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劔が煌く夜に  作者: 中村中
日常の崩落。
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始まり。

「最近のラノベもアニメもワンパターンだよな?お前もそう思わないか?」


俺は自分のベッドの上で足をパタパタさせながら、何もあるはずのない空中に話しかける。


しかしそこにはふわふわと浮かぶ者がいた。


俺の視線は両手で掴んでいる小説と、さっきから音と映像を垂れ流しにしている携帯に向けられたままである。


『んなもん知るかよ。見たことねぇよ。』


「はは、違いねぇ。」


笑いながら俺は言う。


こいつが俺に取り付いたのは今から三年ほど前のことである。


いきなり目の前に現れたのだ。


当初はわけがわからなかったが、今はもう慣れた。


慣れって怖いな。


「ラノベの主人公はみんなハーレムルート歩んでるクセに誰の好意にも気付かないしさ。アニメのキャラはみんな同じ顔で、髪の毛の色で見分けてるようなもんだろ。」


『そういう愚痴は俺じゃなく制作会社に言えよ。てか、それはお前の主観であって誰もが思ってることではないと思うぞ。それにどの作品も同じパターンではないだろ。ハナから否定してかかるなよ。』


「なぜそこまで言い切れるんだ?」


『いやだって飽きるじゃん、同じパターンばっかだと。その辺はお前のほうがよくわかってんだろ。』


「あぁ、お前よりかはわかってるつもりよ。」


『へっ、そうだといいんだがな。』


ははっ、と笑いながら俺の周りにふわふわと浮かぶ幽霊は言う。


「あーあ、なんか飽きたなぁ…。おもしろいことねぇかなぁ。」


うつ伏せに寝転がっていた俺は読みかけの小説を閉じ、仰向けになる。

目線の先には全身黒タイツのような服装の、空中に浮かぶ、所謂幽霊。


『俺の存在が既におもしれぇことだろうが。』


「まぁそうなんだが。お前誰にも見えねぇし、もう慣れちまったんだよ。てか自分で言うなよ。」


三年も一緒にいれば流石に慣れる。

というより、それが日常と化す。


はぁ、とため息をつく俺。


こいつが俺以外に見えないのは既に実証済みである。



ウチの近くのスーパー丸井で、こいつと初めて一緒に買い物をしていた時のことだ。


俺はまだ、こいつが周りに見えないことを知らなかった。


だから周りの目を気にせずに、横に浮かんでいるこいつと話していた。


スーパー丸井にいた買い物客の一部のおばちゃんたちはこちらをチラチラ見ながらこそこそと話している。


そのおばちゃんたちはウチのご近所さんである。


「あ、どうも。」


いつもながら俺は挨拶をする。


「あぁ、はい。どうもね、サネちゃん。」


挨拶は返されはしたが、気持ち悪いものを見るような目で見られた。


俺は幽霊と目配せをして一言。


「『あれ?』」


数日後には、俺に幽霊が憑いているという噂が流れる始末。


わざわざウチにまで来て真剣に精神病院を勧める人もいた。


おばちゃんたちも心配してくれているのだろうが、大きなお世話だ。


当たり前だが、精神病院の件は丁重にお断りした。


おばちゃんたちの噂の回りの早さは侮れないな、うん。


そして、噂が一概に間違いだとは言えないのがまた何とも悩ましい。


その一ヶ月後にはウチの近所だけじゃなく、小学校の登校地区一帯に噂が広がっていたのは言うまでもない。


この時俺は悟ったのだ。


横に浮かんでいるこいつは俺以外の目には見えないのだと。



それから三年も経った。月日が流れるのは早いな。


今はもう、俺が幽霊憑きだという噂も精神病院を勧めるおばちゃんもいなくなった。


おばちゃんたちもきっと慣れたのだろう。


その件があってから俺は幽霊憑きという噂を逆手に取り、人気の多い場所でも平気で俺に憑く幽霊と会話をするようになったからだ。


いわゆる、開き直りというやつである。



「なんかおもしれぇことないかなぁ。」


俺は再びため息をつき、目を閉じる。


「おもしろいこと、ですか。紹介して差し上げましょうか。」


携帯からは未だに音と映像が垂れ流しになっていた。


“常盤中学校のVer.5.0、だと…!?”


そんな音声だけが部屋を包む静寂を破っていた。

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