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第39話:最強の幼女、村を歩く

【第二部 開幕】


お待たせいたしました! 本日より、第2部「建国・防衛編」スタートです。


最強の古龍を倒し、平和なスローライフが始まる……と思いきや? 新たな家族となった元・古龍の幼女『ベニ』は、想像以上のトラブルメーカーでした。


朝から修羅場、そして世界の情勢もきな臭くなり始め……。 タケルの苦労はまだまだ続きそうです。

古龍討伐から一夜明けた朝。 俺は、胸のあたりに感じる不自然な重みと温かさで目を覚ました。


「ん……ぐ……?」


目を開けると、目の前に燃えるような赤髪があった。 俺の布団の中に、昨日眷属にしたばかりの元・古龍、**ベニ**が潜り込んでいたのだ。 しかも、全裸で。俺に抱きついてスヤスヤと寝息を立てている。


「……おい、起きろ」 「んむ……。ぬ? なのじゃ? 貴様の体温、ちょうど良い暖房じゃな……」


紅が目をこすりながら身じろぎする。 その時だった。


「タケル様、朝食の準備が……」 『主様、おはようございま……』


ガチャリとドアが開き、クラウディアとシルヴィが入ってきた。 そして、布団の中で半裸の俺に抱きつく幼女を見て、二人の動きが凍りついた。


「……」 『……』


「ち、違うぞ! これは不可抗力でだな!」 「……タケル様。いくら英雄でも、幼女に手を出すのは騎士道に反します!!」 『主様? そのトカゲ、今すぐミンチにして差し上げましょうか?』


部屋の温度が一気に下がる。 だが、当の紅はあくびをしながら、さらに俺の胸に顔を埋めた。


「……ぬぅ。うるさいのう。我は今、魔力たいおんを補給しておるのじゃ。たかが虫けら如きが、我の安眠を妨げるでない……」


「「ッ……!!」」


火に油を注ぐとはこのことだ。 朝から修羅場だった。誤解を解くのに、貴重な朝の時間を一時間も費やしてしまった。


   ◇   ◇   ◇


「腹が減ったのじゃ! 魔力が足りぬ!」


誤解が解けた後、今度は紅が騒ぎ出した。 俺たちは彼女を連れて(シルヴィが背後から睨みをきかせながら)、村の中を歩いていた。


「いいか紅。ここは俺の村だ。勝手なマネは……」


俺が言い含めようとした瞬間、紅の目が輝いた。 牧場エリアにいる巨大な猪(家畜用)を見つけたのだ。


「肉じゃ! 生贄じゃ!」 「ブヒィッ!?」


紅が小さな口をありえないほど大きく開け、丸呑みしようと飛びかかる。 俺は慌てて首根っこを掴んで止めた。


「待てバカ! それは家畜だ! あとで焼いて食わせるから生はやめろ!」 「ぬうぅ……ケチな男よのう」


さらに進むと、今度はドワーフたちの工房から熱気が溢れていた。 紅が鼻をヒクつかせる。


「ほう、美味そうな『火』の匂いがするのう」


彼女は工房へダッシュすると、あろうことか魔導炉の排気口に顔を近づけ、炉の魔力(熱源)を吸い込み始めた。


「お、おい! 火力が落ちていくぞ!?」 「なんだあのガキは! せっかく安定させた魔導火を吸ってやがる! 止めろぉ!!」


ドワーフの職人たちが血相を変えて叫ぶ。 炉の火は彼らの命だ。それをスナック感覚で食われてはたまらない。


「やめろってんだろ!!」


俺は紅を引き剥がし、ズルズルと引きずって広場へ戻った。 まったく、とんだ問題児だ。


「放せ! 我は古龍ぞ! この森の全ての物は我の所有物じゃ!」 「今は違う。お前は俺の配下だ。この村のルールに従え」 「断る! 腹が減っておるのじゃ! 煙を寄越せ!」


