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小男

 ハウスに入ってから、念のためゆっくりと自分にヒールをかけ、シャワーを浴びて、ペプとご飯を食べた。そして寝酒を飲んで寝た。



  ◇◇◇◇◇



 夢を見た。


 元の世界、俺の部屋、テレビを見ている。テレビの中には俺の部屋があって、俺がテレビで映画を見ている。不思議と俺は映画に参加している。飛行機で空を飛び、港に着いた。すると吸血鬼が集団で襲ってきた。俺は頭から光を放った。吸血鬼は光で溶けたがなぜか港も半壊した。俺はオートバイでどこかに走って逃げた。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めた。元の世界が少し懐かしくなった。


 朝のルーチンをこなし、昨日使ったマジックアイテムにマナを補充した。昨日の村人に出くわすとばつが悪いので、しばらく歩いて、王都の近くの森に入り、骨先生とスパーをした。


 そういやそろそろ魔術師ギルドに顔を出さないとな。俺は特に用事はないんだが、エミリーには会いたいな。


 というわけで、スパーのあとシャワーを浴びて、魔術師ギルドに行くことにした。



 途中の店に立ち寄った。冒険者ギルドでは特に変わったことはなかった。強いて言えば、トーテムを返したはずのゴブリンがまだ暴れているってことか。魔法道具屋にはたいした物がなかった。武器屋も特に目を引く物はなかった。矢とボルトとエンチャント用に適当な武器と杖を買った。


 市場で食料を買い、ちょうど乗合馬車があったので乗った。



 魔術師ギルド前で、道の側の柵に腰を掛け、いったんペプをハウスに入れる。水とトイレだ。ついでに水替えも。終わったらまだ出してあげる。これらは頭の中で操作できるので俺がハウスに入らなくてもいいから、自然に済ませられる。ペプはいったん消えるが。そしてペプのトイレの汚物を道端に穴を掘って捨てて完了だ。



 魔術師ギルドに着くと、ヴァレリウスとエミリーがいた。


「タクヤ、久しぶりだな。ちょうどよかった。頼みたいことがある」


 貴族の従者が行方不明になっていて、その捜索、場合によっては救助を頼みたいらしい。よく通っていた洞窟があり、そこかも知れないとのこと。場所は、どうやらスーパーゾンビの洞窟だ。


「貴族の名前は?」

「フライターク家だ」


 やっぱりな……。罠なのか? まあいい引き受けよう、興味がある。


「そうか、すまない。エミリーを同行させよう」


 またお目付役かな。でもちょっと嬉しい。



 ペプを抱いて歩きながらエミリーと話した。


「その後どうだ?」

「進展はないです。でも、各地でゴブリンとか吸血鬼とかが出没しているって噂です。魔族の影響と考えられます。戦争なんかやってる場合じゃないです」

「俺は隣国の魔闘気を使う男に会った。明らかに訓練された動きだった」


 俺は魔闘気の男のことを話した。


「隣国の者と考えて間違いないでしょうね。そっちも対処しなきゃいけませんね」



 洞窟に着いた。来るのは三回目だからもう常連だ。なぜかあったりなかったりする扉をこえて大部屋に着くと、ちょうどゾンビが小男を襲おうとしていた。


 俺は光る石ころを二つ投げて明かりにした。小男はいかにも貴族という格好をしていた。こいつ自体は貴族じゃないはずだが。しゃれたジャケットとパンツ、尖った靴、レースのついたシャツ。髪と髭も小綺麗にまとまっている。線は細く、ほおがこけたような細い顔をしている。口ひげの先はカーブして上を向いている。盗賊達とは違うタイプの悪者顔だ

 

 小男は洞窟の奥の、背の高さほど高くなった岩の上にいる。ゾンビは登れないようだ。というか、登るという発想がないようだ。ゾンビの服は汚れたチュニック。腰紐はもうない。首にはチェーン付きの首輪がはまっている。チェーンはどこにも繋がっていない。


