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リベンジ

 ヨーギには夕方着いた。せっかくなので食料を買い増し。まずは地下神殿でリッチにリベンジしたい。日が暮れるまでエリース村方面へ歩いて、ハウスに入った。


 昨日の反省点を今日改善するとは、俺もなかなかやるもんだ、と思ったが、喫緊の課題の防御力について何も解決していないことに気がついた。オーダーしただけだ。


 ヒールについては馬車に乗ってる最中も訓練した。野菜の星の人が、常にスーパーな状態にして身体を慣らすみたいなやつだ。あのマンガはもしかして俺が強くなるためのバイブルだろうか? きっと指数関数的に強くなれるに違いない。


 白紙のスクロールを取り出してみた。特に変わったところはないが、マナが染みてると言ってたな。


 俺はIDEでスクロールを開いて見てみた。アイコンが明るくなってる。マナの充填はできないが、マジックアイテムってことだろう。魔法陣を書けば再利用できるのか。


 俺は何気なく、呪文のエリアのアイスのアイコンをスクロールに、なんとなくイメージでドラッグドロップしてみた。するとスクロールがピカッと光って、魔法陣が復活した。


「お? ペプ、なんかうまくいったよ」


 IDEを開いてると、意識が集中していて周りのことが分からないんだが、ペプは俺の顎を舐めてるらしい。かすかに顎になにか感じる。


 それにしても今のは、もしかしてエンチャントってやつ? 他にできないかな? なんかこの画面、いろいろできそうだからてきとうに試してみるか。


 炎熱の剣のアイコンを開く。コードアイコンを呪文エリアにドラッグドロップすると、新しい魔法アイコンができた。


 次にストレージに入ってる適当な剣、盗賊から奪ったやつだ、それを選んで、さっきの炎熱のアイコンをドラッグドロップした。すると、画面にピンクの魔法陣が現れたので、小さくして剣の刃に貼り付けた。


「こんなんでいけるのかな?」


 すると俺のマナが減り、ただの剣にマナメーターとコードアイコンが現れた。成功だ。


 この剣を売ればさらに大金持ちに……やべえ、楽しくなってきた。もっと魔法を覚えたい。いや、しかしスクロールは売り切れ中……。 ダンジョンで見つけるか。


 マジックアローも、杖から呪文エリアにコピーしておいた。今できるのはこれだけか。


 俺はウキウキ気分で晩酌して寝た。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めた。


 昨日作った剣を試してみる。


 可哀想な犬を呼び出した。凍っている。じゃあ溶かしてやる。


 俺は新炎熱の剣で斬った。


——ボワッ


 剣の、魔法陣を貼り付けたところから炎が出た。魔法陣のところだけから出た。可哀想な犬は凍ったままだ。


——????? なんか間違えたのか?


 ジャイアントからゲットした炎熱の剣を試してみる。


——ボワッ!

 

 剣の刃全体から炎が出た。手が熱い。可哀想な犬は炎に包まれて、氷が溶けてぷるぷるし始めた。


——なんか、設定が違うのか……?


 ハウスに入ってIDEを開く。オリジナルと作った剣を代わる代わる見比べてみる。じっくり見ていると、オリジナルの方のウインドウに、魔法陣から延びるピンクのラインが見えてきた。


——これか。


 同じ設定を新しい剣の方でも設定してみる。いや、剣先だけでいいな。魔法陣を刃の中程にずらし、そこから先に有効範囲を設定する。


 ついでにコードを開く。威力の設定がいじれるんじゃないかと思ったら……、あった! 上昇温度と、炎の量のパラメータを見つけた。試しに温度は下げて、炎をかなり多く設定してみる。


 そしてまた可哀想な犬を斬った。


——ボウウウウワッ!!!


 刃が可哀想な犬に触れた瞬間、剣先から軽自動車くらいの大きさの炎が出た。


 やばい、これ楽しい。やりすぎ魔道具シリーズとして流通させたい。


 IDEに戻って剣のマナ残量を見てみると、三分の一程度減っていた。やり過ぎはマナを食う。ヒールのときもそうだったな。


 俺は剣の設定を戻して、マナを補充しておいた。



 朝のルーチンをこなした後、矢とボルトを撃ってストレージに入れた。ストレージショットとでも呼ぼうか。もっといい名前ないかな。マジックアローも二百発補充。その後、骨先生とスパーをした。


 爽やかに汗をかいたので、試したかったことをやってみる。サウナだ。


 シャワールームに入り、床に大きめの岩を置き、その上に焼け石を置く。水をかけ、ジュワーッと! たまらん!


 酸欠に気をつけながら、汗をだらだら流した。充分に汗を流したら、シャワールームの空気を外気を入れ替えて、水シャワーを浴びる。爽快!


