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「ブロッサムと身分証の発行をするから、少し待ってもらえるかい。」
「それなら、村を探索してくる。」
「かしこまりました。一時間ほどで出来上がりますので、その頃にまたお越しください。」
「分かった。」
行こうか、とアスターに言われて個室を出る。これから村の探索だ。
メリから出てリラとソラ、フローラと合流する。ルルーは残念ながらお留守番だ。この辺りなら危険は無いだろう、とアスターが判断したので、ルルーは周辺へ散歩に出ているのだ。
「ユリシア、見たいものはあるか?」
「うーん……。」
服や装備は自分のスキルで作っていて、アスターに見てもらったら服は上質で丈夫だし装備も私にとっては丁度良いとのことで、お墨付きをもらっている。食材もそこそこ豊富にある。ポーション等の薬関係も、イルリスの森探索中にある程度の数を作ってあるので、どんなものが売っているのか参考程度に見ておきたいくらい。
うんうんと唸りながら考えていると、苦笑いをしたアスターに言われた。
「ユリシアはスキルでなんでも作れるし、イルリスの森で貴重な植物やらを採取しているから、薬関係も揃っているか。見せてもらったが、暫くは買う必要もなさそうだったな。」
アスターが見てそう言うなら、問題ないみたいだね。
あ、それなら……。
「それはよかった。そしたら、調味料とか欲しいかも。どんなものが売っているか気になるし。」
「スパイスのことか?それなら先に見ておこうか、こっちだ。」
手を差し出され、そっと重ねるとそのまま繋がれる。何だか、お兄ちゃんが妹の面倒を見ているような感じ。
私は見た目が幼く見えるみたいだし、逸れないように、的なやつかな。
「で、肝心なお金の使い方だが、これがこの世界のお金でペタルと言う。基本的には各国共通の通貨で、下から銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順で値が上がっていく。」
『地球でねぇねが使っていた円で換算すると、1ペタルが10円と一緒だよ。日本円で言えば1円単位が無くて、10円からの計算になるね。』
「成程。計算はしやすくなっているかな。」
『アスターも、向こうの世界の話は面白いんじゃない?』
「そうだな、ソラ。聞いていて楽しいよ。」
そっか、リラが地球のものと結びつけて説明しているのは、アスターの研究のためでもあるのね。
リラとソラ、フローラはお店の前で待機してもらう。お店に入ると、色んな匂いがしていた。文字を教わっていたのでなんて書いてあるか読めたし、日本にあった醤油や味噌は無かったが、種類は豊富でしかもあちらの世界と変わらないので、どんなものか想像しやすかった。
金額は日本で買う場合と比べると格段に安く、国によって多少の差はあるものの、物価はどこの村でも同じらしい。
「ユリシアの作る料理はどれも美味しいからな。どんなものができるか楽しみだ。」
「逆にアスターはルルーとふたりで旅をしていたのに、何故あんなに料理ができないのか不思議だわ……。もう少し頑張りましょうね。」
ニコリ、と笑ってアスターを見れば、若干顔色を悪くして分かった、と言った。
私は元々料理が好きではなかったけれど、この世界に来てリラとソラにも作るようになったので楽しくなってきたのだ。しかし人数が増えて大変なことに変わりないので、出来れば手伝って欲しいのだ。
私はまだお金を持っておらず、アスターが出してくれた。私もしっかり稼げるようになろう。