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第26話 洞窟防衛戦線

今話は第三者視点です。

”邪神の使徒” と思しき集団の出現により、洞窟の入口付近は戦場と化す。突然の戦闘開始であったが、その動きは非常に統率の取れた物だった。


騎士団は各団長の指揮で動き、冒険者は遊撃隊として各隊のサポートに。事前に組む部隊を決めて親睦を深めていた事が功を奏した形だ。


(敵は手強そうだが、皆大丈夫そうだな。ならば後は、私がコイツの相手をすればいい)


「副団長。悪いが私はアイツの相手をしなければならん。部隊の指揮はお前に任せる」

「はっ!」


戦況が安定したのを確認すると、マイナは自身の部隊の指揮を副団長に任せ、改めて集団のリーダーらしき男に剣を向ける。


「お前の相手は私がしよう。他の者達では荷が重そうだからな」

「このゴザ様も、嘗められたもんだな。1対1(サシ)で俺に勝てると思ってんのか?」

「勝てるさ。自分の名前に様付けしてるような、奢った輩と一緒にしないでくれ」

「てんめぇ………! 上等だぁ!」


ゴザと名乗る男は手にした大剣を構えると、マイナへ急接近する。そして上段から剣を振り下ろし、真っ二つにしようとするが――――


「甘い!」

「っ!?」


大剣による一撃を、マイナは下段から片手剣を振り抜いて弾く。まさか自分より小さな相手が、自身の攻撃を力押しで止めるとは予測しておらず、ゴザは驚愕の表情を作る。

――――そしてその隙を、マイナは見逃さなかった。


「せいっ!」

「げごぉっ!!?」


マイナはゴザの腹部目掛けて蹴りを放つ。ゴザはボールの様に吹き飛び、ゴザの纏う黒い鎧――――強度を上昇させる魔法が付与された特別な鎧が、一撃で粉々に砕け散る。それに留まらず、蹴りの衝撃はゴザの体を突き抜け、内臓にも無視できないダメージを負わせた。


「ゲホッ! ゴホッ!」


ゴザは血を吐き出し、地面に這いつくばる。ひとしきり血を吐いたゴザは、腹部を抑えながらも立ち上がる。しかしその顔には、未だ困惑の表情が浮かんでいた。


「な、何だこの威力は!? 貴様、本当に人間か!? 見た目がそれなだけで、本当は天使の類じゃねぇのか!?」

「失敬な! 神の使徒たる天使様のお力は、この程度ではない! 私は正真正銘人間だ! ただちょっと力が強いだけのな!」

「ふざけんな! 見た所、てめぇのレベルは2000って所だろ? 今のパワーは2000の範疇を超えてるぞ! このオーガ野郎!」

「それは光栄だ。しかし、乙女に対して ”オーガ野郎” というのは、感心しないな!」


今度はマイナが、地面が割れる程の踏み込みでゴザに接近し、その首目掛けて剣を振るった。


「ちぃっ!」


しかし、かく言うゴザもレベル2000には到達している。そのレベル2000の身体能力を活かして、ゴザはマイナの一閃を紙一重で避けた。


「避けられたか」

「嘗めるなよ? 俺達だって修羅場は幾つも潜り抜けてんだ。ただの怪力自慢相手に負けるかよ」

「生憎、私はただの怪力自慢じゃないんでね。お前はここで仕留めさせてもらおう!」


そして、再び2人の剣が衝突する。事実上の大将同士の一騎打ちは、激化の一途を辿るのだった。



*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*



王国騎士団は、騎士団長を中心に陣を構え、敵を迎撃していた。


「団長! 敵の規模が判明しました! 敵兵の総数は約5000。レベルは平均1000程度。対する我々、王国騎士団のみでは兵数1000。平均レベルは500程度。数でも質でも負けています!」

「案ずるな。何も5000の敵全てが、我々の相手と言うわけでは無い。ほとんどは騎士団が相手をする事になるだろう。我々の担当分はせいぜい500と言った所だ。1人に対し3人がかりで挑め。敵の数を確実に減らし、尚且つ少しでも生存率を上げるのだ!」

『はっ!』


騎士団長モーリスの指示を受け、イゴール王国の騎士達は統率の取れた動きで、1人、また1人と確実に敵を倒していく。その連携は見事な物で、まるで芸術のような美しさだった。正しく、日々の鍛練の賜物であった。


とは言え、レベル500ではレベル1000に対し心許ないのも事実。既に多数の騎士が負傷し、戦線離脱を余儀なくされていた。しかし幸いな事に死者は出ておらず、戦線は未だ保たれている。それを可能にしているのは、1人の回復術師の功績が大きかった。


