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エリザベス

 目が覚めたら新築の部屋の新しいベッドの上だった。朝のルーチンをこなし、骨先生とスパーをして、シャワーを浴びてから出かけた。



 目的地はヴァンパイアーズの地下神殿だ。時間が惜しいのでペプはお留守番、俺は駆け足で山を登る。後から気づいたが、王都の北門から回った方が道があるし近かったかな……。まあ、筋トレを兼ねてるのでいいか。



 一日で目的地の近くまで辿り着いた。日が暮れてから河原で鍋を煮込んだ。作っておいた出汁で、魚と野菜と牛肉を煮込んだ。煮えるまでペプと遊んだ。


 夜は、マジックアイテムに充填をしたり、売り物用の炎熱の剣を作ったり、光る石ころを作ったり、シャワー用のお湯を作ったり、ストレージから発射するファイアボールやアイスランスを充填したりした。つまりとりたててやることがなかったが、こういう地味な仕込みが大事だと思う。



  ◇◇◇◇◇



 夢を見た。


 俺は一軒家に住んでいる。家の前の森の木を抜いて更地にした。通路を残して岩場にしたらうちの周りを周るランナーからクレームがきた。勝手に周られても困ると思ったので、踏むと発火する魔法陣を仕掛けた。するとランナーたちは大周りをするようになった。ランナーたちはゾンビだった。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めて、朝のルーチンをこなした。外に出てみるとまだ暗かったので、河原でロックフォール用の石を拾って仕込んだりした。その後、骨先生とスパーをして、シャワーを浴びた。



 ヴァンパイアーズの地下神殿に着いた。大きな音とともに入り口の扉を開ける。


 隠し扉の前でエリザベスが出迎えた。


「その後、変わりないか?」

「ああ、今日はどうした?」

「ヴァンパイアを人間に戻せる。興味はあるか?」

「本当なのか!?」

「うむ」


 隠し部屋に行き、アデルとライラにもグール村の出来事を話し、ヒール水入りのコップを三つ並べた。


「これを飲めば治るのか……?」

「保証はできないが、話したとおり実績はある」

「人間に戻れたら……我々はどうやって生きていけばいい……?」

「受け入れる村を紹介しよう。一度そこに落ち着き、その後のことは自分たちで決めればいい」


 水色のローブを着たアデルが言う。


「エリザベス様、まず私が試します。次にライラ。問題なければエリザベス様も飲んで下さいませ」


 エリザベスとライラが頷く。アデルが、ひと呼吸おいて、ヒール水を一気に飲み干した。


 効果はすぐに現れた。青白かった顔色に赤みがさし、紅かった瞳は茶色に変わった。牙はそのままだ。


「外に出てきます」


 アデルが出口へ歩いて行く。外に出て、暫くして泣きながら戻ってきた。


「エリザベス様……太陽が……太陽が……」


 それを見てライラが弾かれたように部屋に走って行き、ヒール水を一気飲みして、神殿の外に出た。まだ変化の途中だったのか、身体から少し煙が出たが、すぐ治った。あわてんぼうなのか。


「エリザベス様、私も人間に戻れました!」


 ライラとアデルが抱き合って泣いている。エリザベスも意を決してヒール水を飲んだ。自分の手の甲が、死者から生者に変化していくのを見ている。そして、先の二人と同じように、神殿の外に出て太陽の光を浴びた。


「タクヤ、感謝する」

「副作用があるかどうか分からない。注意してくれ」

「例え明日死んでも我々は恨まない」

「ここにいてもしょうがない。身体に負担があると思うが、街へ移動しよう」


 魔石はここにあってもしょうがないので、根こそぎ俺が頂戴した。四人で王都を目指して歩いた。



 王都まで、俺の足なら一日だが、彼女たちの足では三日くらいかかりそうなペースだ。困った。野宿か。危険が多いし俺も慣れていない。牧場に泊めてもらおうか。



 牛とグリフォン事件の時の牧場に着いたのは夕方、日が暮れる寸前だった。牧場主は快く三人が泊まるのを了承してくれた。まあ、礼金を渡したし、血色が良くなった娘達は三人とも美人だし。


 夕食に魚のスープを振る舞った。牧場主はパンを出してくれた。元吸血鬼の三人は食事に感動して泣きだした。それを見て牧場主が驚いていたが、本当のことを言うと怖がられるので、適当に誤魔化した。俺のスープはやはりイマイチな味なので、塩を多めに振った。



