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焼け石

 夢を見た。


 俺は森の中を歩いていた。するとストレージから勝手に光る石が出てきて、地面に落ちた。拾ってストレージに入れて歩き始めると、今度は二つ落ちた。無視して歩くと、どんどん落ちていく。眩しい。そのうち、焼け石が落ち始めた。枯れ葉に落ちて、火が出た。俺は火に包まれた。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めて、朝のルーチンをこなし、森で骨先生三体とスパーをした。


 新任の先生二体は、古参の骨先生に比べてどうも動きが悪い。古参の先生は俺と何十時間もスパーをして、動きを学習しているわけだから当然だが。


 骨先生が学習した記憶ってどこに蓄積されるんだろう? 魔法陣しかないよな。それ以外は骨しかなくて、脳味噌が無いんだから。ってことは、魔法陣をコピペしたら、ベテラン骨先生が量産できるのか?


 いったんハウスに入り、IDEを開いてやってみる。骨先生のウインドウを表示する。ウインドウの端に並んでるアイコンのどれかが学習した記憶のはず。俺はそのうちの一つ、なんかごちゃごちゃした感じのアイコンに注目した。中を開いても全く読めない。文字ではなくノイズの模様が並んでいる。


 別のスケルトンの同じアイコンを開いてみる。ぐちゃぐちゃな文字のようなものが並んでるのは一緒だが、骨先生とは違う内容だ。長さも短い。


——これだな


 俺は今見つけた骨先生の記憶アイコンを魔法領域にコピーし、新任骨先生のアイコンに上書きペーストした。そしてスパーを再開した。


 新任骨先生の動きが見違えた。そして骨先生三体にボコボコに殴られた。なぜか連携攻撃が始まった。


「ちょっと待て……」


 文句を言ったつもりだが、骨先生たちはピタリと動きを止めた。仕切り直しをしてスパーを再開したが、しばらくするとまたボコボコにされた。しかし、これを続ければ俺はもっと強くなれる……。



 スパーの後、風呂の中でぼーっとしていたら、ふと、焼け石を魔法で作ることを思い付いた。


 風呂とシャワーのお湯を作るのに、今はヒートのエンチャントをした魔術師用のスタッフで作っている。焼け石は使い途がなくなったので、攻撃に使いたい。俺はそういうところが貧乏性というか、無駄をなくしてしっくりしたい性分だ。


 だがその、今は無駄になっている、火にくべる普通の方法で作った焼け石よりも、エンチャントした方が高温になりそうだ。シュートで飛ばせば強力な攻撃になるだろう。なので試してみる。


 俺は風呂から上がり、リクライニングチェアーに座って、目を閉じてIDEに集中する。いつもどおりペプが俺の上に乗って顎を舐めているようだ。


 炎熱の剣の魔法陣を呪文エリアでコピーする。発動条件を即時、温度をマックスに設定。石ころにエンチャントして、マナを少し補充する。十秒程度発熱すれば充分だ。


 森で火事になるとヤバいので、河原へ移動した。



 試しに火に焼べて作ったノーマル焼け石を飛ばしてみる。俺の正面、胸の高さにストレージから焼け石を出して、触れずにシュートで飛ばす。うまい具合に火傷せずに飛ばすことができた。俺の右手だけ耐熱のマジックアイテムを着けているが、それでも火傷しそうなほど熱い。


 次に魔法の焼け石を飛ばしてみる。ストレージにから出した瞬間に発火する。シュートで飛ばすと、燃えたまま飛んでいった。地面に刺さり、しばらく燃えて、割れた。燃えた時間は五秒程度。まあ、充分だ。


 火力を最大にしたから、もしかしたら石が溶けるかもと思ったけど、そこまでの火力は無いようだ。ただ、発熱は瞬間に始まるが、石の温度が上がるのには数秒の時間がかかる。炎熱の剣の場合は敵に接触した時に発熱すればいいが、石の場合はなるべくアツアツになったやつをぶつけたい。予熱が欲しい。


 俺は戦闘時に使いやすいように、一秒発熱させた魔法の焼け石を、シュートで飛ばして数十発をストレージに仕込んだ。敵に当たるまでの時間を一秒として、発熱してから二秒、かなり熱いはず。


 ついでに焚き火で作った焼け石も、全て飛ばしてストレージに仕込んでおいた。



 昼近くになったので、エミリーと待ち合わせの店に行く。店に着くとすでにエミリーが待ってた。


「五日ぶりですね! どうでした?」

「うん、いろいろあった」


 フライターク伯爵の屋敷がシスターに燃やされた話、俺が忍び込んでお宝を奪ったことは伏せた。大アリ、触角が弱点の話。大アリに囲まれてスケルトン軍団に助けられた話は伏せた。


