第一話 誘蛾灯
オリジナル曲を小説にした短編集「ウタカタ万華鏡」。
シンガーソングライターである筆者が、自身が作曲したオリジナル曲を小説化。
仮想中華の国”神倭國”を舞台に繰り広げられる、人間と神と妖の物語へようこそ。
ジジジ、とガス燈が音を立てた。
周りに群がる其れ等がばさばさと羽を動かす度、ガス燈はまるでまばたきでもするかの様に、その灯りを瞬かせた。其れ等は互いにぶつかり合うのも厭わず、鱗粉を撒き散らしながら宙を舞っている。羽と羽が擦れて無情に散っていくその粉は、さながら本体の行末を暗示しているかの様だ。
此処は、幽世と現世を分かつ場所。
ガス燈の頭上彼方では、不気味なほど黄色い月が弧を描いて笑う。まるで、闇が笑っているかの様に見えるその切れ目は、時が来ればやがて満ち、あらゆる不可思議を起こす引力を持ち始める。
ガス燈の周りを舞っている其れ等––––ばさばさとぶつかり合いながら、その羽音を増す––––たくさんの蛾達は、私を入れてよ、私を選んでよ、とでも言いたげに光源へ向かっていく。そのうち、運よく願い通り飛び込めた蛾は、その熱すぎる光によって焼き尽くされてしまうのだが。
このガス燈は、幽世と現世を分かち、そして繋ぐ役目を果たしている。草木も眠る、丑三つ時。唯その一瞬のみ、異界への門は開かれる。たまたまその瞬間に飛び込んだ蛾は、一体如何なるのであろうか。今まで様々な生き物たちが、誘蛾灯の餌食になってきた。焼き尽くされるよりもっとおぞましく、不可思議な彼の世界。幽世と現世。
今日も各世界では、生けるモノも死せるモノも、人も人ならざるモノも、其々の暮らしを守り、あるいは他者の暮らしを破壊し、横行跋扈している。
此処は、幽世と現世を分かつ場所。
これから語られる物語は、この不可思議なガス燈を境目とした二つの世界を舞台に、繰り広げられる。
※この物語は、シンガーソングライターである筆者のオリジナル曲を小説化したものです。
↓元になったオリジナル曲はこちら↓
誘蛾灯/四月一日 青【オリジナル】
https://www.youtube.com/watch?v=NxQc5aTArdQ




