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実地調査

「あたしをダンジョンに連れて行きなさい」


 リーゼロッテが命令口調で言う。どことなく嬉しそうだ。


「え? どういうこと?」

「ダンジョン運営はハロン王国の重要な収入源なの。その実地調査をパパが許可してくれたわ」

「実地調査って……ダンジョンに行ったことはあるのか?」

「ないわ。だから行くのよ。王女としてダンジョンがどういうところか知ってなきゃいけないわ」

「なるほど。確かに。頑張れ」

「あなたも行くのよ」

「なぜ俺が?」

「それがパパの条件なの」


 エミリー一人でもめんどくさいのに、リーゼロッテも連れて行くのか。また野営か。見張りは立てられないだろうな。骨のお友達のことは国にはバラしたくない。量産して隣国へ攻め込めって話になりかねない。


 赤ら顔のクンツがちょっと噛みながら言う。


「ワッシと、このカイとタクヤ殿で護衛することが国王の条件ですっぞ」


 こいつらも一緒か……。


「昆虫は苦手だと言ってたじゃないか」

「昆虫がいないところにしなさい」

「それじゃ実地調査にならないじゃないか」

「……とにかくそうしなさい」


 カイが小声で俺にささやく。


「王女は未だ外出禁止が解けなくて、ダンジョン調査と言って外に出たいだけなんだ」

「カイ、聞こえてるわよ」


——仕方ない……


 本格的にダンジョンを攻略するには単独行で、ストレージハウスで寝泊まりする方がいい。しかし、王女にダンジョンの実態を知ってもらうのは何かしら攻略の助けになるはず。時間の無駄とは考えないようにしようか。


「準備に数日かかるだろ? 三日後からでいいか?」

「もう準備できてるわ。明日の朝集合よ」


 そうだろうと思った……。最近いろいろあってゆっくりしたかったんですけど……。



 王城を出て、飲み足りないのでバーに行く。


「ペプ、また面倒なことになったよ」

「ナア」

「ペプと二人で潜る方が楽なんだけどな」


 ペプは俺の肩に登り、俺の顎を舐め始めた。


 ストレージに物が入る機能については知られてるんだよな。ストレージで寝泊まりできる機能は絶対に隠すとして、あとはストレージから矢が出てくる機能とか、実質無詠唱で魔法が出てくるところも隠しておくか。


 ウイスキーを樽でテイクアウトした。エンチャントで筋力が増強されたので以前より楽に持てるようになった。明日までに仕込みたいことがあるので、ホロ酔いでバーを出て、路地裏からハウスに入る。



 黒いロングメイスを取り出す。ゆっくり作業しようと思ってたけど、急に仕上げなきゃいけなくなった。暫くハウスに入れなくなるだろうから。


 まずはメイスの真ん中に宝石を一つインプラントする。その上に二倍の効果のプロテクションをエンチャントする。ロングメイスはガッツリ硬くなる。


 次にロングメイスの先端に魔法を仕込む。先端には四枚のスパイクがついており、殴ったときに効率的にダメージを与えられるようになっている。スパイクとスパイクの間の部分は敵に接触しない。そのためここに魔法を仕込む。


 四ケ所をプロテクションのエンチャントの効果範囲から外す。プロテクションがかかってなくても素材が鉄なので、ここで殴ってもかなり痛い。しかし、もしエンチャント魔法陣に傷が付くと魔法が発動しなくなる。なるべく敵に当たらないようにする。



 仕込む魔法はライト、ファイアミサイル、ファイアボール、マジックミサイル改だ。


 魔法陣のエリアを大きく取れないため、それぞれ数発ずつしか撃てない。ファイアボールに限っては大きめの一発だけだ。しかし、数秒だけロングメイスをストレージにに入れればフル充填できる。


 ダンジョンでは、おそらく光る石ころを投げられない。きっといっぱい使うだろうと思って、ライトだけは小さい宝石をロングメイスの先にインプラントし、充填量を増やした。


 ロングメイスの石突側には、前のと同じくトゲを仕込む。石突のトンガリにはプロテクション、先端から手のひらひとつ分後ろのエリアから、先端にチューリップの花びらのように飛び出すトゲをエンチャントする。シークレットな必殺技だ。



 次にエミリー用の武器を作る。魔法の杖は、木製の杖の先端に何かの宝石が埋まっている。それだけだ。それがどうして魔法の威力を増幅するのかはわからない。きっと俺が魔法が使えないせいだ。


