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盗賊

 盗賊の根城はすぐ見つかった。


 夜中に月明かりを頼りに地下神殿の周囲を探索すると、森の中でギャーギャー騒ぐ声と灯りが漏れている洞窟を発見した。洞窟の入り口には、小窓付きの木の扉にがある。


 踏み込んで大暴れしたいが、そんな実力はない。普通に死ぬ。


 俺は根城の出入りが見えるところでハウスに入った。


 ちなみにこのストレージハウスは、俺が入ったところからしか出られない。俺が動いてないんだから当たり前だが。


「さてペプ、どうしようか」


 メシのついでに一杯やりながら考えることにする。


 毒ガス、とか思いつくがそんなものはない。入り口を土砂で塞ぐとかいい手かも。でもまあ、殲滅したいよな。各個撃破が理想だな。


 とりあえず今日は寝る。



  ◇◇◇◇◇



 起きたらまだ早朝だった。猫と遊ぶ以外に暇つぶしがない。本が欲しい。


 暇なのでいったん外に出て、いい感じの大木を選び、すぐ近くからハウスに入る。そして、ハウスの中から大木をストレージに吸い込んだ。


 そしてまた卒倒した。


 気がついた時、マナはゼロになっていたが、目覚めるまで前回ほど長い時間はかからなかった。なぜこんなことをしたかと言うと、マナの最大量が増えてる気がしてるからだ。ゲームならレベルが上がれば増えるが。現実はレベル制ではない。ここが現実なら。


 なぜマナの最大量が上がったか、やっぱマナを使いすぎて、その分、超回復したんじゃないかと思う。気のせいかも知れないが。確かめるために大きなものを吸い込んでみたのだ。


 マナが最大まで回復するのに一~二時間くらいか。またやることがない。瞑想したら回復時間が早くなったりして。


 俺は背筋を伸ばして座り目を閉じた。すると、膝にペプが乗ってきて丸くなった。背中を撫でてやると、一回伸びをしてから仰向けで丸くなった。見せたお腹をさすりさすりしてやる。ゴロゴロ喉を鳴らして嬉しそうだ。


 瞑想に失敗して、また暇になった。映画が見たい。元の世界に残してきた俺の映画コレクションが欲しい。一回全部観てるけど、この世界のこのハウスの中にいたらあと百回ずつは観れると思う。暇だし。新作も観たいよなあ。星大戦の続編も気になるなあ。俺は今、タクヤって名乗ってるけど、名字はスカイウォーカーにしよう。どうやらここ中世ヨーロッパだから、名字つけるには貴族にならないとダメなのかな? 無理っぽ。


 キシュゥイって音がする伸びる光の剣が欲しい。使わないときはコンパクトで便利だよな、って思ったが、俺にはストレージがあるからメリット少ないな。まあ。そんな光の剣は普通に考えたらこの世界にもなさそうだけど。


 少し休憩したあと、革鎧に着替えて地下神殿に向かう。入り口は開けっぱになってた。そのまま入って、最初の部屋に向かい、用心して部屋を覗いてみた。


 人間の死体が三体転がってた。インプはいないようだ。部屋に入って死体の傷を調べてみると、火傷が酷かった。服も焦げていた。インプなのだろう。死体はストレージに入れた。丁寧に埋葬する気はさらさらないが、どこかに埋めようかと思う。


 部屋の中で死んでたってことは、あれから比較的早く別のインプが来たってことだろう。それか入り口の方からインプが来て退路を塞がれたか。入り口方面にはモンスターが出そうなところはない。この世界のシステムがわからないが、俺のゲーム知識ではダンジョンではモンスターが突然現れたりする。なにしろ壁がファンタジー素材だ。突然出てくるシステムでも不思議はない。


 そして、その部屋でしばらく待機する。盗賊が来ないか、モンスターが来ないか、それを確かめるためだ。しばらく待ったが、盗賊は来ない。三人が襲ってきたのは、地下神殿に入るところを見られてたのかと推測していたので、当てが外れた。襲ってきた三人が見張り役だったのかも知れないし、やっぱり扉を開く音で感づいたのかも知れない。次はもっと多人数でくると思ってる方がよさそうだ。盗賊は十人くらいって言ってたからあと七人くらいだろう。


