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プロローグ 「世界で1番美味しいモノ」

あぁ、美味いなぁ。

なんでこんなにも甘美なのだろうか。

手元に置きながら今まで手をつけなかったのが不思議なくらいだ。

また、1口咀嚼を進める。

あぁ、美味い。

そして、どうだろうか。隣の輩は。

俺を差し置いて食べ進めるとは。

こいつは俺のモノだ。

ソイツは奇声をあげながら同じモノに貪り続けていた。

邪魔だな、と考えた時には俺の口はソイツの首筋にかぶりついていた。

顎に力を入れると首の骨を噛み砕く感触が返ってくる。完全に致命傷だ。

だが、ソイツは止まらない。完全に我を忘れてそのモノにむしゃぶりついている。

あぁ、腹立たしいな。俺は腕を引き、ソイツを引き剥がすと引いた腕の先からソイツを食べ始める。

美味くない。

美味くないが、魔力に満ち溢れている。

ソイツが血肉や魔力になるのを感じる。

半狂乱になって、なおもそのモノに食らいつこうとするソイツを順に胃袋に収めていく。初めての感覚だ。自分のどこにこれ程のモノが入っていくのか。

胴体も半分を過ぎたあたりでソイツはとうとう沈黙した。

なんとも、先程までの激戦が嘘のように呆気ない幕切れとなってしまった。

正気を失ってしまうと勝てるものも勝てないという教訓だ。

美味くないソイツを脇に置き、俺はそのモノに向き合う。

節々は噛み切られ無惨な姿になってしまっているが、幸い顔は無事だったモノ。いや、者。

「リゼ。やっと最後まで食べられるよ」

我を忘れていることを、忘れながらボソリと呟いた。

そして、鬱蒼と恍惚を浮かべながら、俺は獣のようにその者に喰らいつく。

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