「いろいろあったんですね……。ところで、予備のローブを持ってきました」


 俺はローブを受け取ってプロテクションをエンチャントしようとして、ふと思いついた。耐熱も付けたい。二つの効果を同じ箇所に付呪するのは無理だ。あらかじめ一つの魔法陣に合わせることはできないだろうか? 魔法のコードが書き換えられるからできるかもしれない。それと、ローブをマナ水に浸してマナはの充填量を増やしておいた方が使いやすいだろう。ハウスの中でじっくり作業したい。


「強力なエンチャントをしたいので、これはいったん預かる」

「よろしくお願いします」


 俺たちはランチを済ませて武器屋へ向かった。



「腕輪が出来上がっております」


 魔石を組み入れた金属の腕輪だ。腕時計のベルトくらいの太さで、輪の一部が空いたCの形、いわゆるバングルだ。飾りや模様は無く、真ん中に青い楕円体の魔石が嵌って光っている。


 腕輪を受け取って、エンチャントして売るための武器を何個か仕入れて店を出た。


「エミリーは何のエンチャントがいいんだ?」

「攻撃魔法も考えたんですけど、ヒールは付呪できませんか?」


 その発想はなかった。俺には必要ないしな。


「わかった。こっちもいったん預かる」

「よろしくお願いします」

「ダンジョンのことなんだが、ヒルパートは今、大アリでブームになってる。明日の朝から空いてるフォートモーラ―に行こうと思うんだが、どうだろう?」

「わかりました。明日の朝に冒険者ギルドで待ち合わせしましょう」


 エミリーは高級ホテルの方へ歩いて行った。



 さて、俺は早速、仕事をすることにする。ダンジョン方面の森でハウスに入った。


「ペプ、一仕事するぞ」


 魔石が溶けたシャワーの残り湯を桶に入れて、エミリーから預かったローブを浸す。そしてストレージで真空乾燥させる。思いっきり匂いを嗅いでみたが問題ない。大丈夫だ。むしろちょっといい匂いがする。


 リクライニングチェアーに座るとペプが腹の上に登ってきた。気にせずIDEを開く。


 IDEの魔法エリアにある、プロテクションのアイコンをコピーして複製する。耐熱のアイコンを選んでコード画面を開き、まるごとコピーして、今度は複製したプロテクションのコード画面を開き、ペーストする。重複しているコードがあるので、何カ所か削除。そして完成。


――こんなのでいいのか?


 試しに俺のローブにエンチャントした。外に出て、骨先生に剣を持たせてスパーをしたところ、ローブのプロテクションはきちんと効いていて、斬られても全くダメージを受けない。次にストレージからファイアショットを俺に向かって発射したが、ローブに火は付かず、無傷だった。


「ペプ、うまくいったよ」

「ナア」


 エミリーのローブにエンチャントしたら、結構マナを消費した。それだけ強力でいいものができたってことだ。効果範囲は全身なので、ローブで覆われていないところにダメージを受けても大丈夫だ。そういう意味ではローブじゃなくて、アクセサリーでも全然よかったし、そっちの方が使いやすいだろう。ローブを洗濯したい時も乾くのを待つ必要がない。話の流れでローブになったからまあしょうがない。



 次に俺はバングルのエンチャントに取りかかる。付呪するヒールは俺がいつも使ってる、少し若返るバージョンでいいだろう。もしかしてエミリーは、ピンチの時の回復よりも若返り効果を狙っているのか? 特別なヒールだってことは言ってないが、俺が若返った秘密がヒールにあるのに気づいているんだろうか?


 バングルにヒールの魔方陣を貼り付けると、魔石が暗くなった。魔石はマナジェネレーターだ。発生するマナは魔方陣に貯蔵される。魔方陣は普段は不可視だ。魔法を発動すると現れる。もしくは俺がハウスにいる時に見ようとしたときだけ見える。魔方陣のマナが満タンになるとまた魔石が光り出す、はず。


 さて、俺のバングルには何をエンチャントするかというと……何も思い浮かばない。攻撃魔法はストレージショットの方が便利だし、回復は自前でできるし、プロテクションも充分だ。念のためピンチの時のために、エミリーと同じくヒールにしておくか。自分でヒールができないほどピンチになることがあるかも知れないし。変えたくなったら変えればいい。



 その後、コートとレザーアーマーのエンチャントを貼り直し、スケルトンのお友達を増やし、エンチャントアイテムのメンテナンスをしていたら夜遅くになっていた。ペプと晩酌してから寝た。


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