 俺は立ち上がり、剣を出して奥の方へ進む。近くにインプがいるのは間違いない。通路は省エネなのか薄暗く、まっすぐ伸びていて突き当たりに部屋があり、明るくなっているのが見える。警戒しながら進んで行くと、通路の途中の左側に、薄暗い部屋があることに気づいた。ここにインプが隠れているはず。


 中を伺ってみた。家政婦のように。インプが一匹いた。一匹だけのようだ。


 俺は剣を右上に振り上げて、インプに向かって走っていった。気づかれるのは想定の範囲内。俺の胸の真ん中を狙ったファイアボールが当たる前に消えたのを見たインプが、驚いた顔をして一瞬止まった。悪魔の表情なんてわからないが、確かに驚いたのが分かった。そしてそいつを斬った。


 袈裟斬りってのは、なんていうか、一番自然な斬り方だと思う。利き腕の方に振り上げて、敵の首と胸を狙う。多少避けられても急所にヒットする可能性が高い。クリティカルヒットではないが、狙いと威力のバランスで与えるダメージの期待値を最大化する攻撃。言うなれば初心者向けだと思う。俺のような初心者がやるべき攻撃、それがインプにクリーンヒットして、肩口から入った剣は、人で言えば心臓の位置まで切り裂いた。


 耐熱ローブは魔物の皮でできていると聞いたが、インプの皮だろうか? 火の玉を飛ばすから熱には強そうだ。俺はインプの死体をそのままストレージに入れた。


 次に俺は地下神殿の入り口に戻り、大きな音を立てて開いていた扉を閉めて、開けた。そしてまた第二の部屋に戻り、座って聞き耳を立てる。警戒すべきは盗賊とモンスター。



 しばらくすると、声が聞こえてきた。俺は立ち上がって息を殺す。


「ヨハンたちはどこいっちまったんだ? 殺られたのか?」

「殺られたなら死体があるはずだろ。どこだ?」

「奥に行くと火の玉ヤローがいやがるからな、気をつけろよ」

「誰かいるのは間違いねえ。行くぞ」


 四人のようだ。足音も四人……のような気がする。わからん。俺はストレージから短剣を出す。少し手が震える。でも覚悟はできている。


 一人目が部屋に入ってきた。こっちには気づかない。横顔が悪者顔だ。俺は背後から左手で口を塞ぎ、右手の短剣で喉を掻ききった。映画やドラマでよく見たやつだ。ザ・暗殺みたいなやり方だ。血が前方に噴き出す。なるべくゆっくり死体を置いたが、ドサっと音がした。


「おーい、どうしたよ?」


 こいつらリラックスしすぎだろ。こっちはこんなに緊張してんのに。


 短剣を仕舞い、ショートソードを出す。ブラインドからの袈裟斬り、首にヒットした。大量に出血している。致命傷のはずだが即死ではない。だが動けないはずだ。


 三人目、四人目にもブラインドをかけた。そして接近してロックフォール、盗賊の頭の上に、仕込んだバスケットボール大の岩をストレージから出現させる。それはヘルメットのない頭にクリーンヒットした。即死だろう。二人目に向き直って、狙いすまして剣を突き刺す。終わった。


 終わったと思ったら、足が震えてきた。腰を下ろして辺りを警戒しながら、まずは落ち着こう。この程度の運動量で息も上がってる。そもそも体力はない。


 なんとか動けるまで回復してから、落ちてるものをストレージに吸い込み、危険かとは思ったが第二の部屋の待ち伏せポイントからストレージハウスに入った。いつからある遺跡なのか知らないが、過去に冒険者が何人も入ってきたはず。入り口近くにモンスターがいたってことは、なんらかのリポップ、モンスター補充か増殖の仕組みがあるに違いない。この部屋にいきなり出てくる可能性はある。


 ストレージハウスに入って、ひとまず水を飲んだ。そしてペプを抱き寄せた。ペプは俺の顎を舐め始める。落ち着いてきた。



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