紅がふんぞり返って俺に命令してくる。 なるほど、まずは上下関係を教える必要があるな。


「……そうか。なら、**『おあずけ』**だ」 「ぬ?」


俺はタバコを取り出し、自分の口にくわえて火をつけた。 そして、紅の方ではなく、あえて反対側へ向かって煙を吐き出した。


「すぅー……ぷはぁ。うめぇ」 「……ッ!?」


紅の顔色が変わる。 彼女の今の体は、俺の煙(魔力)で構成されている。定期的な供給がないと、強烈な飢餓感と欠乏感に襲われるのだ。


「よ、寄越せ……その煙を、我に……」 「ルールを守れない奴にはやらん」


俺は無視して吸い続ける。 紅の小さな体がガタガタと震え出し、目元に涙が溜まっていく。


「うぅ……くるしい……力が、抜ける……」 「反省したか?」 「した……! 反省したのじゃ! 家畜も火も食わぬ! だから煙をぉぉ……!」


紅が俺の足にしがみつき、ボロボロと涙を流して懇願する。 プライドの高い古龍が形無しだ。


「よし」 俺は彼女の口に、煙をふぅーっと吹きかけてやった。


「んむっ……はぁぁぁ……生き返るぅ……♡」


紅はトロンとした顔でその場にへたり込んだ。 ……チョロい。 だが、これで少しは大人しくなるだろう。


   ◇   ◇   ◇


その夜。夕食の席で。 俺は大人しく猪のステーキを食べている紅を横目に、ヴァイスに今後のことを相談した。


「なあヴァイス。村も落ち着いてきたし、そろそろ東へ遠出(米探し)したいんだが」


俺の提案に、ヴァイスは酒を飲み干し、首を横に振った。


「却下だ、主。……古龍討伐の余波で、世界中がこの森に注目している。今、主がここを離れれば取り返しがつかないことになる」


ヴァイスがテーブルに地図を広げる。


「まず北の**『ヴァルゴア帝国』。先日、我々は彼らからドワーフを救出し、さらにドワーフ王国と同盟を結んだ」 「ああ、ガルドたちが頑張ってくれたな」 「うむ。だが、それは帝国にとって『ドワーフ王国との国交断絶』と『貴重な技術力の喪失』**を意味する。帝国の怒りは、その原因となったこの村に向けられているはずだ」


ヴァイスの目が鋭くなる。


「帝国とドワーフ王国は今、一触即発の緊張状態にある。帝国は軍を動かせないが、その分、**『少数の精鋭(スパイや暗殺者)』**をこの村に送り込み、技術の奪還や主の暗殺を企てるだろう」


「(なるほど……俺たちが戦争の引き金を引いちまったようなもんか)」


「次に南の**『オーレリア王国』。クラウディア嬢が生きているという情報は、いずれ漏れる。第一王子は必ず口封じに動く」 「そして西の『聖法皇国』**も、聖女の報告で沈静化しているとはいえ、狂信的な派閥がいつ暴走するか分からん」


ヴァイスは地図の「村」の位置を指でトントンと叩いた。


「周辺国は今、**『誰がこの森の主導権を握るか』**を虎視眈々と狙っている。……そんな状況で、主(核弾頭)がいなくなってみろ」


「……俺の留守中に、内部工作や奇襲で村が崩壊するってか」 「その通りだ。それに、もう一つ懸念事項がある」


ヴァイスの視線が、肉を頬張る紅に向けられた。


「彼女……『ベニ』の扱いです」


場の空気が張り詰める。 見た目は幼女だが、中身は世界を滅ぼせる古龍だ。


「彼女が『古龍の転生体』だと知られれば、世界中が『討伐』か『確保』に動き出すでしょう。今はまだ幼体で力も戻っていない。狙われるには絶好の機会です」 「確かに……。隠しておいた方がいいか」


「ええ。対外的には**『森で保護した竜人族ドラゴニュートの生き残り』あるいは『タケル様の隠し子(特異な魔力持ち)』**として通すべきかと」


「ぶふっ!? か、隠し子!?」 クラウディアがむせ返る。 だが、紅本人は満更でもなさそうだ。


「ふん、我はタケルの娘ではないが……まあ、配下として可愛がられるのは悪くないぞ?」 「(お前は黙って食ってろ)」


「とにかく」 ヴァイスが結論づける。


「紅の力が安定し、各国の干渉を跳ね除けるだけの『盤石な体制』が整うまでは、主にはここにいてもらわねば困る」


ヴァイスの分析は完璧だった。 俺たちは強くなりすぎた。そして、目立ちすぎた。


「……分かったよ。しばらくは遠出はお預けだな」


俺はため息をつき、東の空――米のある島国の方角を見上げた。 米への道は遠い。 まずはこの「最強の村」を、誰にも手出しできない**「独立国家」**レベルまで盤石にする必要があるようだ。


「ま、やることは変わらねぇ。来る火の粉は払う。それだけだ」


俺が言うと、仲間たちが力強く頷いた。 俺たちのスローライフ(防衛戦)は、これからも激しさを増しそうだ。


(第39話 完)

最後までお読みいただきありがとうございます!


最強の幼女・ベニ、チョロかったですね。 しかし、軍師ヴァイスの分析通り、今のタケルたちの村は世界中から狙われる「火薬庫」状態。 悲願である「米探しの旅」に出るためには、まずこの拠点を誰にも手出しさせない『国』レベルまで盤石にする必要がありそうです。


次回からは、そんな注目されまくりの村に、各国の思惑(スパイや使者)が絡んできます。 もちろん、タケルたちは斜め上の方法で撃退・吸収していく予定ですのでお楽しみに!


【お願い】 「第2部も面白そう!」「紅ちゃん可愛い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、 ページ下の**【☆☆☆(評価)】や【ブックマーク】**を押していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!


感想もお待ちしております。 それでは、次回もよろしくお願いします!

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