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劔が煌く夜に  作者: 中村中
終章。
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33/36

王の凱旋。

風の國。


思っていたよりも案外あっさりとたどり着くことができた。


それもこれも道中出会った、もう名前も顔も忘れてしまったあの人らのおかげであることは否めない。


そうして今、風の國と書かれた門をくぐり、街の中心にそびえ立つひときわ高い建物へと歩いている。


「人がいませんね〜。」


「仕方ねぇんじゃねぇの。だって今、朝の3時とか4時とかだろ。夜明け前だろ。むしろ誰かが歩いてたほうが驚きだと思うんだけどな。」


「それもそうですね〜。」


そう、今は朝の3時とか4時なのだ。


というかこの人たちは眠くないのだろうか。


俺はさっきからあくびが止まらないというのに。


『ここらが潮時かな。』


不意にロキが呟いた。


「何の話だ。」


『そのうちわかる。そんな事よりも、アレどう処理すんの。こっちに向かって来てるけど。』


ある方向へロキが指をさす。


そちらの方向へ視線を向ける。


そこには何か、強大な存在感を放つ者がいた。


その影の数、三つ。


夜明けが近いらしいせいか、空が白み始めてきている。


おかげでそこに何者かが存在している事はわかったが、顔や姿成りは全くと言っていいほど判別できない。


「おい、いきなり立ち止まるな。てかお前はさっきからいったい何を見て…?

な…!!」


佐々木さんも気付いたようだ。


「二人ともいったいどうしたんですか〜。わかった〜、私を騙そうとしてるんでしょ〜っ!二人ともひどいですよ〜っ!」


正直、天然をかましている春日井さんに構っている余裕などなかった。


視線を外せばその瞬間、命を絶たれる気がするからだ。


気がする程度のものじゃない、確実に殺される。



「おうおう、ほんとにここにゃあいつらしかいねぇぞ。これはちとやりすぎなんじゃね?」


「邪魔が入っては困るからな。」


「邪魔なんぞ入るか?」


「念には念を、だ。儂が知っている限りでは30%くらいの確率で起こっている。そもそもここでは本来、何が起こってもおかしくはないだろう?」


「…ある程度は常識が通じるだろう。」


「つーかよぅ、やるならあいつオンリーにすればよかったのに…。」


「それはできなかった。儂の力が及ばなかった、というのもあるが恐らくは…。」


「あいつの能力(キャパシティ)、ってところか?」


「…それは容易に想像できたこと。」


「どうせ抗って戦いとかになるんだろぅ?あーあ、痛いのは嫌だなぁ。」


「そうならないためにわざわざ説得内容(プログラム)準備(セットアップ)してきたんだろう。」


「…それが確実に効く保証はない。」


「その時はその時、だ。」


「つまり力づくでだろ?」


「そうなるな。」


「やだなぁもう…。」


そして、何者かの影たちは風の國の地に降り立つ。



「あれは、やばいぜ…、あたしら程度じゃソッコー落とされるぜ…。」


「弱気になったらそれまでですよ。そうならないようにするんですよ。」


と強がってはみたものの、実際には身体中が震えていたりする。


もちろんのことながら武者震いなどではない。


「フハハ、久しぶりだなぁ×××。いや、ここでは初めまして実親クン、といったところかい?」


影のうちの一人、背中に六枚の羽を携えし者が声をかけてくる。


というか今一瞬、ノイズのようなものが走って聞こえなかったような…?


「んー?

