さぁ、行っきましょ〜っ」
そう言って、優香と早希が響華の背中を押す。
「君たちっ」
階段を登っていく響華達に手を伸ばし呼びかけるのは律樹の父親だ。それに優香が答える。
「あ、おじさんも来なよ。大丈夫。離れて見てるなら問題ないって」
「ちょっと、優香」
「だって、響華だって気になってたんでしょ? 分かってるんだから」
振り向いて優香へと抗議すると、ウィンクを返された。
「それは……そうだけど……」
響華も、沙河の話を聞き、律樹と父親の関係があのままではいけないとは思っていた。
しかし、これから律樹がしようとしている事を見せてもいいものかどうかは迷う。
「それに、さっきおじさんが言ってたじゃん。神様に聞いたとかなんとか。それなら、これも神様のお導きって事になるんじゃない?」
どこまでもお気楽な優香だ。だが、あながち間違いでもないだろう。あの神が律樹の為にならないことを言うとは思えなかったのだ。
恐らく、律樹の父親も迷っていたのだろう。この場に来たのは、律樹と話し、その目で確かめたかったのではないかと思ったのだ。
それならば、これは良い機会だろう。
「うん……おじさんも来て。それでちゃんとあの人を見て欲しい。まだ一人になるには早いと思うから」
「……一人に……」
律樹はもう階段を登り切っていた。消えていく金髪の頭を見上げ、父親は一歩踏み出した。
「危ない所に君たちみたいな女の子だけを行かせるわけにもいかんしな」
そんな言い訳をしながら、階段を登り始める。
「素直じゃないところは、しっかり親子だね」
優香の余計な一言に苦笑しながら、響華達は階段を登っていったのだった。
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