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第21話上辺だけの関係

 限りある魔力の中でどうやって魔法をこの無人島生活で生かしていけるか。まずは二人がどんな魔法を使えるか尋ねてみた。


「ボクは基本的な属性の魔法は全部使えるよ。特に得意なのは光と火と水かな」


「教えるのは不本意じゃが……我は先ほど言った転移魔法と闇の魔法じゃな」


 やはりポロは勇者なだけあって、かなり万能だった。チビィもいかにも魔王らしい感じだが、俺が目につけたのは転移魔法だった。


「なあチビィ、あの山もそうなんだけど転移魔法って具体的にどんな魔法なんだ?」


「我が認識できるものをこちらに引き寄せることができる魔法、という感じじゃな。だが、あの引越しでほぼ魔力を使ってしまったから元の世界から何かを呼び寄せる事は難しいのう」


「チビィが認識できるもの、か」


 つまり彼女にこの島にあるものをわざわざ人の手を使わなくてもこの拠点に運ばせることができるという事だろうか。やってみないと分からないが、大きいものとかを運ぶ時とかはこれを有効活用できるかもしれない。


「ポロの方は基本的な属性と言ったけど、今言った以外には何があるんだ?」


「うーん、あとは土の魔法、草の魔法とかかな」


「その草の魔法というのは?」


「こういう魔法だよ」


 そう言ってポロが魔法を使うと、地面から蔦が生えてきた。


「なるほど。これって抜き取って使えたりするのか?」


「勿論。あくまでこれは自然で生えてきたものだからね。この蔦、ボクの世界にはなかったものだし」


「じゃあこれで木材を結び合わせれば、拠点の骨組みは安定させられそうだな」


 本当は最初から気づいてたら少しは作業も楽になったんだろうけど、仕方がない。


「水は川で掬って来た方が消耗を避けられるだろうし、使うことになるのは火の魔法と草の魔法、あと転移魔法だな。これで少しはここの生活も快適になるぞ。みんな」


『……』


 そう俺が結論づけて皆に言うと、なぜか今会話していた三人とユフィとユズ以外が黙って見入っていた。


「ど、どうしたんだ?」


「いや、当たり前のように話をしているけど」


「ま、魔法なんて私一度も見たことなかったので」


「ファンタジーの中の話だと思ってた」


「言われてみればそうだったな」


 俺も完全にファンタジーの世界の中だけのものだと思っていたけど、今のこの状況こそがそのファンタジーなんだと改めて痛感させられる。


「ユフィ達は驚かないんだな」


「ツバサさん、私一番最初に魔法を使ったの忘れていませんか?」


「あ、確かにそうだった!」


「駄目ですよユフィ様、無闇に魔法を使ってしまっては」


「分かっています。だからあれから一度も使っていませんから」


 と思ったけど、すっかり忘れていたが初日にユフィが魔法を使っていたのを今更思い出した。でも何となくだけどユフィに魔法を使わせるのは危ない気もするので、多分この先も使うことは多分ないと思う。


「そういえばキャトラ達のそれって魔法とかじゃないのか?」


「あるって話は聞いたことあるけど、アタシ達は生まれた時からこの身体だし、ツバサ達からしたらアタシ達のこれって魔法と一緒なの?」


「一般的に見たら魔法にも思えるし、そういう種族なんだなって思えたりもするよ。俺たちの世界にはそういう類のものは一切ないからな」


「ツバサ達の世界には魔法はないの?」


「ないな」


「ボクのような勇者も」


「いないな」


「我のような魔王も」


「いないな」


「ツバサさんの世界、どうなっているんですか?」


「どうなってるも何も、平和な世界だよ」


 むしろそんなのが存在していたら、間違いなく日本どころか世界が終わりを迎えている。戦争は色々なところで起きているけど、他の世界と比べたら地球って平和なんだなって思ってしまう。


「と、話が脱線したな。とりあえずポロとチビィの魔法を少しでも有効活用できれば、ここでの暮らしも少しは楽になる。二人とも協力してくれるか?」


「分かったよ」


「気は進まぬが……分かった」


「ありがとう、二人とも」


 無人島生活五日目、色々な問題が浮かび上がってきたけれど、少しだけ、ほんの少しだけ状況が良くなった、そんな気がした。


 ■□■□■□

 夜も更け皆が寝静まった頃。誰かが動いた気配がしたので、俺はこっそりその後を追った。


「こんな時間に何してるんだ? ポロ」


「ツバサ……」


 追った先で待っていたのはポロだった。彼女は勇者の剣を素振りしていた。


「こんな時間に特訓か?」


「うん。少しでも体を動かさないとなまっちゃうから」


「流石は勇者様、だな」


「茶化さないでよ。ボクだってなりたくてなったわけじゃないんだから」


「なりたくなかったのか?」


「当たり前だよ。世界を救う使命だなんて、ボクにはあまりにも重すぎるから」


「それは……そうだよな」


 勇者は住む違う世界が違っても憧れの存在だ。

 しかしその憧れの存在になれたとしても、勇者が背負う期待やプレッシャーに耐えられなくなる人もきっといると思う。

 そんなものとは無縁の世界に住んでいる俺が言っても、意味を持たないかもしれないが、ポロが言っていることは理解できる。


「世界を救ってくれだなんて、一人の人間じゃ背負いきれない使命だもんな」


「そういう事。皆ボクに期待してくれるのだけど、かえってそれがボクにとってプレッシャーになる。ましてや魔王があんな姿だなんて、最初は信じられなかった」


「確かに。あんな小さな子が魔王だなんて俺も信じられない」


「信じられぬかもしれぬが、それが事実じゃツバサ」


 後を付いてきていたのか、チビィが突然会話に入ってくる。


「今はこうしておるが、我らは敵同士。そして世界の命運がかかっている者同士じゃ。ポロに果たさなければならぬ使命があるように、我にも世界を侵略する意義がある」


「意義?」


「今は語る必要などない。しかし覚えておけポロ。我はいつでもお前の命を狙っていると」


「お前、こんなところで何を物騒なことを」


「分かっているよ」


「ポロ、お前……」


「ボク達は敵同士。上辺だけの関係で全然構わない。チビィが決着をつけたいというなら、ボクはいつでも受けて立つ」


 更に剣を振りながらポロはそう答える。それに対してチビィは何も答えることなく、その場を去っていった。


「上辺だけの関係、か。それはチビィ達に限った話じゃないのかもな」


「え?」


「俺達は今こうして一緒に暮らしているけど、それはこの島で生き残るためだけの関係。仲間、って呼ぶのは無理があるのかもな」


「そんな事ないよ。ボクはツバサを仲間だと思っているし」


「そう言ってくれるだけありがたいよ」


 忘れてはいけない


 俺以外皆望まない形でこの世界にやって来たことを


 忘れてはいけない


 皆この島から出たがっていることを


 忘れてはいけない


 俺達の関係は、友人とかではなくあくまでこの島から脱出するための協力関係であることを。


(チビィの言っていた言葉、あながち間違ってないのかもな)

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