 それならメイスの先端に宝石を付けておけばいいんじゃないだろうか? インプラントなら取れることもない。


——インプラント


 俺は店で買ったメイスの金属部分に宝石を仕込んだ。宝石の周囲を除いて全体にプロテクションをエンチャントする。


 こんなんでいいなら、盾に仕込んでも使えそうだよな……。


——インプラント


 鉄の盾に、メイスと同様の細工をした。


 俺のマナががっつり減った。しかしもうひとつやっておきたいことがある。


 IDEを開いて、ビクターが撃ったエルフのマジックミサイルってやつを開く。アイコンを魔法エリアにコピーしてコードを開く。


 普通のマジックミサイルのコードに、何か別のコードが差し込まれている。これが何かは見ても分からない。


——エミリーかフィリーネに聞くか……


 残りのマナを使ってもう少し明日の準備をしてから、ペプと一緒にジンをチビチビやりながらやりながら寝た。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めて、朝のルーチンをこなした。街中なのでスパーはなし。この近所にスパーができる家が欲しい。広くなきゃダメだな。きっとお高いよな……王宮区画の近くだし……。


 ゆっくりシャワーを浴びて朝食をとって、ペプと一緒に出掛けた。



 冒険者ギルドに着いた。王女より先に着いた。遅れたら不敬罪とかになるかも知れない、セーフだ。


 受子ちゃんにフィリーネを呼び出してもらったらエミリーも来た。ちょうどいい。


「おはよう、聞きたいことがある。エルフのマジックミサイルってなんだ?」

「そんなのどこで知ったの? この大陸には無いはずよ」

「フライタークの手下だったビクターが俺に向かって撃った」

「ええ? 大丈夫だった?」

「ああ、無事だ」

「ビクターって、そんな魔法が使えるの?」

「いや、多分スクロールだろう」

「なるほどね、それなら納得よ。でも、よく無事でいられたわね」

「外れた」

「へえ……うまく避けたのね」

「それよりそのエルフのマジックミサイルについて教えてくれ……」

「ああ、そうね……理力よ」

「理力?」

「ええ。エルフのマジックミサイルには理力が混ざってるの。理力っていうのは、単純に言うと物を動かす力ね。だから人間にもダメージがあるのよ。それも消費マナに対してかなり威力が大きいの」

「便利そうだな。この国じゃ使わないのか? エルフの秘密の魔法だとか……」

「エルフじゃないと発音できない詠唱なのよ。ハーフエルフでも無理。純血のエルフじゃないと」

「そうか。知ってしまったら影のエルフに暗殺されるとかじゃないのか。安心した」

「あなた、エルフをなんだと思ってるの?」


 なるほどそういうことか。昨日IDEで見たコードブロックは理力ってやつか。魔法でいいんだよな。基本五領域とかに含まれてなさそうだが。


「五領域って、反応する魔晶石があって分かりやすいってだけのことよ。他にも魔晶石が存在しない魔法領域はあるわ。使える人間はいないでしょうけど」


 なるほど。俺が呼び出された召喚魔法とかあるしな。魔晶石ってのは、魔法の適性検査で使った石のことらしい。


「エルフ魔法ってスクロールでもかなり入手困難なものだけど、ビクターってやつはよく手に入れたわね」

「手広く悪どい事をやってたらしいからな。そういうコネもあったのかも知れない」


 交友関係を調べといた方がいいかな。もう死ぬからいいか。



 礼を言うとフィリーネは忙しそうに奥に引っ込んだ。エミリーが残った。


「タクヤさん、襲われたんですか?」

「ああ。まあ、余裕だった」

「それは良かったです」

「おかげで面倒な事に巻き込まれたけどな」

「なんです?」

「あるパーティと一緒にダンジョンに潜ることになった。一緒にくるか?」

「うーん……いえ、少し自分を鍛えたいのでパスします」

「そうか。ところで、新しい武器を作ってきたんだが……」


 俺はメイスと盾を渡した。


「使えるか?」

「ええ、これで魔法が撃てます! 盾でも撃てます!」

「良かった」


 そうこうしてると、ギルドの入り口からネズミが鎧を着て護衛を二人連れて入ってきて、真っ直ぐ俺の前に来た。


「リリーなのか……リリーはエミリーとは初対面だったな。リリー、こちらエミリー。エミリー、こちらリリーだ。今日パーティを組むことになっている」

「エミリーです。初めまして。でも、後ろの方たちは初対面ではないですね……リーゼロッテ王女の護衛の方たちですよね……えっ? ってことはリリーさんって……」


 いきなりバレた。当たり前か。カイの顔は一回見たら忘れない。


「タクヤさん、あたしも一緒に行きます!」


——どうしてだ……




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