「すまないロン殿。兵士達の回復を任せてしまって」

「良いんですよ。僕はまだレベルが低くて、仲間と高度な連携が取れませんから。寧ろこんな僕でも、お役に立てて光栄です。こっちは任せてください!」


ロンが兵士の1人に手を翳すと、左肩から袈裟懸けに斬られた傷が、みるみる塞がっていく。これは完全にレベル500の範疇を超えたレベルの回復魔法であり、治療を受けた兵士達は感謝と共に驚愕の表情を浮かべた。


「すげぇ! あんな深い傷が、塞がってる…………!」

「助かった、ロン殿。これでまた戦える!」

「これが僕の戦いです。僕は腕っぷしはからっきしなので、そちらはお願いします」

「任せておけ!」


モーリスによる指揮と、ロンによる回復のお陰で、騎士団は格上の敵を相手に安定した戦いを見せていた。

――――しかし、その戦いに横槍を入れる者が現れる。


「あらあら、弱そうなのが集まってんじゃん?」


騎士達が声のした方を向くと、深紅に染まった大鎌を背負った女がいた。女は、手頃な獲物を見つけた肉食獣のようにギラギラと目を光らせ、騎士団に近付いていく。大鎌と同じく、真っ赤に染まったその目を見た途端、モーリスは背筋に冷たい物を感じた。


「団長! コイツも我々で――――」

「全員下がれ! コイツは俺1人でやる!」

「し、しかし――――」

「コイツは他のとは別格だ。お前達の敵う相手じゃない! 作戦通り、お前達は3人1組で敵を確実に減らしていけ。いいな!?」

『はっ!!』


迂闊に挑めば全滅すると感じたモーリスは、慌てて騎士団を下がらせ、自ら女の前に立つ。


「へぇ、あんた出来るね。あんたみたいな強い奴、嫌いじゃないよ。なんならシザース達の仲間にしたいくらい」

「断る。イゴール王国を守る事が、騎士団長である俺の務め。貴様が王国に仇なす者なら、ここで討ち滅ぼすのみ!」

「つれないなぁ。シザースは割と本気なのに、さ!」


(シザース)が大鎌を横薙ぎに振るい、斬撃が三日月型の赤黒い刃となって放たれる。


「っ!!」


本能的直観に従い、モーリスは斬撃を躱す。斬撃は立ち塞がる物全てを、豆腐でも切るかのように真っ二つにしながら進んで行く。


(あの大鎌、魔導武具(マジックウェポン)か。とんでもない威力だ。食らえば一溜まりも無い………!)


斬撃の威力にモーリスが戦慄していると、その様子に気を良くしたのか、シザースが大鎌について語り始める。


「キャハッ♪ 驚いてるね。コイツはシザースの相棒 ”怨魂鎌(グラジサイズ)”。伝説級(レジェンド)魔導武具(マジックウェポン)だよ。切れ味は見ての通りさ」

伝説級(レジェンド)…………まさか、国宝級の武器を持つ奴までいるとはな」


『最悪だ』と、モーリスは思った。モーリス、シザース、共にレベル1500程度。技量はともかく、力だけならば互角だった。しかし、相手が伝説級(レジェンド)の武器を持っているとなるとその限りではない。下手をすると、手も足も出ず敗北する可能性すらあった。


(まともに挑んでも勝ち目はない。だが、それがどうした。そんなものは、国を見捨てて逃げ出す言い訳になどならない! 寧ろ、わざわざ表に出て来てくれたんだ。これ以上の脅威となる前に、ここで始末してやる!)


「改めて聞くけど、シザース達の仲間になる気はない?」

「断る。国を守るのが俺の使命だと言った筈だ」

「そうか…………ならあんたも、怨魂鎌(グラジサイズ)の糧にしてやる!」


怨魂鎌(グラジサイズ)が唸りを上げて振り下ろされる。今度はたった一振りで5つの斬撃が生み出され、その全てがモーリスを切り裂こうと殺到する。


(一振りで複数の斬撃を放つとは、流石は伝説級(レジェンド)と言った所か。だが、いくら強力な攻撃でも、当たらなければ意味は無い!)


全神経を回避に集中させ、モーリスは5つ全ての斬撃を避け切る。そして一気にシザースとの間合いを詰め、手にしたランスを思い切り突き出す。


「甘いね」


シザースは目前に迫るモーリスを一瞥すると、自身とランスの間に怨魂鎌(グラジサイズ)を潜り込ませ、刺突を受け止める。流石に威力をゼロには出来ず、シザースはガリガリと地面を削りながら後退する。だが、結局後退させただけで、ダメージは入っていない。怨魂鎌(グラジサイズ)も無傷だった。


「っ! 流石、シザースが見込んだ男。腕が痺れるなんて、久しぶりだよ」

「痺れただけか………かなり(へこ)むな」


そう言いつつも、モーリスの目に諦観の色は微塵も無い。目の前の敵を討ち滅ぼすべく、思考を巡らせ始めた。

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