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根城

 もし、ストレージハウスの出口が敵にバレたらマズい。待ち伏せされるし、火を焚かれたりすると出て行けない。まあ、二週間くらいは籠城できるが、きっと暇だろう。もしものために、もっと食料を貯め込んで籠城可能日数を伸ばさなきゃいけない。


 そして暇つぶしの何かが必要だ。興味ある本があればいいんだが。あとは内職か。彫刻とか? 仏像でも彫ろうか。絵もいいかな。油絵ってやったことがない。元の世界の風景をうまく描けたら売れそうだ。そうだ、別世界だから著作権侵害しても誰も文句言わないよな。ネズミのキャラクターを描いて流行らせようか。まずはスケッチからかな。ちなみに絵心は全くない。


 落ち着くまでそんなことを考えてた。いったん外に出よう。


 俺は窓を開いて辺りを確認してから第二の部屋に出た。警戒しながら地下神殿から出た。扉は開いたままにしておく。残りの盗賊と鉢合わせしないよう、迂回しながら盗賊の根城に行き、今朝と同じ位置でストレージハウスに入った。


 盗賊は残り、最低三人はいるはず。ロックフォールがめちゃめちゃ強いから、もっといてもなんとかなりそうな気がする。ヘルメットしてなければだけど。ヘルメットも吸い込んじゃえばいいのか。あれ? 必勝パターン? もしかして、俺すげえ強い?


 石を落とすって、地味なので必殺技とは呼びたくないけど、事実上そうなる。さっき回収した石も、落下速度をつけてまた仕込んでおいた。


 残りの盗賊は、夜を待つことにする。でも、翌朝になったら逃げられるかもなあ。いや、四人が帰ってこないのが分かったら警戒される。今しかないか。


 とりあえずランチ、ペプにもランチ。ちょいちょい窓を開けて外の様子を見ながら。



「ペプ、ちょっと悪者やっつけてくるよ」


 ランチの後。俺は剣を構えながら根城の扉に近づいた。静かに開けようとしたら、かんぬきがかかっていた。


 いったん仕切り直し。


 扉は、扉ごとストレージに吸い込めば開くだろう。こっそりやるか、おびき出すか。扉の小窓から中を覗くと、男が一人座っている。こちらの方を向いている。俺は忍び込みは諦めた。


 扉の向こう側にストレージから、燃えている木を何本も放り込む。そして扉の横に隠れる。こいつらすっげえ頭弱そうだからこんなので上手くいくと思うんだ。


「おい、火事だ!」

「なんじゃこりゃ!襲撃か?」

「誰だこのヤロー!」


 叫びながら、足踏みして火を消しているようだ。そして扉から男が二人飛び出して、辺りを見回している。後ろは見ない。やっぱ頭弱い……。


 一人目を後ろから、首を狙って剣を振り下ろした。その音でもう一人が気がつくが、身構える前に、鎧を着ていない胸に、剣を根元まで突き刺した。


 刺した剣を抜かずに、一度ストレージに入れて、瞬時にまた出す。抜く手間と時間が惜しい。そして根城の中に入る。


 根城の洞窟は、入り口は狭いが緩やかに左にカーブしながら広くなっていく。あと何人いるか分からないが、一気にやっつけるつもりだ。


 すると、カーブの向こうから男が現れた。悪者顔だ。驚いた顔をしたが、すぐに剣を抜いて構えた。こいつ、できるのか? 剣を小さく振り上げて斬りかかってきた。俺はタイミングを合わせて剣を吸い込む。そして前のめりになった男に剣を突き刺す。カウンターが決まり、急所を一発で貫いた。さっきから俺つええ。


 先ほどと同じく、剣を抜く代わりに一瞬でストレージに入れてまた取り出す。これ、かっこいいんじゃないだろうか? バカなをこと考えるのはやめて先へと進む。


 奥の部屋は学校の教室くらいの広さで、円形をしている。樽やテーブルや棚などが左手に並べてある。右手は寝床になっているようだ。部屋の中央には、チェーンメイルを着て頬まで隠れるヘルメットを被った男がメイスを構えて立っていた。間違いない、こいつがボスか。顔の中央部しか見えないが、ものすごい悪者顔だと分かる。そして怒っている。怖そうなので手が震えてきた。やばい。


「…………」

「…………」


 無口なやつなのか……? 俺の心臓の音が聞こえてしまいそうだ。ひょっとして向こうも俺と同じく怖いのかも。そりゃそうだよな、部下が全員やられちまったんだから。全員不意打ちだけど。


 そう考えると震えが止まってきた。顔を見ると絶対違う気がするが、こいつも怖いに違いない。そのはず。そう思う。


「伯爵め、裏切りやがったな……」

 

 よく分からないことを言い出した。知らんよ。俺は趣味で悪人退治をやっている者だ。きっかけはそちらで、やられそうになったから倍返しだ。……残念ながら声にならない。そうだ、俺が退治しに来たんだ。俺から仕掛けるか。


 シミュレーション通りにいく。無防備に近づいていき、相手が攻撃してきたところで、


――ディスアーム!


 武器を吸い込み、もう一回、兜を吸い込む。そして、


——石!


 正式名ロックフォール、略称『石』が、愕然としているボスの頭頂部にクリーンヒットした。ロックフォール!は攻撃とリズムが合わない。ロック!の方がいいだろうか。なんか石がしっくりきてる。


 ボスが今にも立ち上がってくる気がしたので、死体をストレージに入れる。一安心だ。


 洞窟はなかなかいい住処になりそうだが、ストレージハウスがあるので、俺には必要ない。盗賊の仲間が他にいて帰ってくる可能性もある。金目のものをもらってさっさとずらかるのが吉だな。

 

 早速、宝箱を見つけた。鍵はボスが持っていた。あとの楽しみに、宝箱のままストレージに入れておく。樽に食料が入ってた。これも樽ごともらう。水は要らないが、樽が欲しいので同じく樽ごともらう。っていうか、家具類全部もらうか。テーブルや椅子、棚、十人分くらいある寝具、武器と防具と服が入ってる箱もあった。あとなんかの空箱。


 背の高さの棚をストレージに入れると、その後ろにゾンビがいた。





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