 ちなみにオマルは、ストレージの別のポケットに入れてあって、用を足すときだけシャワールームに移してるので、臭い問題はオッケーだ。


 満足してハウスに戻る。早速ペプが寄ってくる。こういうときにリクライニングチェアーでぐでーっとしたいんだよな。発注したやつ、もう出来てるかな? サウナルームも別にした方が、空気の入れ換えとか楽でいいかな。部屋から蒸気が逃げにくいようにしないと。待てよ、焼け石を作らなくても、魔法のエンチャントでいけるんじゃないだろうか? 料理のためにたき火をしなくてもよくなる? オーブンとか作れる? 俺、燻製もやりたいんだよね……。


 そんなことを考えてたら眠たくなってきたので、ペプを抱き寄せて寝た。


 

  ◇◇◇◇◇



 夢を見た。


 元の世界、知らないところ。路面電車のような駅を降りて、陸橋を越えてしばらく行くと、今にも崩れそうな汚い物置小屋があった。俺は、ここは眼科だ、と分かった。裏手に扉があり、入ると中は物置小屋よりも広い待合室になっていた。五、六人の患者が座っている。すぐに俺の番が来た。左目を改造された。左目に、鑑定機能とビーム発射機能がついた。宝石がついた腕輪を鑑定すると、それは絶対防御システムだった。そして鑑定と同時に発射されたビームが貫通して、腕輪は使えなくなった。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めた。外を見たら日が真上にいる。こういう朝寝をしたときはたいていだるい。目覚めたのに気付いてペプが顎を舐め始めた。


 うーん、仕方ない、体調は歩いてるうちに回復するだろ。


 俺はペプをお留守番にして、肉串を食べながら地下神殿へ歩いた。



 地下神殿、もういつも通りと言っていいだろう。インプをハメ技で倒し、スケルトンは吸い込む。


 地下二階に降りると、前回と様子が違っていた。スケルトンとスケルトンウルフが通路にうじゃうじゃいた。どうやら部屋に入れなかったらしい。俺を見つけると襲ってきたので片っ端から吸い込んだ。


 俺は部屋の鉄扉を開けっ放しにしておいた。次回があれば、こいつらは部屋に入ってるはず。


 次のスケルトン、やっぱ身体が大きい。ハルバードを持っている。スケルトンウォリアーかな? 便宜上そう呼ぼう。あとでIDEで普通のスケルトンと見比べてみよう。


 ハルバードをディスアームして、スケルトンウォリアーを吸い込む。チョロい。


 さて、いよいよリッチにリベンジだ。



 ゆっくり地下三階へ降りる。こっそり覗くと、いた。リッチは手に何も持っていない。前回と同じやつだと思って間違いないだろう。俺の他に誰もここに来てなさそうだし。俺は炎熱の剣を右手で、バックラーを左手に構える。作戦は決まった。


 俺は足早にリッチに近づいていく。いつでもヒールができるように心構えをしている。吸い込みもだ。


 リッチが気づいて、ファイアボールを撃ってきたが、吸い込む。そして斬りつけた。とにかく当てた。幽体に剣が貫通する。物理ダメージは無さそうだがリッチが炎に包まれる。五回斬りつけたところで、炎熱の剣の持ち手がめちゃめちゃ熱くなった。なんだこの剣。


 一度、バックステップで距離を取る。リッチは再び、右手を突き出してファイアボールを撃ってきた。吸い込む。攻撃の合間に右手をヒールする。他に攻撃パターンがないのか。それならこいつも余裕だ。


 俺はマジックアローを撃った。数えるように一発ずつ。弱点が分からないので、とにかくリッチの身体の中心、胸と顔を狙った。十発命中したところで、少し浮いていたリッチは地面に落ち、紫の目の光が無くなり、ゆっくり崩れ落ちた。死骸をストレージに吸い込む。勝った。


 炎熱の剣はめっちゃめちゃ熱くなって火傷するから、腕だけ防御する耐熱の腕輪が相性いいのか。そういう仕組みなのか、ファンタジーって。俺は耐熱の腕輪を装備することにした。片手分しかないから炎熱の剣の両手持ちはできないな。


 部屋を見回すと、今まで気づかなかったが、床に魔術師の杖が落ちていて、壁際に物入れの箱(チェスト)がある。結構な大きさだ。剣や鎧が入りそうだ。俺は杖と箱を丸ごと頂いた。


 この先に進もうかと思ったが、リッチがリポップするのかどうか、リポップしたら違う種類の魔法の杖を持ってるかもしれない、そう考えて帰ることにした。神殿に祀られているかも知れない何かも魅力だったが、次回のお楽しみにする。


 地下神殿を出て、とりあえず拾った杖を試してみる。鑑定するより使う方が早いだろう。森の中の少し遠くを目指して……。


——撃て!


 光った。


 ライトの杖らしい。消えろと思ったら消えた。点けと思ったら杖の先が明るく光る。便利だが、このためにでかい杖を持ち歩くのは微妙な気がする。まあ、ロジックを取り出して、使いやすい何かにエンチャントしよう。ヘルムとか。


 俺はエリース村へ向かった。




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