 おそらく体力強化ポーションと思われる空き瓶が地面に転がってる。俺は拾い上げた。


「エミリー。これって」

「うちのギルドで作った物ですね」


 床に麻袋も落ちていたので拾い上げた。


「おい、お前! ゾンビを殺せ! 麻袋は効かない」


 小男が偉そうに命令する。スーパーゾンビには麻袋が効かないということなのか? まあ、近づかなければスーパーゾンビは小男を狙うから余裕だ。っていうか、スーパーゾンビなんか、簡単には殺せないぞ。


 なんとなく読めてきた。小男が人間を殺してスーパーゾンビにした。チェーンと麻袋で動きを封じようとしたが、通常ゾンビと違ってそれができず、逃げ出したところを追い詰められて動けなくなったということか。


 スーパーゾンビにされた人間はどこから連れてきたんだろう? 誘拐か、奴隷か、どちらかだろう。


 なぜ魔術師ギルドに依頼が来たんだろう? 自分たちで探せばいいものを。場所も分かってるし。暴れ出したスーパーゾンビを殺せるやつがいないのだろうか。小男がしくじって死んだと思って、魔術師ギルドに依頼を出したってところか。


「お前、俺を二回も罠にはめて殺そうとしたのを覚えているか?」

「そんなことは知らない!」

「そうか。じゃあ帰るか」

「待て! 知ってる! 俺じゃない!」

「じゃ、誰だ?」

「詳しいことは知らない! 俺は指示に従っただけだ。全て伯爵とあいつが考えた事なんだよ!」


 実行犯はおまえじゃんか。


「あいつ?」

「魔術師だ! ビクターだよ!」


 ……誰だ?


「っていうか、このゾンビの元の人間はお前が殺したんだろう?」

「………………」


 否定しないのか。


「エミリー、どうする?」

「ゾンビは倒しましょうか。そして魔術師ギルドにはありのままを報告します」

「そうしようか。ところでこれはどうやって倒す?」

「え? 倒せないのですか? いつものようにちょいちょいって……」

「俺、いつもそんな感じだっけ?」

「オーガだって一撃だったじゃないですか」

「一撃食らったんじゃなかったっけ? みんなで倒したよな」

「あの時のハルバードが決定打でしたわ。このゾンビもそれで倒せるのではないですか?」


 それもいいが、まあ燃やしておくか。俺はペプをエミリーに預け、小男からは見えないようにしてオリジナル炎熱の剣をだした。


 狙いはゾンビが振り向く隙に首を斬る。俺は横滑りに飛びかかった。変な表現だ。イメージは地面に脚をつかずに滑るような感じたが、そんな技は持っていないので実際は走るに近かっただろう。そのためか、腕でガードされた。失敗だ。斬れたが浅い。カチカチ刃が出るカッターで切ったような傷だ。しかしゾンビの腕は燃えた。俺はバックステップで距離を取ったが、ターゲットは俺に替わった。


 ゾンビの腕は火がついたままだ。このまま逃げたら死なないかな、と思うが燃えているのは服だけのようだ。クソ硬いな。困った。


「ハルバードの方がよかったな……」


 まあ、でもトゲトゲは魔法属性だから、魔法生物ではなさそうなゾンビには効かないかも知れない。それにしても、素手で殴りたくないんだよな。どうすっか。どっちにしても小男に手の内を見せたくないな。


「エミリー、外に出るぞ」


 俺はゾンビを引きつけて洞窟の外に出た。炎熱の剣で牽制しつつ、ゾンビの左足に魔闘気を目一杯集めたローキックを放ち、ゾンビの脚を折った。倒れたところに、


——でかい石!


 ヒュージロックフォールを落とした。軽自動車くらいの大きさの石だ。ゾンビもこの質量には敵わない。ゾンビは動かなくなった。


 石をストレージに吸い込んで、ゾンビに油をかけて炎熱の剣で火を付けた。石の出し入れで結構マナを使う。雑魚には使えない技だな。


 ゾンビの全身に火が回ったところで、洞窟から小男が出てきた。


「礼は言わんぞ」


——なんでだよ、言えよ。


 小男は走り去っていった。


「帰ろうかエミリー」

「あんなに大きな石も出てくるんですね」

「そのうち家とか出てくるかもな」


 俺たちは魔術師ギルドへ歩いて帰った。


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