 俺は外に泊まる振りをしてハウスに入った。


「ペプ、ずっとほっといてごめんな」

「ナアア」


 ペプは喜んでいるのか怒っているのか、俺の顎を力強くザリザリと舐め始めた。痛い。


 ペプと一緒にベッドで寝た。



  ◇◇◇◇◇



 朝目覚めて、朝のルーチンをこなし、シャワーを浴びた。俺は元の世界でも朝にシャワーを浴びる派だった。一日が始まる。


 娘達は歩き疲れが残り、今日動くのは無理そうだ。数百年も神殿から出ていなかったので不健康なのはしょうがない。俺は牧場主に金を渡し、もう一日だけ泊めてもらえるように頼んだ。


 そして俺だけ街に向かった。出がけに牛が三頭寄ってきて俺に頬擦りした。あとでペプにシャーされる……。



 前回はこの道でグリフィンに襲われたりトロールに襲われたりしたが、今日は問題なかった。フォートモーラーを越えて、ハウスに入った。


「ペプ……」

「シャー!」

「やっぱりな……」


 俺はシャワーを浴びた。お気に入りのコートは消毒の魔法をかけた。ペプはそれで許してくれたようだ。


 ペプと一緒に王国に着いたのは午後だった。明日になったら元ヴァンパイアーズをピックアップに行く。それまで時間ある。


 まず冒険者ギルドに顔を出した。


「すまない、アーベルたちは帰ってきたか?」

「まだですねー」


 何日たったっけ? トラブルじゃなければいいが。


「あとから二パーティがトロールケイブに行ったんですけどー、お話の通りなら合流してるはずですねー。一本道ですしー」


 なんかちょっと責任を感じる。明日見に行こうか。



 次に服屋に行って、同じコートを注文した。馬面の魔族からゲットしたボディスーツはこれで使い切った。


 次に魔法道具屋に行った。魔女っ子に聞いてみた。


「すまない、解毒剤はあるか?」

「うちで扱ってるのは蜘蛛毒の解毒剤でーす」


 一個買った。蜘蛛はダンジョンに出現するから解毒剤が売れる、蜘蛛毒以外の解毒剤は扱っていないとのこと。イグレヴ王国では毒の扱いが発展しているが、ハロン王国には毒薬も解毒剤も情報も何も入ってこないらしい。


 ハロン王国って、もしかして田舎? いい意味でも悪い意味でもそう感じる。隣国のイグレヴ王国は戦闘民族的なイメージがある。


「解毒の魔法とか、スクロールはないか?」

「ありましたが軍が買い占めてまーす」


 あるのか。エミリーか誰かにかけてもらったら覚えられるかな。


 オリジナル炎熱の剣を売って、店を出た。


 次に、貴金属店で古金貨を売った。そしてバーに行った。



 バーのマスターに、伝言の件を重ねてお願いしておいた。


「構いませんよ。タクヤ様が来店なさる日が増えるでしょうからね」


 バーでゆっくり飲んだが、明日用事があると思うとなんだか落ち着かなかった。しかし飲んでるうちに緊張が解れてきていい気分になった。それでも少し早めに店を出た。



 街の西門から出て、森でハウスに入り、飲み直しと食事をした。飲んだあとは麺が欲しい。小麦粉を練った固形のものを焼いたやつは売ってたんだよな。人気なさそうだったけど。俺なら保存は問題ないから生パスタでもいい、麺タイプを誰かに作ってもらうか。


 そんなことを、ペプに顎を舐められながら考えて、そのまま寝た。


 

  ◇◇◇◇◇



 目が覚めて、朝のルーチンをこなし、朝早すぎたので骨先生とスパーをして、シャワーを浴びた。


 停車場に行って、辻馬車をチャーターし、牧場へ向かった。


 娘三人は特に問題なく過ごしていたようだ。牧場主にお礼を言って、三人を馬車に乗せた。


「エリザベス、俺は用事があり、エリース村まで送ることができない。この馬車に乗っていれば着く。着いたらエリックと話をするんだ。タクヤの名前を出せば大丈夫だ」


 俺は御者に行き先を言って金を渡し、トロールケイブで降りた。




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