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「やあ、エリック、調子はどうだい?」

「バッチリさ。注文の品が出来てるよ」


 湯船とリクライニングチェアーだ。湯船は申し分ないのですぐにストレージに入れた。俺がゆったり入れるサイズだ。もっと大きい方が入り心地はいいかも知れないが、そうすると湯を多く必要とするので使いにくい。ちょうどいいサイズだ。


 リクライニングチェアーを試してみた。背中が少しゴツゴツするが、角も取れていて快適だ。布を敷けば全然オッケーだろう。座面と背もたれは、木の板じゃなく革張りの方がいいだろうか? エリックに提案してみたところ、作ってみるとのことだ。


 これで海に行く準備が整った。


「ところで、ダンジョン産のモンスターは食べるか?」


 食べるとのことなので、大ネズミと大カエルのフレッシュな死体をプレゼントした。せっかくなので大木もプレゼントした。


 俺はネズミを食べなくて済むように、ストレージから竈を出して、猪のステーキを焼いて食べた。村人にも振舞った。



 村はずれでハウスに入り、IDEを開く。寝る前に思いついたことを試しておきたい。


 ライトの杖のコードを呪文エリアに写しておく。石ころにライトをエンチャントして、マナを最大に充填。その石ころを部屋の壁の向こうに置いた。魔石の光よりずっと明るい。白色だし。放置して、寝酒をやって、本を読みながら寝た。



  ◇◇◇◇◇



 夢を見た。


 肩こりが酷いので温熱の魔法陣を両肩に貼った。じんわりと効いて肩こりは楽になった。肩と目の神経が繋がってて、そもそも眼精疲労が肩こりの原因だ。そのため、目から破壊光線が出っぱなしになった。ダンジョンを破壊光線でぶっ壊し、魔族を倒した。ビーチで寝そべりながら空に破壊光線が出っぱなしでハッピーエンド。



  ◇◇◇◇◇



 翌朝、目覚めてもまだ石は光っていた。これは使える。


 IDEを開いて光る石ころを量産した。部屋とシャワールーム用に光量を落とした石も作った。石じゃないほうがいいけど間に合わせだ。ランタンとか、電球を思わせるなんかのオブジェとか探そうか。


 朝のルーチンと骨先生とのスパーをこなした。そして、今日はシャワーではなく風呂にする。


 湯船に水を張り、焼け石をドボンと落とした。何個か入れて温度を調整する。石の上に板を足で沈めて火傷しないようにして、ゆっくりと浸かる。


 完璧だ。素晴らしすぎる。


 身体の芯まで温まった。湯船はそのままストレージの別のポケットに移した。いつでも熱い風呂に入れる。これはすごい。ただ、思ったより焼け石の熱量が足りない。石が何個も必要になる。何か代わりの手段が必要だ。おいおい考えようか。



 部屋に戻って、リクライニングチェアーで朝寝した。



  ◇◇◇◇◇



 朝寝が癖になりそう。こっちの世界に来て、(金ができたから)ずっとこういう生活を送れると思ってたのに、そのうち世界が滅亡してしまうかも知れないとは。誰が見ても間違いないすごい剣を持った強い勇者でも現れてくれたら、俺は遊んでいられるんだけどなあ。


 そもそも魔族ってどうやったら死ぬんだろうか? 普通にやっつければいいんだろうか? リッチなんか魔法の武器しか効かなかったぞ……魔術師ギルドで聞いてみるか。


 今日の予定はノーアイデア。地下神殿は昨日行った。今日も行ってリポップしてなかったら無駄だ。


 王都を見てから、やっぱ活動の拠点を移さなきゃなって漠然と思った。っていうか王都のダンジョンの魔族を倒すことが目標だよな。王都に引っ越したら、馬車に乗るのがだるくて、ヨーギもあんまり来なくなるし、海も遠くなる。ダンジョンと地下神殿を攻略してから行きたい。海は満喫できないかも知れないけど、砂と海水を大量に確保したい。


 楽な方からかな。


 海に行くことに決めた。ただ移動するのも時間がもったいないので、先にマジックアローの仕込みと光る石ころの量産でマナを使いはたして、道中はヒールの訓練をする。


 ヨーギまで行って乗合馬車に乗った。



 港町シーナは漁港である。数十隻の漁船が桟橋に接岸されている。水揚げした魚介類は港の市場で行商人に売り渡される。行商人は市場の魔術師に冷凍を依頼し、馬車に乗せて街へと旅立っていく。