×××。×××ー。

あー、なるほどそういう世界設定(クリエイション)ね。」


「い、う、う、い、お…?」


横で何やら佐々木さんがブツブツと呟いている。


春日井さんはようやく彼らに気付いたのか、口をぽかんと開けている。


「…あまり余計なことは言うなLSF。」


「わかってるよ。まさかあれがなかったことにされてるなんて驚きだったが。」


『どうしてお前らが出張ってくる?』


「ふは、お前何その姿。それもアレか、世界設定(クリエイション)ってやつか?」


『知るかよ。俺が教えて欲しいくらいだね。てか質問に答えろよ。』


なんなんだいったい…。


ロキはこいつらと知り合いだったのだろうか。


明らかに顔見知り同士の応対だ。


「…お前が想像していることと恐らく一致している。」


『そうなのか…。』


そういうなりロキは姿をくらました。


「おい、どこ行くんだよっ!?」


それからしばらく、どれだけ呼びかけてもロキが姿を現すことはなかった。


「じ、く、う、い、お…。」


佐々木さんは未だブツブツと何かを呟いている。


たぶん先ほどの、背中に六枚の羽を携える者が口に出せなかった単語の解読をしているのだろう。


空が完全に明るくなった。


朝が来たのだ。


新しい一日の訪れであると同時に、俺たちにとっては闘いの訪れである。


「で、儂らは別にお前らと諍いに来たのではないのだ。」


「それは嘘ですよ〜。あなたたちが何者かは知りませんが相当高位なお方の様子。そんな方達がこんなところまで来て争いに来たのではない、とかなんとか言っても説得力に欠けますよ〜。」


さっきまでぽかんとしていたと思えば、次の瞬間にはこんなまともな発言をするのである。


「さっきの単語、わかったぜ。」


佐々木さんは自分で納得のいく答えが出せたのか、その顔は実に晴れ晴れとしている。


「え、マジ?」


「じくふりど。そして口の動きから考えて伸ばしがじとくの間、りとどの間に入る。すなわち、ジークフリード。」


「…ぃぎぃっ!?」


突然、凄まじい痛みが頭に走る。


周りの様子を見ている余裕もなければ会話を聞いている余裕もない。


だがその痛みはほんの数秒で治まった。


「やはりダメだったか。娘、よく解読してくれたな。褒めて遣わす。」


「あぁ!?」


「うーわー、やっぱこうなるんじゃん。無駄に期待なんかさせんなよぅ…。」


「…文句を言っている暇はないぞ。」


「何の話をしているんですか〜?」


「おい実親、覚悟はできてんだろぅな?」


「何の、話だ…!?」


さっきの痛みの名残がまだ頭の中にかすかに残っているためか、声が上ずってしまった。


「お前からしたら俺らは敵同士だろ。だったらやることは決まってんじゃねぇか。」


「あたしらをのけ者にして話進めてんじゃねぇぞクソ野郎どもが。」


「…威勢だけは一人前だな。」


「んだとコラ!?

