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コード

 エリース村に着いた時はもう日が暮れていた。


 炎天下の中を歩くので、多めに休憩をし、頭から水を浴び、昼寝をしたらかなり時間が過ぎてしまった。体力なくてヤバい。俺、生きていけるのかな。


 足も痛い。履き慣れない靴のせいだ。ここ数日は歩きっぱなしだったし。サンダルよりはマシだが、足に合ってない。スニーカーとか無いだろうから、歩かなくてすむ方法を見つけなければ。馬かな。手入れとか餌とかめんどくさそうだ。魔法の馬を召喚とかできないかな。魔法は現実的なものって言われたからきっとないんだろうな。


 ペプを抱いて歩いているのも負担になっている。ペプの体重は五キロ近くある。そして必ず左肩にしか乗らない。鞄でさえ、たまに持ち替えるのに、ペプは常に定位置だ。歩かせようか。いや、ペプが視界から外れるのが怖い。何かに襲われないとも限らない。ペプについてはしょうがない。俺の大事な存在だ。一度失ってるので痛いほど分かる。



 夜になってしまったので、村への訪問は諦めた。例によって森へちょっと入ったところからハウスに入る。


 歩きながら気がついたことをまとめる。骨先生についてだ。


 骨先生はおそらく魔法的な何かで動いてるのは間違いなさそうだ。


 スケルトンは、一般的にはアンデッドとされている。墓場からわらわらと出てくるやつだ。しかし、死んですぐにアンデッドになるならともかく、死んで魂がとっくに成仏しているであろう白骨となった死体を動かすために、わざわざ霊を呼び出して憑依させるとは考えにくい。動かすためなら魔法で動かすほうがコストが安そうだ。バラバラの白骨を元の人間の姿のまま動かすのは、筋肉も運動神経もないんだから魔法的な何かがないと無理だろ。知らないけど。根拠は全てフィクションだ。


 というわけで、骨先生は何かしらの魔法の仕組みで動くと思うんだ。そう考えると人骨なのかどうかも怪しいが、そこはなんでもいいだろう。いや待て、仮に人骨を再生利用してるわけじゃなくて、人骨を模って作られたものだとすると、材質を変えて作ることができるかもしれないのか。メタルスケルトンとか、水晶スケルトンとか。そもそもスケルトンである必要もないけど。いや、そこは絶対スケルトンだろ。かっちょいい。欲しい。すっげえ欲しい。


 骨先生に持たせる武器は、剣じゃなくて他もいけるだろうか? ポールアームとか。もしくは盾とか。弓が扱えたりするだろうか? そうするとだよ、骨先生に矢を撃ってもらって、俺が吸い込む。この矢がそのまま再利用できるわけだ。もしもの時のために飛び道具を多めに仕込んでおきたい。ちなみに今ストレージにはファイアボールが五発ある。


 弓さえ撃てれば俺一人でも仕込めるよな。問題は弓を使えないってことだけだ。クロスボウなら俺でも簡単に撃てるはず。あ、クロスボウは盗賊からゲットしてた。他にもおそらくスリングと思われるものもゲットしてる。明日やってみっか。



 それはともかく、骨先生の方だ。詳しく知りたいがどうしたものか。ストレージの中をよく観察できないかな……。


 俺は頭の中の骨先生が入ってるポケットに集中する。ズームしてよく見るようなイメージ。頭の中でそれがだんだん大きくなっていき、パーンと広がった。一言で言うなら、すっごいアナログな雰囲気のPCのGUI画面、が目の前に現れた。瞼は閉じているが、画面のようなものが見える。目を開けても同じ画面のままだ。


 青が基調のダークなスクリーンで、左側にストレージのポケットの一部が、角をぼやかしたアイコンのような表示でリストされている。その中の骨先生のポケットが画面の中央にズームアップされている。画面の右側には同じようなぼやけたアイコンが二つ並んでいる。赤い炎のマークとピンクのハートマークだ。上部にはマナの総量と残量と思われる、格闘ゲームのようなメーターがある。ぼやけているし数値じゃないので、少し使えない感じがする。


——ゲームか!


 画面真ん中に俺の全身の絵があって、ストレージからアイテムを装備できるようになってたらゲームの画面だ。プレイしたことがある。


 画面の中央に集中すると骨先生のことがわかってきた。やはり何かしらの魔法で動く。マナの充填量みたいなメーターが見える。今は1/6程度だ。試しに1/3まで増やそうとしてみると、考えただけで充填された。上部のマナメーターが少し減った。


 中央の骨先生が写ってるウィンドウには、端の方にぼやけたアイコンが何個かある。一個を除いて、よく見えなかったり見えてもなにも反応しなかったりしている。有効な一個に集中してみると、新しいウインドウが開いた。ぼやけた文章のようなものがならんでいる。


——これ、プログラムコードだろ。


 見たことない文字で書かれていて、文字の形もはっきりしない。ただ、なんとなく、部分的に分かる。コードの中に、強さと速さのパラメータがあり、これを書き換えることができる。強くし過ぎると俺が死ぬので、逆に弱くして、速さは少し上げてみた。明日の朝のスパーリングではっきりする。


 ちなみに文字は、さっき買った読み書きの本にあるものとは全然違う。


 他のアイコンも気になるので、骨先生ウィンドウを閉じてストレージリストを見てみる。閉じるボタンはなく、なんとなく閉じると思ったら閉じた。


 リストをざっとスクロールしてみると、骨先生以外はアイコンが地味なのだが、盗賊の根城でゲットした宝石とアクセサリーが少し明るくなっている。宝石にはマナ充填量メーターが、アクセサリーにはそれに加えてプログラムコードアイコンが付いている。


——なにこれ、マジックアイテムか?


 コードウィンドウを開けてみたが、何か分からなかった。骨先生のコードもそうだが、分からないコードはいつか理解できるんだろうか? どこかでお勉強しなきゃいけないのだろうか? そもそもこの画面って、ストレージに直結しているってことは見えるの俺だけなのか?


 宝石はマジックアイテムではなさそうだが、マナが充填できる。試しに満タンまで充填してみようとしたら、半分まで充填できたところで俺のマナがなくなった。途中で止めなきゃ卒倒してたのかも。宝石にマナが貯められることがわかった。この宝石が特殊なのか、他もそうなのかは分からない。


 そして右の方の炎のアイコンだが、開けてみるとプログラムコードが現れた。インプから食らったファイアボールだろう。ハートマークはシスターにかけてもらったヒールっぽい。


 ファイアボールのプログラムコードは、ざっと、魔法準備、ボール生成、熱上昇、発火、発射というプロセスになっている。それぞれ別ウィンドウが開いて詳しいコードが出てくるのだが、細かい部分はほとんど理解できない。


 そして、これらの実行方法が分からない。アイコンをアクティベートするだけじゃだめのようだ。シスターは呪文を詠唱してヒールしていた。詠唱が必要なのかも知れない。


 長時間この画面を開いていたらくらくらしてきた。そろそろ限界か。やめよう、と思ったら全画面が閉じて、通常の視界が戻ってきた。胡座をかいた足の上でペプが丸くなっている。


 この画面は魔法に関する統合環境といったところか。IDEと呼ぼう。


 IDEがあっても魔法の使い方はさっぱりわからないけど、マナの需要はありそうなので大木を吸い込んで卒倒して寝た。



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