 お抱えの魔術師を乗せている馬車もある。遠くまで運ぶのか、用心棒を兼ねているのか。両方かも知れない。


 そんな忙しそうな人たちで賑わっている。


「ペプ、なんか、思ってた海と違うな……」


 ワイキキのようなビーチを勝手に想像していた。全然違った。


 ヨーギからの道は港で止まり、別の道が海岸線に沿って伸びていた。俺は右手の道を数分歩き、砂浜に入った。


 ザーッと音がする勢いで砂を吸い込む。これがブラインドと猫のトイレになる。一生分吸い込んでやる。移動しつつ、海岸が禿山にならない程度に吸い込んでいく。


 砂が終わったら海水だ。ブーツを脱いで足を水につける。遊んでるように見えるが、大量の海水を吸い込んでいる。


 試したかったことがあった。水を吸い込むと念じて海水を一度ストレージに入れる。そしてもう一度ストレージから出した水はやっぱり海水だった。水に溶けた物質はストレージでも分離できない。覚えておく。


 ペプは砂浜で用を足したあと、波打ち際で遊んでいる。楽しそうだ。


 塩漬け肉と燻製肉を作る時には、生肉を一晩、海水に漬ける。海水から塩が作れるかもしれない。高く売れるはずだ。いくらあっても困らない。とにかく大量に確保しておく。



 そうしていると、道の方から騒ぎが聞こえてきた。


「ペプ、トラブルの予感だよ」


 ペプをハウスに入れて、ローブの下に鎧を着込んで、騒ぎの方へ向かうと、悪者顔の盗賊が馬車を襲っていた。


 盗賊は三人、馬に乗っている。傭兵が一人、剣で盗賊を威嚇し、馬車を逃がそうとしているが、馬車の馬がビビってしまって動かない。


――助けよう


 俺はスリングの石を発射した。盗賊の一人の胴に当たり、落馬した。傭兵がもう一人の隙をついて斬りつけた。怪我を負わせた。


 もう一人の盗賊は、落馬した奴の馬の手綱を掴んで逃げ出した。怪我をした奴もそれを追う。落馬した盗賊が一人残った。傭兵が首に剣を充てる。


「ありがとうございます。助かりました。お礼に何でも差し上げます」

「それは塩か? 分けてくれないか?」


 樽ごとくれそうな勢いだったけど、持てないので一袋分だけもらった。ビビってた馬に頬ずりされた。お礼だろうか?


 残った盗賊は、港の役所に突き出すのだという。俺も護衛のために、馬車に乗ってついていくことにした。



 役所では、役人が拷問を始めた。


「根城はどこだゴルァ!」

「何人いるんだゴルァ!」


 桶に並々と入れた海水に、盗賊の頭を突っ込んで吐かせようとする。


 傭兵が俺に話しかけてきた。


「大体わかってるんですけどね。あ、先ほどは助けて頂いてありがとうございました。俺はヨーナスと言います」

「タクヤだ。盗賊は何人いるんだ?」

「二十人くらいです。根城は近くの洞窟です」

「なぜ誰も倒しに行かない?」

「冒険者ギルドには依頼したんですけどね。懸賞が安いのかこんな田舎まで誰も来ないのか……」


 俺が依頼を受けて倒してもいいけど、有名になるのはなんとなく嫌だな。もう魔術師ギルド問題は無くなったとはいえ、ストレージ魔法は絶対秘密にしたい。ストレージ技がなければ俺では盗賊を退治できない。


 でも、見捨てて帰るのは寝覚め悪いよなあ。


 よし、こっそり倒そう。


 今日はもう遅いので、港からちょっと陸側に入った林を今夜の宿にした。


 ハウスに入り、お楽しみのリッチのチェストを開く。昨日は宴会で満足していたので、お楽しみを後に取っておいたのだ。チェストを開くっていうか、ストレージの中、すなわち俺の頭の中をチェックするんだけど。実際に開けてみて罠があったら困るし、罠チェックの過程で中身も分かってしまう。結果的に罠は無かった。


 チェストの中には、剣が三本、うち一本はマジックアイテムだった。他にはたくさんの宝石類。一つだけひときわ大きいこぶし大の青い宝石があった。でかい。お値打ちな気がする。金貨三十二枚、銀貨三十枚。マジックアイテムのブレスレットが二つ、両手用で一揃いなのだろう。


 マジックアイテムの剣とブレスレットは、IDEを開いても何か分からなかった。鑑定してもらうしかないか。


 お金がたくさん増えた。ハッピーな気分で寝た。





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