表ぇ出ろボケナスが。フルボッコにしてやるよっ!」


「…威勢だけにならないよう願っている。」


明らかに機嫌を損ねて冷静さを失った佐々木さんと対峙するのは、片手に矛を持つ者。


彼らが何者であるかなど、今の俺たちには知る由もない。


だからあえて俺はこう発言する。


「何故かは知らんのだがもう知っているみたいだな、俺の名前を。だから俺から名乗ることはしないぞ。」


「なにが言いたい?」


「戦の前には互いに名乗るのが礼儀だろう?違うか?」


「そうですね〜、そうしましょう〜。私、倒した相手の名前がわからないのは嫌です〜。」


「フハハ、面白い。俺らのことも忘れているのか。まぁいい、名乗ってやろう。俺の名はルシフェル。天使どもの先導者だ。」


背中に羽を携えている者が名乗る。


「おいおい、安請け合いもほどほどにしろ、といつも言っているのだが。お前が名乗ったのなら仕方ないな。

我が名はゼウス。全知全能の神と呼ばれし者だ。」


三人の中で一番歳をとってそうに見える者が名乗る。


「…バァル。悪魔の王。」


矛を持っている者が名乗る。


「春日井美嗣です〜。ただの人間ですよ〜。てかなんでこんなところに三界の王が集うんですか〜。」


「佐々木輝々だ。バァルとやら、覚悟はできてんだろうなぁ!?」


「…こっちのセリフだ。」


バリッ、という音とともに佐々木さんとバァルの姿がその場から消えた。


「其奴はお主に任せるぞルシフェル。ワタシはこのお嬢さんの相手をしてやる。それでいいな、小娘?」


「誰が小娘ですか〜っ!流石の私もブチ切れなわけですよ〜。成敗してくれるわっ!」


春日井さんのキャラがここにきて崩壊してしまった件について。


というか大丈夫なのだろうか、女子二人は。


どうあっても殺られて欲しくない。


勝ち負けはどうでもいいからせめて生き延びて欲しい、と思う自分がいる。


「あ、そうだ実親クン、コレ。キミに返すの忘れていたでござる。」


と手渡されたのは、自分の携帯電話だった。


「あれ、これどうして…!?」


「渡すべきだと思いつつも結局ずっと忘れていたでござる。すまない。」


わざわざ持ってきてくれていたのかこの人は。


どのボタンを押しても画面が点かない。


電池切れであることは明白であった。


それよりも気になるのはそのござる口調なのだが。


今までの春日井さんと今の春日井さん、どっちが本当の彼女なのだろうか。


「では行こうか、ジジィ。」


「ふふ、お別れの挨拶はもう済んだのかな?なら行くとしようか。

それに貴殿も威勢だけはいいようだな。」


「背後にはせいぜい気をつけることでござるよ。」


「笑わせるなよ。」


瞬きの一瞬のうちに二人はどこかへ消えてしまった。


まさに一瞬の芸当。


というか佐々木さんも春日井さんもどこへ行ったんだよ…。


「残ったのは俺とお前か。まぁ、俺らのうちの誰が残ってもお前は一旦、(バラ)すがな。」


もうこの人(いや、人なのか…)、俺のことをぶち殺す気満々じゃないっすか。


どうあっても戦いは避けれないとは思ってましたがここまで来ると逃げたくなってきますね。


実力の差がありすぎることくらい俺でもわかる。


『ビビってんじゃねぇぞ。お前はお前にしかできねぇことをやればいいんだよ。』


いきなり姿を現したと思えばアドバイス的なものを言ってくれた。


俺にしかできないこと…?


『あいつは速度重視の一発屋タイプだ。だから惑わされずに攻撃だけを止めればいい。』


「そんな無茶な。てかなんでそんなこと知っているんだよ!?」


「ロキ、とか言ったっけあんた。そう、人間の横でふわふわして浮いているあんただ。お前はもしかして、今はただの封印記憶(バックアップ)なんじゃねぇのか?」


またわけのわからない単語が投げかけられる。


しかしながら、俺にはわからなくてもロキには理解できているようなのだ。


『おいおい、ここでそれを言わせるかね。もっとも今はまだ、明かせねぇけどな。まぁ、それに俺も割と最近に記憶(データ)が戻ってきたんだ。答えられなくても無理はない、とでも思っててくれ。』


「そうなのか、そうなのだろうな。つまんねぇヤツだな。」


本当に一体なんの話なのだ。


全くもって理解ができん。


『大丈夫だよサネ。こいつぁ今のお前に関係あって関係ない話だから。気にするこたぁねぇよ。』


意味がわからない。


というかそういう言い方をされると余計に気になるのだが。


「あれこれ言ってグダグダしててもしゃーねーし、そもそもあいつらに顔向けできねぇ。さっさと始めますかね、実親サン?」


明らかに挑発してきている。


だが俺には俺の、プライドってものが一応あるのだ。


だからここは乗ってやる。


「確かにな。女子だけ戦わせて俺は何もしないなんてそれこそ人間としてどうかしてるし。まだわからないことが多すぎて正直アレだが。それはあんたをぶちのめしてからゆっくり聞くとするわ。」


「できたらいいなぁ?クックック…。」


「ほざけ。」


ダンッ、と音を立て砂煙を起こし、二人同時に相対する相手の懐に向かって全力で飛び込む。

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